新装備 その4
「主素材はザスライドで受け取った魔縮片よ。詳細鑑定に出したところMPを込めると魔力の膜を生成することが分かったの。その特性を引き出すためにAランクの魔石を大量に使うことになっちゃったけど実践に耐えられる耐久度を持っているわ。私たちが検証した結果だとボール系は防げるってところかしら。ただサークル系に弱いのが弱点ね」
アーマーボアのドロップアイテムがここまで化けるとは思わなかった。いいとこ魔術溶媒として利用するくらいだと思っていたので嬉しい誤算だ。
しかし、継続ダメージを肩代わり出来ないのは惜しい。そこまでカバーできていれば完璧だったのだが、まあ、それほど強力になれば希少級の域を軽く逸脱するので考えるだけ無駄だ。
今は万象夢幻が発動されるリスクが少しでも減ったことに感謝しておこう。
「私からは以上よ。次も待っているわね、ゼロちゃん」
「ありがとうございました。次も是非依頼させてもらいます」
ゴルジアナさんの下を離れ、次にアルの下へ向かう。
アルにはミサキさんを通して武器の制作を頼んでいる。本当は銀樹刀を強化しようと思っていたのだが今のまま強化してもレア度が上昇するだけで等級までは上がらないかもしれないと言われた。なので魔含の硬木を主体に新しい木刀を1本作ってもらうことにした。
魔含の硬木自体は上等級のレア度5なので希少級には届いていないがそこは他の素材で底上げしてもらう。
「待っていたよ。ゼロから頼まれてた木刀だけど面白いことになったんだ。これ見てみて」
アルの下に着けば早速と言わんばかりに新しく作られた武器が渡される。
〈銀樹刀 樹王・再誕〉 希少級 ☆6
STR+5 AGI+5 MPを消費することで刀身は元の姿に戻り、一定時間硬度と魔力伝導率が上昇する
魔含の硬木を加工して作られた一振り。希少金属が使用されており、高い魔力伝導性と親和性を持つ。また、刀身は約90cmほど
「面白いでしょ? 私もそれなりに武器を作ってるけど、装備スキル以外で武器に特殊効果が乗るのは初めて見たよ。しかも、パラメータに補正もあって特殊効果があるのは聞いたこともないね」
「フロアボスの素材だったからか? それについては門外漢だから何とも言えんがつまり普通の武器では無いってことか?」
「そう言うことだね。基本的な素材は前の銀樹刀と変わってないから、やっぱりフロアボスのレアドロって言うのが大きいと思うよ」
魔膜の御守と言い、トレントンキングのこれと言いフロアボスから作られる装備は通常よりも強力だ。
ただし、魔縮欠については本来のアクセサリーの在り方である特殊効果のみだったのに対し、魔含の硬木は普通ではあり得ないパラメータと特殊効果の同時付きになっている。
原因については分からないし、考える気もないのでデメリットが無いなら問題は無い。
「使い勝手を確かめてもらう前に詳細を説明するね。樹王は導魔や硬魔と同じで芯にミスリル合金を使ってるよ。でも、今回の合金はドガンの力作だってさ。オリジナルスキルは偉大だよね。合金についてはドガン、よろしく」
「任された。ワシが生み出したミスリル合金の名称は魔金銀合金だ。材料はミスリル、オリハルコン、ウッドデミドラゴンの爪と魔石になる。オリハルコンはワシの金属への追求で作った合金だからか純度は低いが上等級で仕上げておる」
ドガンさんはオリハルコンも作れるのか。
オリハルコンと言えばミスリルと同様に有名な金属だ。私も王都の市場で見たことはあるが、ほんの僅かな欠片でも数百万バースしていた。
それにウッドデミドラゴンの素材とは豪華なことだ。
ドガンさんのレベルでは希少級までしか加工できないのでウッドデミドラゴンとやらも希少級なのだろうが私が倒したトレントンキングよりもレベルが高い魔物だ。
それで作られた金属を芯に使った樹王が身に余る性能を有するのは仕方ないことなのかもしれない。
「知ってると思うがミスリルは柔らかく、逆にオリハルコンは硬い。だから、この二つを組み合わせることでミスリル鋼よりも頑丈でありながら魔力伝導性が高い合金が作れると言う訳だ。だが、それではつまらんから魔含の硬木との相性を考慮してウッドデミドラゴンの素材を使って合金にした。それで出来たのが魔金銀合金だ。特徴としては高い魔力伝導性に加え、鋼を超える強度、木材との親和性を兼ね揃えておる」
「続きは私から言うね。それでこの木材との親和性って言うのがミソだと私たちは考えているんだ。前作の銀樹刀はただのミスリル鋼だから樹王みたいに特殊効果は出なかったんだと思う。それに魔含の硬木が魔力との親和性が高いのが原因かな。だからミスリル合金と魔含の硬木が完全に融合しているんだ」
「融合だと?」
樹王を片手に持ちながら、もう一度観察する。
しかし、見た目はただの木刀だ。重量自体は中に金属の芯があるから真剣と同程度の重さなのだと思っていたが違うようだ。
刀身を撫でても金属特有の冷たさや滑らかさは感じられず、帰って来るのは木特有の質感だ。
木材に金属が融合など、どんな原理があって起こると言うのだろうか。改めて、この世界は異世界なのだと思い知らされた。




