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AWO〜ゼロと愉快な5人の仲間たち〜  作者: 深山モグラ
第一章 中央大陸編 第一節 中央王国 第五項 王都
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時間を与えてはいけない二人

 一時の思考停止の果て先に動いたのは私だった。

 ハーピークイーンが打ち出した空気の塊には魔力が僅かに見えたため、あれは魔導だと判断し、魔乗せによって許容ダメージ量を上昇させたリフレクトを上空に打ち出す。


 反撃に移ることは出来なくてもリフレクトならどうにか相殺まで持って行けるのではないかと淡い期待を抱いた行為だったがやはり通じない。

 少しだけ威力を削ることを対価にリフレクトは破壊され、速度を緩めることなく、グングンと彼我の距離を詰めてくる。


 着弾まで残り5秒を切った。こうなれば迎撃より回避を優先した方が良い。

 その場合、春ハルさんが待機させていた魔術は全てキャンセルされることになるがヤツの初撃でダメージを許容するよりも妥当だ。


 春ハルさんを抱え、その場から動こうとした時、彼女が杖を掲げて迫りくる空気の塊を睨んだ。

 その表情からは極度の集中が窺える。もし、今、彼女を動かすとその妨げになるばかりか害にしかならない。だったらせめて春ハルさんの次の一手を見届けてから回避行動に移るとしよう。


「アクティブスペル......トリプルスペル......インパクト」


 杖術のアーツにより、次に展開された半透明の魔術陣の数が1つから3つに増える。それから直ぐに空気が弾ける音が3回鳴り、ヤツの攻撃は相殺された。


 どうにか待機中の魔術をキャンセルさせることなく迎撃に成功したが今の攻防で分かったことは私たちの方が圧倒的に不利だと言うことだ。


 ダウンバーストが全く効果を見せなかったことから始まり、ヤツの牽制の一撃に全力を尽くさなければ防げなかったこと、詠唱を中断して杖術のアーツを使ったこと。

 その全てが私の想像を上回る。しかし、戦いはここからだ。


 私は次々に魔術陣を構築する。無論、ヤツの攻撃に対処できるように拘束割を使っている。

 固定砲台の春ハルさんは仕方ないにしても私くらいは自由に動けなければ良い的でしかないからな。


 上空にいるハーピークイーンはまさか先の攻撃が防がれるとは思っていなかったのだろう。空中を旋回しながらこちらの様子を窺っている。

 ヤツはてっきり私たちが慌てふためいて回避するものだと思っていたに違いない。私もそのつもりだったからだ。だが、春ハルさんの手によって攻撃は防がれ、虚を突くことに成功した。

 これにより、少しだが戦闘再開までの時間が稼げたのは僥倖だ。


 私は白黒を成長させることができ、春ハルさんは未だ待機されている魔術の発動までの時間を延ばせる。

 それに対し、ヤツはどうだろうか? 確かに魔導は恐ろしいものだ。それでも時間経過で威力が増すことなどない。私たちとは違い、オリジナルスキルを持っていないのだから。


 ヤツは様子見などせずに攻撃を続けることが唯一の勝ち筋だった。


 待機時間が終了し、私の傍で展開している魔術陣から魔術が次々に行使されていく。

 白を基調とした基本属性にも似た色のオーラが私や春ハルさんの纏わりつき、パラメータ上昇系、風属性耐性バフの更新を行う。

 ハーピークイーンを囲うように双角錐の結界が生じる。

 黒が混じった各色のオーラ、紫電、幻想的な白煙や電撃がヤツを追いかけるように襲い掛かる。


 ヤツは迫りくる闇属性魔術の追手から空を舞うように回避していく。

 唯一、バルネラブルだけは対象を取ることに成功したがレジストされてしまった。デバフが入るかは元から気にしていないので数打てば当たるの精神で行使していく。


 当たり前だが光属性魔術と闇属性魔術を交互にだ。これにより、私と春ハルさんのパラメータが加速的に上昇していく。ヤツの反撃が無い限り、白黒の成長は止まらない。


 白黒がある程度成長し、パラメータも確実にヤツを上回っただろうと判断できる領域まで来たのでデバフはバルネラブルとエンチャント・クリアダウン系のみに限定して行使する。


 拘束割のせいで不格好なダンスを踊る羽目になっているが待機時間が終わった傍から魔術を行使しているので高速でバフとデバフが回っている。


 春ハルさんは詠唱すらしないで空を眺めているだけで攻撃をしないため白黒の効果をヤツは実感できていないがかれこれ20秒ほど経とうとしている。


 私たちに時間を与えすぎではないだろうか?

 もしかしなくても、最初の攻撃を全力で防いだ私たちを見て侮っているのだろうか?

 ならば、慢心にもほどがある。


「ごめんなさい。ステータスが凄い勢いで上がっていくから驚いてた」


 春ハルさんがこちらに振り返り、ペコリと頭を下げる。彼女は白黒の効果によって上昇していくパラメータに驚愕してしまったらしい。魔王と畏怖される春ハルさんに驚かれるのは少し誇らしい気がするがそれについては置いておこう。


「これだけINTが上がれば問題ない」

「それではダウンバーストで落としますか?」

「あれは使わない」

「ああ、発動までにそれなりの待機時間がありますしね」

「それもあるけど、あれは対集団用の魔術。対個の魔術は別にある」


 それは......つまり、見られると言うのか。風、土、水、無属性と続き残りの2属性、火か雷属性魔術の二次スキル最終アーツが。


「ブルースターター」


 春ハルさんがアーツ宣言を行った。すると彼女の足元に展開されていた黄色の魔術陣から青色の雷が上空に向かって昇って行く。

 それは鬱陶しそうに双角錐の結界を振り解こうとしているハーピークイーンを正確無慈悲に貫いた。


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