ハーピークイーンの住処
ラピを走らせること30分ほど。春ハルさんによれば「多分ここら辺」と言うことなのでラピから降りてハーピークイーンの変異種を探すことになった。何故、ラピに乗って探さないのかと思うかもしれないがそれにはちゃんとした理由がある。
まず、第一にラピに乗ったままだと春ハルさんが上手く魔力を練れないからだ。これは彼女が持っている魔術溶媒である杖がかなり大きいものであり、取り回しが難しいのが原因だ。
そして、二つ目の理由なのだが......春ハルさんはラピに乗っていると酔ってしまうからだ。馬車酔いなら聞いたことがあるが馬で酔うのは珍しい。きっと、ラピが張り切ってしまったのがいけなかったのだろう。
「ギルマスは行けば分かるって言ってた」
「ギルマスですか。鉱山の街の?」
「そう。ダンジョンから戻ってきたらBランク昇格の話と指名依頼を貰った」
春ハルさんはまさかの飛び級だった。Bランクになると言うのはかなり大変だと聞くが飛び級なら昇格試験などが無いのだろう。まあ、彼女はBランクで収まる器ではないので遅かれ早かれBランクになっていたはずだが。
それに確かBランクから指名依頼を受けられるようになれると聞いたのでそのための処置だったのではないだろうか。
住民とは違い訪問者は死んでもデスペナが付くだけで本当に死ぬわけではないので妥当な判断と言える。
ちらほらスタンピードがどうのこうのと住民たちも噂話をしている頃合いだ。そんな時期に住民の冒険者を強力な魔物の討伐に向かわせるほど愚かなことはしないに違いない。まして、冒険者ギルドを預かるギルドマスターなら尚更だな。
「先ほども言いましたが私のオリジナルスキルは制約によって書術が使えなくなります。それとダメージを受けると効果がリセットされるのでフレンドリーファイアには注意してください」
「今回は広範囲魔術を使わない予定だから問題ない」
「では、作戦でも決めておきますか?」
「賛成。その前に私のオリジナルスキルも教えておく。一つは前と同じだけど、もう一つは待機時間に比例して魔術を強化する効果」
「それはまた、恐ろしいオリジナルスキルにしましたね」
制約を晒すことはしたくないと言うことでオリジナルスキルの表示は無かったが今の効果を聞いただけでも彼女の恐ろしさが分かると言うもの。実際に春ハルさんのオリジナルスキルを見れるのが楽しみだ。
「ハーピークイーンは単体で行動しているみたい。後、大きさは2メートル半ばで鉤爪の攻撃は鉄も簡単に切り裂けるくらい鋭いって」
「群れてないなら難易度は下がりますね。ですが飛ばれていると私は攻撃に参戦出来ませんよ?」
「ゼロさんはやっぱ変。神官が攻撃するのは可笑しい。攻撃は私がするからゼロさんは支援とハーピークイーンの攻撃から私を守ってくれると楽」
「そうですか。では、今回は神官ムーブですね」
遠距離攻撃手段を手に入れるのは急務だろうか。ここは無魔術を習得するか?
しかし、白黒を使うことを前提で万象夢幻を作ってしまったので双極属性魔術のアーツしか使う機会が無い。次のオリジナルスキルの作成で攻撃手段を追加する方が無難だな。
「射程のことを考えるとまずはハーピークイーンを地上に堕とすことを優先したい。そうすれば拘束が出来るから後は魔術の的。負けることは無いと思う」
「油断は禁物ですが制空権を与えなければこちらの勝算の方が高いでしょうね。それでは私は行動不能系のデバフをばら撒きます」
「入るの? MPは節約しておいた方が良いと思う。相手は有知種だから奥の手があっても可笑しくはないよ」
近接戦を封じられるとただの神官になってしまう。さらに今回は長期化した時のためにMPは節約することになったが余計に暇になる。
推奨ランクがAなら格上確定だろうし、デバフが入る確率はかなり低いので無理をするわけにはいかない。適材適所だと分かっているのだが......非常にもったいない。思いっきり身体を動かしたくなってくるではないか。
作戦を練りながら索敵を行っていたがハーピークイーンの住処は簡単に見つかった。行けば分かると言ったのも良く理解できる。何せ、平原のど真ん中に動物の白骨死体があったからだ。
食事のために捕らえられただろう牛のような骨が積み重なり一つの小山になっている。平原の中にこれだけ目立つものがあれば道案内は不要だ。
しかし、残念なことにギルドマスターから齎された情報には誤りがあった。聞いた話ではハーピークイーンは単体で行動していると言う話だったのだが今は多くのハーピーが彷徨っている。
一応、ハーピーは王都近郊でフィールドボスとして出現する相手なのだがこれだけいるとその価値も駄々下がりだ。加えてボス補正が無い分HPなどは通常通りになっているのでそれが面白さを減らしている。
ロードと肩を並べる、しかも魔術のみの対決ならば圧勝できるほどの実力を持つ春ハルさんならモブがどれ程いようが正しく塵芥に等しい。




