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AWO〜ゼロと愉快な5人の仲間たち〜  作者: 深山モグラ
第一章 中央大陸編 第一節 中央王国 第五項 王都
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受験者だけが全力とは限らない

 戦闘において意外性は存外重要なことだ。相手が理解不能な行動をすれば一時的に思考が滞る。それは当たり前のことだが場合によっては大きな隙になりかねない。


「リフレクト」


 待機時間が終了したリフレクトを発動させる。リフレクトは魔力を伴う攻撃を防ぎ、その後攻撃に応じた反撃を繰り出すアーツだ。しかし魔力が関与しなければリフレクトは意味をなさない。


 それはユーリウスさんの攻撃にも当てはまった。両腕をクロスさせるようにしてクロスに放たれた攻撃は私の目の前で展開されたリフレクトを素通りする。

 私が何故このアーツを使ったのか理解しようと頭を働かせているのだろう。彼の攻撃は速度も、精度も先ほどより鈍っていた。そして次の瞬間リフレクトが召喚された意味を知るだろう。


 ユーリウスさんのクロス斬りを硬魔で受けるのではなく、大きく一歩後退することで躱した私は攻撃が終わった直後彼に高速で近づく。反撃が来ると読んだユーリウスさんは急いで木剣を引き戻し、防御の姿勢を見せるが私はそれに構わずリフレクトを蹴った。


 本来なら蹴りによる攻撃でもリフレクトは素通りする。しかし足に魔力を纏わせればシールドと何ら変わりは無く、一種の壁として利用できる。これによりユーリウスさんとの距離が大きく離れていく。


 戦士相手でも意識の隙を突けば容易く距離を空けることが出来る。またしても理解が及ばない行動を見せられ、ユーリウスさんは次に繋げる行動を躊躇した。


「ホーリープリズン」


 それが仇となり、彼の周囲に光の柱が10本立ち昇る。ホーリープリズンは拘束用の魔術だ。魔物相手では容易く破壊されることもあるが得物が木剣では拘束を解除するまで多少の時間を稼ぐことが出来る。

 その時間を利用して私はユーリウスさんとの攻防の間に展開させていった魔術を次々に発動させる。エンチャント・アップ系によるSTR、INT、MNDの上昇バフを計6つだ。

 ユーリウスさんが自ら距離を取るのを嫌って闇属性魔術は使っていない。それでもこれだけのバフが掛かれば戦況は大きく傾く。


「神官とは思えない変則的な戦い方をするね。盾を利用した移動って初めて見る方法だよ。あれで隙を突かれちゃった。ゼロさんは戦士としてもやっていけそうだね」


 木剣に迸る程の魔力を纏わせ、それを振るうことでホーリープリズンによる光の牢を破壊したユーリウスさんが拘束から逃れ出てきた。

 あれだけ多くの魔力を木剣に注いでいるのならMPはそう長くは持たないだろう。ならば彼が取る手段は短期戦しかない。私がバフによる強化を得ようがそれを凌駕する勢いでユーリウスさんは攻めて来ることになる。つまりそれは彼が本気を出すことを意味する。


「できればもっと戦っていたいけどこの状態を維持するのは大変でね。全力でやらせてもらうよ。多少の怪我は許してくれ」


 最後だけユーリウスさんの口調が変わった。

 予想通り彼は本気を出した。プレイヤーが物理系のアーツを使用する時と同じように魔力が彼の身体に纏わりつき、オーラのように揺らぐ。

 しかしそれは空中で循環するようにユーリウスさんの身体を巡り始める。頭を通り、腕、木剣、胴、脚と順々に回る。

 戦士なりの身体強化と言ったところか。これでは私がバフで詰めたパラメータの差は開いたも同然だ。白黒で盛りたくなってくる。


 悠長に詠唱で魔術を使っている暇は無い。ユーリウスさんがどれほど強化されたか分からない状態では隙を作るのは悪手だ。硬魔を構えながら彼を中心として円を描くように進む。それと同時に拘束割で魔術陣を展開させていく。


 あの身体強化は見る限り魔力を用いている。ならばMPを吸収するアブソープやエンチャント・マナスティールが有効だろう。どちらもユーリウスさんの身体に触れずとも剣を交えるだけで効率は落ちるがMPを奪える。


「パラライズ」


 待機時間が終了した魔術を打ち出す。最初に紫電が飛んだ。パラライズはとにかく有用だ。待機時間が短いこともあるが何より、麻痺の状態異常が強力極まりない。拘束時間は短いがそれでも判定に成功すればアブソープを発動させるまで大きく時間を稼げる。


 しかし、紫電はユーリウスさんが突き出した木剣の剣先に触れることで消失する。魔力攻撃による相殺だ。ただし、相殺と言っても向こう側の方が内包されたMPが多いため一方的に紫電が消失した。


「スリープ」


 今度は白煙が飛来する。


「スタン」


 次に電撃を打ち出す。電撃は白煙よりも飛来速度が速いため白煙を追い越し、ユーリウスさんに接近する。だがパラライズを無効化した時から既に動き出していた彼は右に持った木剣で電撃を切り裂き、さらに私との距離を縮めて白煙を左手の木剣で霧消させた。


「アブソープ」


 アーツ宣言をして硬魔にアブソープを纏わせながら私も前に進む。

 今の状態ではいくらデバフを撃ち込もうが無効化されるのが目に見えている。


 攻之術理 虚刀


 余っているMPを使い硬魔に魔力を込めていく。

 導魔よりは魔力伝導性が落ちるがそれでもユーリウスさんが使っている木剣より、圧倒的に魔力を通し易いそれは瞬く間に刀身が伸びた。

 ラピとの馬上戦では重さが増えないと愚痴を零したが重さが変わらずに刀身が伸びるのは利点でもある。ユーリウスさんが手数と速さで攻めるなら私はリーチで対抗しようではないか。


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