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AWO〜ゼロと愉快な5人の仲間たち〜  作者: 深山モグラ
第一章 中央大陸編 第一節 中央王国 第五項 王都
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魔王は力を溜めている

 私はハーピークイーン戦が始まるまで特にすることが無いので春ハルさんの周囲にシールドとリフレクトを展開させておく。

 この程度なら消費MPは気にしなくて済むのだがこれに加えてアーツを待機させておくとMPがかなりの速度で消費されるので総MP量が心もとない私では幾つも魔術を待機させておくことは出来ない。


 しかし、春ハルさんの場合はその膨大なMPに任せて何十個も魔術を待機させている。そして待機時間に応じて魔術の効果を上昇させる二つ目のオリジナルスキルが相乗効果を発揮する。

 ただ一度に数十も魔術を展開すれば拘束割はそれこそ至難の技となってしまう。なので春ハルさんはそもそも拘束割をしていない。

 これでは魔術が全て発動し終えるまで動くことが出来なく、良い的なのだがそんな不利さえも彼女の前では意味をなさない。


「【射程距離の上昇を指定。効果範囲の拡大を指定。威力の上昇を指定。速度の上昇を指定。風は私を味方する。空にいても私からは逃げられないーー】」


 空には緑色の魔術陣、地には茶色と青色の魔術陣が展開される。

 それは大きさで言えば30メートルほどだ。しかし、春ハルさんが詠唱を開始してから徐々に魔術陣が巨大になっていく。


 この時点で今展開された魔術が二次スキルカンストで習得できる魔術なのだと直感で理解できた。

 ロードでも一点集中でレベル上げをして虚魔術しかカンストできていないのに春ハルさんは単純に考えても風、土、水属性魔術の二次スキルをカンストさせていることになる。


 ここで展開された魔術陣に驚いたハーピーたちが慌てて周囲を見渡す。そして隠密を看破して春ハルさんを見つけ出し、魔術を止めようとこちらに向かって来る。

 どうやら私は春ハルさんの存在に気取られて見つかっていないようなのでこのまま好機を待つことにする。


 ハーピーたちは群れていたこともあり、その数は優に40を超える。

 その内の7体ほどが威力偵察とばかりに空中から翼を折りたたんで急速に落下を始めた。


 ハーピーは鳥系の魔物と同じで翼と鋭い鉤爪を持つ。しかし、完全な鳥類ではなく、人の身体と頭を持つため、多少の知恵を持っている。

 それ故かフォールホークのように突撃してくるだけではなかった。近づいてくるハーピーは空に幾つもの鎌鼬を生み出してそれを射出する。

 元々、風属性の魔導と相性が良いからなのかプレイヤーで例えるならハイウィンドカッターレベルの威力がありそうだ。

 いや、もしかしするとそれ以上の威力を秘めているのかもしれない。速度も速く、プレイヤーでは決して届かない上空からの攻撃はしかして奴らからすれば射程圏内だった。


「【八重に展開されたのは風切断。聳え立つのは3枚の火壁。空は地に落ちる。地は怒りを示すーー】」


 無数の斬撃が春ハルさんを切り裂こうとする。だが届かない。アーツ宣言が為されていないにも関わらず春ハルさんから魔術が発動したからだ。

 それにより生み出された8つの鎌鼬はこちらに向かって来ていたハーピーが生み出した鎌鼬を喰い破り、さらに上空へと距離を延ばし、2体のハーピーを切り裂いた。


 魔導が防がれ、2体のハーピーが落とされてもなお5体は近づいてくる。そればかりか、残りのハーピーも傍観を止めて確実に春ハルさんを殺しに来た。

 それはきっと、さらに巨大になっている魔術陣を見て恐怖心を抱いたからだろう。


 しかし、突如空中に出現した炎の壁に飲まれて最初の5体が火だるまになった。

 それは壁と言うより、もはや城壁と言っても良い程の大きさだったが、それに呑まれたハーピーは漏れなく墜落していった。


 燃え落ちた仲間を見て、近づいてきていた残りのハーピーたちは速度を落とした。

 燃え広がる炎の壁に入れば自分たちもただでは済まないと悟ったのだ。


 春ハルさんが行ったのは宣言省略と詠唱交ぜ宣言と呼ばれるテクニックの応用だ。

 宣言省略によってアーツ本来の名称でなくても発動できるようにし、詠唱の中にそのワードを交ぜることで詠唱を止めることなく、待機させていたアーツを行使した。

 ちなみにこれはロードがPVPでよく使うテクニックだ。今回は『風切断』、『火壁』と分かりやすいワードだったが、これが『今日は暑いですね』や『おや、足元が』と言ったワードだと何のアーツが発動したのか分からなくなる。

 さらにロードの場合は偽りの仮面により、発動された魔術の判定は相当困難になったりする。


 それはそうと、未だ私に出番は回ってこない。展開させていたリフレクトも意味は無かったがこのままハーピークイーン戦でも出番無しにならないか心配だ。


「春ハルさん、奥のヤツがハーピークイーンです」


 鑑定を常時発動させてハーピークイーンを探していたのだが遂に見つけることが出来た。てっきり、住処に籠っているものだと思っていたが狩りの帰りだったようだ。

 足には一匹の牛のような動物が掴まれていたがこの惨状を見て驚きから離してしまっていた。

 その落下音で気づいたのだがそれは置いておくとして、残念なことに鑑定では種族名しか分からなかった。

 それはレベル差によってレジストされたからに他ならない。


【trivia】行使者が理解できる内容であれば詠唱の中身は他の理解を必要としない。

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― 新着の感想 ―
[一言] 自分だけが理解出来ていれば、理解をさせない詠唱が出来るゲーム
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