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AWO〜ゼロと愉快な5人の仲間たち〜  作者: 深山モグラ
第一章 中央大陸編 第一節 中央王国 第五項 王都
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魔王襲来

「残念、ホーリープリズンだ」


 デスが再度成功する確率など1%を切っていることだろう。そんな乱数に賭けるほど私は運が良いわけではないので行使したのはホーリープリズンだ。

 魔術陣を見ればその色から発動される魔術の属性を知ることが出来るがヤツにそこまでの知性が無いことは確認済みなのでブラフを張った。


 結果としてまんまと罠に嵌まったオークナイトは光の柱によって捕らわれることとなった。その間にオークを処理するため、ラピに合図を出して走らせる。


 オークナイトは光の牢獄から抜け出そうと棍棒で殴りつけるが白黒の強化を受け、なおかつレベル差が30以上もあるのでそう簡単に破壊されることは無い。

 また、オークナイトと言う盾を失ったオークたちは慌てふためき碌な行動を取ることは無かった。


 オークに近づきながらも白の十字架2個分だけ白黒を強化させ、メタモルフォーゼで武器を変換し、すれ違いざまに導魔を一閃。

 オークナイトとは違い鎧を纏っていないので導魔本来の持ち味を生かし、撫でつけるようにオークの首を切り跳ばす。


「残り1体」


 一心同体、人馬一体となり、指示を出さなくてもラピが残りのオークに近づく。オークも仲間が死んだのを見て動揺しながらも得物を振り下ろした。しかし、乾坤一擲の攻撃もシールドを前方に出すことで防げてしまう。

 そして、ひと撫で。先のオーク同様、頭を失い地面に倒れ込む。だが、砂埃を上げることなく光の粒子となって消えていった。


「オークでは相手にならんな。せめてオークナイトからか」


 大地の塔を71階層まで潜った後に街周辺の魔物と戦うと物足りなさを感じる。そのためにもダンジョンがあるのだろうがずっとダンジョンに潜っていることもできないし、何より71階層以上はスリップダメージがあるので攻略できない。

 満足に戦闘が出来るのは魔の森くらいだろうがそれもワールドクエストが終了するまでお預けだ。


「しかし、オークナイトでも魔術無しならの話か。ここだと縛りを付けなければただの作業になるな」


 ホーリープリズンを破壊したオークナイトは残るは自分一体になったことに怒り、咆哮を上げる。


「最後の一合を交えよう」


 ヤツが走り出すのとラピが駆けだすのは同時だった。

 人が走れば少し時間がかかる距離も人外であるオークナイトとバトルホースに掛かれば瞬時に差は埋まる。だが、それでもコンマ秒の世界ではなく、数秒間は接敵までに時間を要する。


 このまま矛を交えたところで結果は大して変わらない。私の攻撃はヤツの鎧に当たることで逸らされて、ヤツの攻撃はシールドによって防がれる。

 しかし、馬上戦ごっこは止めたので神官の強みを最大限生かさせてもらうことにする。


「【天なる光が我を照らし獄門の扉が開かれる〈連続詠唱 三種黒〉】」


 黒の魔術陣が3つ出現し、パラライズ、スリープ、スタンの行動不能系のデバフがヤツに向かって飛んでいく。表情が分かればきっと驚きに染まっていることだろう。


 今まで魔術を行使する時は聖書と魔書を出した状態で行っており、導魔と硬魔を装備した状態では使って来なかった。

 そのためヤツは私が導魔を持っていることから近接戦で挑んでくると考えたのだろう。しかし、銀樹刀にはミスリル鋼の芯が入っているのでMP効率は悪いが魔術を行使することが出来る。


 そして、3種のデバフはオークナイトに吸い込まれた。どれか一つでも判定に成功すれば一時的にヤツはただの木偶の坊となるが......。


 果たしてオークナイトはスリープの抵抗に失敗した。それにより、獲物は手から離れて地面に落ち、体勢を崩して仰向けに倒れ込む。


 欲を言えば棒立ちの状態で眠ってくれた方が攻撃し易かったのだが。まあ、やることは変わらない。無防備に晒された兜の隙間に導魔を突き刺すだけだ。


 ズブリと肉を貫く柔らかい感触が手に返って来る。

 導魔はヤツの口から脳にかけて突き刺さり、一瞬にしてHPバーを砕いた。


 魔刃を解除して血を落とすように振るう。


 攻撃が入れば一撃か。鎧を纏っていても実力はオークと変わらないということなのだろう。それでも、魔術無しでは負けはしないものの長い戦いになったはずだ。それに馬上戦の練習も出来たので実りは多い戦闘だった。


 ラピが速度を落とし、振り返る頃には空中に溶けるように消えていく粒子だけが舞っていた。


〈戦闘が終了しました〉


「私に何か用ですか?」


 ラピに速度を落とすように合図を出しながら、先のオークナイト戦が始まってからずっと私のことを見ていた少女の下に近寄る。


「神官なのに神官してない人を見つけたからもしかしてと思って近づいてみた」


 パチパチと両の手を叩いて、賞賛するように拍手をする少女がそう言った。


「神官は動詞ではありませんがね。春ハルさんがここにいると言うことは王都に向かう途中ですか?」

「そう言うこと。馬車に乗り遅れたから歩いて向っている途中。あ、それと......」


 その少女のPNは春ハル。βテストではロードと双璧を成す魔術職であり、魔王などと呼ばれ、畏怖されている少女だ。いや、実際は18歳を超えているのだろうが150cmほどしかないので少女としか言いようがない。


 腰まで伸びる白髪に陶磁器のような白い肌。トパーズ色の瞳は少し眠そうに閉じられ、身に纏う雰囲気からは儚げさを醸し出している。


「ユニークボスを倒しに行く予定。一緒に行く?」


 ピクリと白色の耳が動き、ゆらりとモフモフな尻尾が揺れる。

 獣人族特有の特徴なのにプレイヤーでは今まで誰一人として見たことのないセリアンス・フォックスの彼女はコテンと首を傾げた。


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