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AWO〜ゼロと愉快な5人の仲間たち〜  作者: 深山モグラ
第一章 中央大陸編 第一節 中央王国 第五項 王都
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ユーリウス=ファンネル

「ゼロ様ですね。お待ちしておりました。試験場所は第一訓練場です」


 冒険者ギルドに辿り着き、受付で試験を受けに来たと伝えると試験会場に案内される。

 北の草原から王都までラピに全力で駆けて貰ったのでどうにか間に合ったが危うく遅刻するところだった。噂によればCランクからは冒険者の品格も問われるそうなので時間を厳守しないというのは減点事項になり得る。しかし、変異種との戦闘を天秤に掛けられたら後者を選ぶのは仕方が無いことだ。


「お前さんがゼロか?」

「ええ、そうですが。あなたは?」

「あー、俺のことは気にすんな。冒険者の視察だ」


 職員の案内通り訓練場に着くと入り口に立っていた隻眼の男に声を掛けられた。背丈は私以上に大きく、鍛えられた胸や腕ははち切れんばかりに盛り上がっている。防具もしっかりしており、黒く塗りつぶされた胸当てや籠手はかなり品が良い物だ。だが左腕が無い。見るからに戦人なので戦闘で失くしたのかもしれない。


 視察と言うことは騎士団関係だろうか。

 王都でしか昇格試験が行われておらず、今日はそれなりの数のプレイヤーが試験を受けに来ている。勧誘で来ているわけでは無さそうなのでここで要注意人物を見極めようと言った魂胆なのかもしれない。

 ギルド職員の線もあり得るが職員が視察する意味は少ない。何せ訓練場の中には試験官がいるのだから。


「は、はぁ。それで何か用ですか?」

「特にないが一度見ておこうと思ってな」


 どうやら目の前の人物は私のことを知っているようだ。だが私はこの男を知らない。住民にはそれほど名が知られていないはずなのでそれなりの組織の人間と言うことだろう。

 騎士団とは魔の森にある砦で出会ったノヴァさんくらいしか接点はない。可能性があるのは教会関係か、冒険者ギルドか。


「私のことを知っているんですか?」

「ん? まあな。それより時間大丈夫か?」


 話し掛けてきたのはあなたですけどね。と言いたくなったのを飲み込む。

 目の前の男性が結局何者なのか気になるところだが確かに時間も押しているので試験を優先させてもらう。もし私に用があるのならその内に彼から接触してくるだろう。


 男の横を通り、訓練場の中に入る。

 中は至って普通で50メートル四方ほどの広さがある部屋だった。部屋の傍らには訓練用の案山子が設置されており、試験が無い間はきちんとした訓練場所として機能しているのが分かる。


「君がゼロさんかい?」

「すみません。遅くなりました」


 部屋の中央には青髪の男が立っていた。彼が私の試験官なのだろう。身長は私と同程度で体格もそこまで差は無い。

 前衛職でも攻撃特化型ではなく、速度重視の軽装備型の戦士だ。一撃一撃の間隔が短いので、できれば戦いたくない相手だが決まっているものは仕方がない。こちらも攻めのスタイルで行くとする。


「まだ試験時間にはなってないから問題ないんだけどね。僕はユーリウス=ファンネル。ゼロさんの試験官をさせてもらうAランク冒険者さ」


 ユーリウスさんはAランク冒険者だったようだ。Aランクともなれば中央王国でもそこまで数がいない実力者なのでかなり戦闘慣れしていそうだ。


「さて、冒険者の先輩としてゼロさんに色々な知恵を伝授したいところだけど早速試験を始めちゃおうか。詳しい話は受付で聞いていると思うから省くけど要するに僕と模擬戦をしてCランクに見合った行動が出来るかを見るのがこの試験だよ」


 Cランクほどなら問題なくクリアできるはずだ。それこそ戦闘技術だけならAランクも狙えると思う。だがマナーや教養が試験科目に入ると簡単にはランクを上げることが出来ない。多少の教養はあるが此方と彼方の世界では価値観が違ったりするので知らないことが多い。


「そう言う訳だからお互いに胸を借りる模擬戦をしようじゃないか。僕も長年冒険者をやっているけど訪問者の人と戦うのは始めてでね。噂に聞く限り訪問者は全員がオリジナルスキルを持っているんだよね? 楽しみだな~」


 私も現役Aランク冒険者の実力が知れる良い機会なので是非もないがユーリウスさんは意外と戦闘狂なのだな。しかし、彼は分かっているのだろうか? どう見ても私は神官なのだが。武器も聖書と魔書で銀樹刀は身に着けていない。私が近接戦出来ると何を持って判断したのか。


「一応、言っておきますが私は神官ですよ」

「それがどうかしたかい? 神官でも訪問者なら多少は戦えるだろう? それに宗教国の神官には好んで肉弾戦をする人がいると聞いたよ。ゼロさんもその類じゃないかな?」


 もしかしなくてもそれは師匠のことではないだろうか。

 ここで話題に上がると思いもしなかったが私も肉弾戦が出来る神官だと思われているならそれでいい。別に間違っているわけではないからな。


「その反応は当たりかな。それじゃあ、試験を始めるよ。互いの間合いが20メートル開いたら開始にしよう」


 ユーリウスさんと戦うのにわざわざ神官スタイルで戦うのもバカらしい。

 私の勘がこれは良い戦いになると叫んでいるので得物は変えさせてもらう。あらかじめメタモルフォーゼには硬魔と聖書【領域の拡大】がセットされているので今の武器と交換する。


 導魔を使わないのは単に相性が悪いからだ。あれは魔力を纏わすことを前提にして作られており、加えて今は魔力を通せば無意識化で斬撃属性が追加されてしまう。

 だったら打撃属性しか持たない硬魔を使った方が良い。それに片方は魔術溶媒である聖書を持たせておかないと銀樹刀の絡繰りが露見するからな。

 こう言った手の内は重要な局面で使うのが正しい使い方だ。


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