表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
AWO〜ゼロと愉快な5人の仲間たち〜  作者: 深山モグラ
第一章 中央大陸編 第一節 中央王国 第五項 王都
282/378

試験は全力で挑むもの

 私とユーリウスさんの間合いが20メートル離れたところで彼はこちらに振り返った。

 その瞳は試験官として技量を窺うものでは無く、狩人のそれだ。完全に戦闘態勢である。ならば私がすることはそれに応えることのみ。


 ユーリウスさんは私の出かたを窺っているのか先手をこちらに譲って来た。

 それは私が神官だからか、それとも冒険者の先輩としての意地か。どちらにせよ先手を貰えるのなら有り難く有効活用させてもらうまでだ。


「【漆黒の剣 純白の盾 我は屍を築く修羅なり〈連続詠唱 四種白黒〉】」


 詠唱を始めると同時にユーリウスさんが距離を詰める。しかし、それより先に私の魔術が発動した。

 光属性魔術はエンチャント・グリーンアップとハイエンチャント・グリーンアップでAGI上昇を目当てに闇属性魔術はパラライズとスリープによる行動不能を目的に発動された。


 相手が純戦士であることを考えればAGIで負けているのは確実なので初手で使用したが私の判断は間違っていなかった。

 流石はAランク冒険者。20メートルの距離など有って無いようなものだったらしい。縮地を素のステータスで再現している。


「ッシ!」


 距離を詰めたことで自ら紫電と白煙に突っ込んだユーリウスさんだったが試験用に持っていた両手の片手木剣でそれぞれ切り裂いて無効化してしまう。

 スキルを通して視る視界には魔力が映っているのであの木剣には魔力が纏わり付いていることになる。

 どう見てもただの木剣なので魔力伝導性は皆無と言って良さそうだ。あれに魔力を込められることから魔力操作に関してもかなりの腕前と見える。


 攻之術理 閃撃


 パラライズとスタンが無効化されるのと同時に居合からの抜刀で硬魔を抜き放つ。下から迫る硬魔はこのまま行けばユーリウスさんの顎を打つだろう。しかし、彼は左手に持つ剣を硬魔の軌道に置くことでそれをズラし、残った右手の剣で上段から攻撃を返してきた。


「リリース」


 双剣使いとの戦いだと手数が足りないのが困りものだ。もし私が導魔と硬魔の二刀流で相手したとしても得物の長さからして、連撃速度は劣っているだろうが。ただ私は神官としての術を持っているのでそれにより手数を補う。


 リリースによって即座に私の眼前でシールドが展開され、ユーリウスさんの攻撃を弾く。書術を使ったことで白黒の制約に触れてしまい十字架は砂塵となって消えたがもとより白黒に頼る予定は無かったので問題は無い。


 彼の意識が弾かれた右手に寄っているうちにと逸らされた硬魔を突き出す。攻之術理である死突に近い術理だが大して力も乗っていないので術と呼べるほどではない。だが当たれば痣が出来る程度には力が乗っている。


 硬魔による突きはユーリウスさんに避けられることは無かった。そのため確実に左胸を突くことになる。しかし、人体を突く感触とは違い金属に剣を突き立てたような感触が返って来た。

 ユーリウスさんは突きによる攻撃を受けても一歩たりとも蹈鞴を踏むことなく、それ以上に踏み込むことで再度上段から木剣を叩きこむように振り下ろした。


 攻之術理 昇龍


 ガラスの破砕音が鳴ってシールドが壊され、木剣が私に迫る。それを彼の胸で止められた硬魔を斬り上げるようにして弾き返す。


 神官と戦士ではSTRの差は相当だ。故に一度競り合った木剣と硬魔では硬魔が徐々に押され始めた。


 地面と平行に構えた硬魔が傾き、ユーリウスさんの木剣が迫る。

 しかしながらそれは長くは続かない。私が硬魔をさらに傾けることで木剣が硬魔の刀身を滑るようにして往なされたからだ。


 次の一撃はどう来るか。戦闘を楽しんでいる本能が5手ほど予想を立てる。それに対応するにはどの術理が良いか思考を巡らし、ユーリウスさんが動きを見せた。やはり。内心、思い通りの行動が来たことに歓喜を上げ、練っていた対抗策を打ち出す。


 硬魔に往なされたユーリウスさんが見せた行動は重心が前に移動したことを利用する回転斬りへの繋げだった。

 双剣使いとしての身のこなしを十全に利用した攻撃は左手に持った木剣から始まり、右手の攻撃、さらに返しの右手での攻撃と、速さと手数を以って連撃を仕掛けてくる。


 その攻撃を私は堅実に硬魔を以って受け止める。

 体勢が万全ならば片手剣の攻撃で押されることは無い。だがこのままではユーリウスさんの攻撃を受けるだけで反撃に移ることは難しい。

 だからこそ私は魔術を使用した。彼の剣が振り下ろされ、それを防ぐために硬魔を打ち出すのと同時に足を動かし、拘束割をしながら。


 魔術陣が展開されると、ユーリウスさんとの剣戟は激しさを増した。

 彼の振り下ろし、切り上げ、一文字に切り結ぶ連撃は次第に威力と速度が上がっていく。それに対処する私も速度を上げて迎え撃ち、木剣と木刀が打ち合う音が試験場に響く。


 私が展開した魔術陣が黒色だったらユーリウスさんも一度距離を取ったかもしれないがなまじ白色の魔術陣だったのが彼に後退を選ばせなかった。

 ここで発動を阻止させなければ私が強化されてしまう。そうなると困るのはユーリウスさんだ。それだけバフと言うのは厄介なものだ。次に私がSTR上昇のバフを使えば今の均衡も崩れかねない。

 如何に純戦士であってもユーリウスさんは双剣使いであり、AGIが高くともSTRはそこまで高くないのはこの戦闘で確認済みだ。


 ただし、ユーリウスさんは私が使う魔術がバフだけだと限らないことを考慮しなければいけなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ