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AWO〜ゼロと愉快な5人の仲間たち〜  作者: 深山モグラ
第一章 中央大陸編 第一節 中央王国 第五項 王都
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ハーピークイーン・ドクトゥス

「ゴゼグジ!」


 酷く形容しがたい金切り声が響いた。声を発したのはハーピークイーンだ。

 ヤツは春ハルさんの魔術を見て及び腰になっていたハーピーたちを勇気付けるように......否、脅すように声を上げた。

 それを受けて30体を超えるハーピーたちは一斉に春ハルさん目掛けて飛び出した。勿論、ただ飛び掛かって来るのではなく魔導が使われている。


 基本的に風の魔導しか使えないようで向かって来るのは風の球体や剣、槍、鎌鼬と言ったものが殆どだが中には稀に自身に魔力を纏わせて風の鎧のようなものを展開している個体もいる。

 それと先ほど地面に落下したハーピーの生き残りも魔導を発動しようとしていたがそいつらについてはパラライズやスタンを入れて拘束しておいた。

 その内、春ハルさんが潰してくれるようなので私は彼女の傍から離れないようにしておく。


「【大地は凍える。炎は贄を探す。雷は今かと機会を探る。ダウンバーストが空を落とす。フローズンエリアが大地を凍てつかせる。地に膝をつければアースクエイクが飲み込むーー】」


 流石にこの数は厳しいかと思い、手を出そうか迷っていると宣言交ぜ詠唱により、空に展開されていた魔術が発動された。


 展開されてから幾分か時間が経ち、最初は30メートルほどだった魔術陣は今では60メートルに届こうとしている。それは空中にいるハーピークイーンを含むハーピーたちを易々と範囲内に入れていた。


 魔導が近づき、それを追うようにハーピーたちが接近している中、風が吹き下ろされた。


 圧倒的な範囲とその威力を前に数多の魔導は相殺、いや、消滅させられ、空を飛んでいたハーピーたちは1体残らず地面に叩きつけられる。

 それだけでも奴らのHPは4割ほど削れた。急に重力が加圧されたかのような感覚を伴い地面に叩きつけられればダメージを受けるのも納得だ。

 それでも魔物と言う存在は伊達ではない。上空2、30メートルは超える高さから落ちてもダメージを受けるだけで済むのだから。しかし、上から吹き付けられる風に負けて飛ぶことも、あまつさえ動くこともできない。


 そして、ハーピーたちの足元には2つの巨大な魔術陣がある。それこそダウンバーストと同じ、二次スキルの最終アーツだ。


 ダウンバーストの範囲内の真下、すなわち春ハルさんから同心円状に半径30メートルの地面が、一瞬にして凍り付いた。何の前触れもなしに瞬きをする暇もなくだ。


 地面には辺り一面に霜が降り、ハーピーたちが叩きつけられた場所には氷の花が咲いている。その中にはハーピーが拘束されており、氷による継続ダメージか奴らのHPは徐々に減少し始めた。


 だが、それだけでは終わらない。

 春ハルさんにとってダウンバーストは飛んでいるハーピーたちを地面に落とすための手段でフローズンエリアは逃げ出さないように拘束するめの手段にすぎない。では奴らを殺す手段とは何か。それこそアースクエイクなのだろう。


 昨日見た光景が再び再現される。

 地面が罅割れ、時に隆起し、時に沈降する。

 トレントンキングが行使した魔導に比べれば範囲こそ狭いが、捕らわれの身であるハーピーたちには関係ない。

 動くことが出来なければ地面の割れ目に落ちて呑まれる。ただそれだけだからだ。


 10秒程して風が止み、氷は霧消し、地面は元の草原......荒れ地に戻った。


 最初は40を超えるハーピーがいたが今はその姿を確認することは出来ない。骨を探すと言うのなら地中を調べるのが早いだろう。ただし、今頃は光の粒子となって消えているのだろうが。

 私は特に何かしたわけではないが大きな仕事を終えた気分になる。


「ジダガダジゴドゴロズ!」


 けれども、そう易々と討伐完了とは行かないのが現実だ。

 ハーピーは全滅したがハーピークイーンは未だに健在である。それどころか一撃もダメージを受けていない。

 それもそのはずでヤツはダウンバーストを受けても地面に落とされることが無かったからだ。と言うより、全く効いていなかった。そればかりか、ヤツは吹き下ろされる風の中で旋回すらしていた。


 ハーピークイーンはその場で止まり、試しとばかりに風を吹かすように翼を動かした。すると大きな空気の塊が打ち出される。


 形は全く見えない。魔力視の強度を上げると僅かに輪郭だけが朧げに窺えるが、ふとすると消えてしまいそうなほどに希薄だ。

 しかし、こちらに迫って来る音がその威力を告げている。それこそあれに当たれば一溜まりもないことは想像に容易い。


「【3つの土球が迎え撃つーー】」


 一体どれ程のMPで魔乗せすればそれと同じ魔術が放てるのか、普通の魔術士なら放心状態待った無しの球が飛んでいく。


 バランスボールよりは一回りほど小さい土の球は向かって来る空気の塊を迎撃し、砕けた。1つ目が砕かれ、2つ目が砕かれ、そして3つ目が砕かれた。


「噓だろ」


 余りにも可笑しな光景に思わず、本心が零れてしまう。

 あの春ハルさんのオリジナルスキルの恩恵を受けて強化されているはずの魔術が3連続で命中しても相殺できないなどあり得るのだろうか。

 実際、目の前で起きたのだからあり得ることだ。だからこそ、混乱は隠しきれない。

 それは春ハルさんも同じだったようで悔しそうに尻尾が振られた。


【trivia】有知種。逖エ豌(情報規制)による疑似魂を持つ変異種の一種。ドクトゥスの名を冠し、大量の魔素と逖エ豌により構成されているため黄金種と強化種の複合種とも言われる。その名の通り、知性を有し、自我を持つため非常に厄介な存在である。個体によっては魔術や武技さえも使用する。

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