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AWO〜ゼロと愉快な5人の仲間たち〜  作者: 深山モグラ
第一章 中央大陸編 第一節 中央王国 第四項 迷宮の街
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パーティ VS トレントンキング その7

 最初に見上げる程に大きいトレントンキングを包むように双角錐の結界のような物が出現した。しかし、それは瞬きもしないうちに粉々に砕け散る。

 それから間もなくして6色のオーラがトレントンキングの胴体と呼べる幹に吸い込まれるようにして消えていき、最後に真っ黒な虫が樹皮を突き破る。


 一拍置いて轟音。


 ヤツに掛かったデバフを確認すると同時に地面が揺れるような振動と空気を鳴らすような振動の両方が私の体の中を駆け抜けていった。

 顔を上げれば大きなキノコ雲が6つ。しかし、爆心地となった箇所は悲惨であることには変わりないにせよ、状態が全て異なっていた。

 ある箇所では轟々と木々が燃え盛り、ある箇所では土砂に飲まれたように草木に泥がこびり付き、ある箇所では何かに喰われたかのように枝葉の一部が消失していた。三者三様、いや、六色六様の景色がそこには広がっていた。


 特に燃え、凍り付き、罅割れ炎上する箇所は被害の範囲が広い。これはハイディルシャンによって火、水、雷の耐性が下げられているからだ。

 最初にバルネラブルがレジストされなかったのが大きいが、それでも6個中3個の属性被ダメージ増加デバフが決まったのは運が良いとしか言いようがない。それにちゃっかりとバーサークも成功している。これはこれでヤツのVITが下がるので有難いバフ寄りのデバフだ。


 バーサークは成功すればエンチャント・ブラウンダウンよりもVITの減少率が高いので短期戦だったら使い勝手が良い。ただし、30秒と非常に短い時間しか効果が発揮しないので本当に短期戦でしか効果を発揮しない。

 それでもこの距離なら一撃ないし、二撃はアーツを叩きこめるはずだ。仕上げにレオにもバーサークを掛ければダメージ量はさらに飛躍するだろう。


「来るぞ!」


 トレントンキングの幹に浮かび上がる顔のような模様がニヤリと笑ったような気がした。


「絶対防御!!」


 ヤツの枝や葉が騒めくのが合図となって地面が揺れる。初手に喰らった魔導による攻撃だ。

 これに当たればダメージ判定があり、私の万象夢幻が発動してしまう。しかし、その心配も憂鬱に終わる。私たち全員に半透明のバリアが展開されて地震によるダメージとそれに伴う揺れを無効化してしまったからだ。


「走り抜けるぞ」


 沈降隆起を繰り返す大地をレオと一刀が駆ける。


「聖、追撃だ」


 リキャストタイムを考えればバーサークを行使できても一回なので火力特化のレオにバーサークを飛ばす。


 神官としてはこれで役目が終わったと言っても過言ではない。

 トレントンキングのHPはロードの魔術により、残り2割弱まで減少していてさらにはレオたちも向かっている。多少VITが高い程度ではデバフが掛かっている状態から攻守が逆転するような事態にはならない。


「ボウスタイル。属性付与・無、属性解放......ハイスターアロー。ライジングアロー」


 後方で機会を窺っていた聖が攻撃に出た。弓に2本の矢を構え、魔力を纏わせていく。

 出し惜しみはしないと言うことだろう。必要最低限のMPを残して約9割のMPを矢につぎ込んでいる。そして、その魔力は矢に纏わりつき、徐々に圧縮されるように鏃に集中した。

 2本の矢を同時に放つのは至難の技だが、さらに追加でアーツを併用するのは正に神業だ。


 同時に矢が打ち出される。しかし、両者とも同じ速度で飛来することは無い。アーツと言う物理現象に干渉する力を以ってすれば矢の速度を速めるなど容易い。

 実際、先行しているのはライジングアローによって打ち出された矢だ。それは走っているレオと一刀を追い越してトレントンキングにぶつかった。


 そして、空間を抉るように突き刺さった幹を消失させる。

 それから間もなくして第二矢のハイスターアローが全く同じ場所に到達する。

 これはライジングアローよりも深くトレントンキングの幹に突き刺さる。それから属性解放の効果により、樹の内部を喰らい先ほどよりも深く、より大きく抉るように内部を削り取った。


「リーサルかな?」


 聖が呟く。私も同意の意味を込めて頷いた。


 見ればトレントンキングのHPは残り1.5割程となっている。聖の攻撃はトレントンキングのHPを0.5割ほど削ったことになるが、MPの消費量の割にダメージが渋い。

 だが、これもしょうがないことだ。何せ、矢1本による攻撃などトレントンキングから見れば虫が刺さった程度の攻撃でしかないのだから。

 それでもオリジナルスキルの効果によって魔術系統のダメージを叩きこんでいるため目に見えてダメージが入っている。

 もし、属性付与で無属性以外を選択していれば結果は違ったのかもしれないが今考えても仕方がないことだ。

 それに無属性だからこそだろう。矢によって抉られたトレントンキングの穴は未だ再生の予兆を見せていない。


「うぉぉぉおお、最高なシチュじゃねぇか!! 行くぞ、一刀!!」

「攻撃だけに集中しとけ。後は後ろがどうにかするはずだ」

「いつも通りだな!!」


 レオが雄たけびを上げながら走っていく。一刀と何か話していたようだがここからでは何を言っているのか上手く聞き取れない。まあ、私に関係ないことだと思うのでスルーだ。


【trivia】不知火の使用するオリジナルスキル【絶対防御】は行使者に触れた魔力系を完全に無効化する。これは【絶対防御】が『プレイヤーに刻まれた初期状態を常に維持する』効果であることが関係している。

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