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AWO〜ゼロと愉快な5人の仲間たち〜  作者: 深山モグラ
第一章 中央大陸編 第一節 中央王国 第五項 王都
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変態が潜む宿

「朝食を頼む」

「あいよ。今日は天気が良いからベーコンはおまけだ」


 冒険者ギルドの推奨宿である小鳥の宿り木で朝食を頼み、先に渡されたクズ野菜のスープを飲みながら今後の予定を考える。


 昨日は会合が終わって直ぐにこの宿に入りログアウトした。

 ダンジョン攻略は想像以上に負担になっていたのかよく眠ることが出来たので今からでもフォレストスパイダー程度ならソロで戦えそうだ。


 まあ、今は王都から離れる予定はないので戦うとしたら王都近郊の魔物となる。

 案外、良案だな。朝食を済ましたら外に出るとしよう。久しく相手をしてやれなかったラピも走らせてやらなければいけないからな。


「お待たせちました。朝食でし」


 舌足らずな可愛らしい声がして意識が戻る。

 声がした方を見れば小学校低学年くらいの女の子がトレーに朝食を乗せながらトテトテと危なげそうに運んできているところだった。

 下手をすればそのままひっくり返しそうなほど見ていてハラハラするので幼女から朝食を受け取り、小遣い程度の金を渡しておく。


 その金で菓子でも買ってくれ。本格的にスタンピードが始まれば宿の外に出ることは難しいだろう。もしかしたら、もっと安全なところに避難することになるかもしれないがスタンピードが収まるまでは怯えながら過ごす日々が続くことになるはずだ。


 昨日の会合を見ていると魔物を倒すことしか考えていないクランもあったがワールドクエストの失敗条件に住民について記載があったので最低限は大丈夫か。

 それに住民、特に幼女や少女、少年については死んでも守ると張り切っている奴らもいるわけだから意外と問題ないかもしれない。


 ......既にこの宿にも護衛がいるようだし、この幼女については万が一もなさそうだ。しかも、サブマス自ら護衛とは何をとち狂ったのだか。本当に【少女】愛で隊【幼女】は紳士ばかりのようだ。


「飯食ったら行くか」


 一挙一動すらも見逃さないとばかりに幼女にかじりついている男のことは記憶の彼方に追いやり、朝食を食べる。

 今日のメニューはトースト2枚にスクランブルエッグ、何の肉か分からない団子、それから青い葉野菜のサラダだ。それとおまけの厚切りベーコン、クズ野菜のスープもある。


 ファンタジーの定番ならトーストではなく黒パンなのだがこの世界は白パンが主食のようだ。そう思えば確かに露店で売られているサンドイッチも黒パンは使われていなかった。食文化が豊かなことは良いことだ。


 食事を口に運びながら掲示板を流し読み、情報収集をする。深夜はログインしていなかったのでワールドクエストの状況が変化したか調べているがこれと言って異変は起こっていない。


 これだけ静かなのも怪しい。本当にワールドクエストは始動しているのだろうか。

 今の時間を見ると7時を過ぎていたのでワールドアナウンスから約16時間が経過していることになる。まあまあ時間は経っているのでそろそろ魔物の群れが姿を現しても不思議ではない。


 可能性としては魔泉の決壊とやらが魔の森の大分深くで起こったとかだろう。

 あそこは大分深い森なので深部で発生していればこれだけ遅いのも納得できる。だが、その場合でも不自然なことはあるが......考えても仕方が無いことか。


 店主に礼を言ってから席を立つ。

 朝食は美味かった。厚切りベーコンはかなり塩味が効いていたが夏場と言うことを加味すればちょうど良い塩梅だ。


 昨日の時点で1週間分の予約は済んでいるので部屋の鍵を渡して宿を出る。

 この宿は厩舎が併設されているのでそこに預けたラピを迎えに行く。


 厩舎の中には他の客の馬などの騎獣がいた。

 バトルホースは少ないが変わり種には魔獣だろうトリケラトプスみたいなヤツがいる。あれに体当たりをされれば魔物でもただでは済みそうにない。


「お客さん、お出かけですか?」

「ひと走りしようと思ってな」


 ラピの下に向かっていると馬の世話をしていた馬丁の少年が藁を抱えながら尋ねてきた。

 朝早くから働いていたのか汗を大量に流している。まだ、朝とはいえ夏場は大変そうだ。


「分かりました。直ぐに連れてきますね」


 そう言うが早く少年は藁を置いてラピを迎えに行った。

 何故だろうか、気配察知のスキルには反応がないがこの場所は監視されている気配がする。だが、嫌悪な雰囲気はない。どちらかと言えば見守ると言う感じだ。


「お待たせしました。この子は凄い良い子ですね」


 気配の主を探ろうとしたところで少年がラピを連れて戻って来た。


「こいつは賢いからな」

「バトルホースは気性が荒い個体が多いですけど本当に珍しいですね。競馬に出る個体は凄いって親方から聞きました。僕もいつかは競走馬を手に入れて一儲けしてみたいです。あ、親方だ。僕は仕事に戻ります」


 少年が駆けて行くのを尻目に厩舎を出る。競馬で稼ぐのではなく競走馬の主になって稼ぐと言うのはどうなのだろうか。

 確かに心血注いで育てた馬が勝つのは嬉しいことなのだろう。だが、稼ぐために育ててみたいとは変わった考えだ。もしかしてそれが正しい考えだったりするのかもしれない。リアルとは価値観が違うから何とも言えないな。


「どうどう。もう少ししたら思いっきり走れるぞ」


 やっと走れるのかと首を擦り付けてくるので、腹を叩きながら私は興奮しているラピを宥めた。


【trivia】趣味のためにオリジナルスキルを作成するプレイヤーもいる。一部の界隈ではただ見守ることだけに特化したオリジナルスキルが存在する。たちが悪いことにその界隈ではそのオリジナルスキルの情報が共有され、殆どの者が作成していたりもする。

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