ワールドクエスト その1
最後の魔物をレオが倒すと戦闘終了のアナウンスが鳴った。
69階層に到達してから何度も連戦を行ってレベリング中だ。
一度昼休憩を取ったがかれこれ7時間は狩りを続けている事もあって一刀たちのレベルは目標だった70を全員が超えた。これで70階層のフロアボスであるトレントンキングに挑む下準備は出来たわけだ。
しかし、今の時刻は15時とまだまだレベリングを続けていてもスケジュール的に余裕があるので18時を目安にレベリングを継続することにした。
ちなみにだが私のレベルは殆ど上昇していない。もちろんカンストした種族レベルは上がるはずがないのだが、スキルレベルが全くと言って良いほど上がらない。
特に書術は使用回数が数える程度しかないだけあって結局1レベルも上昇しなかった。
「なんだかずっと100体以上の魔物と戦っていると慣れてきちゃうね」
「そうですな。しかし、吾輩としてはあれだけの量が居なければ満足に魔術を使う事が出来なくなってしまいましたぞ。無双ゲーをしているみたいで爽快感がありますからな」
「俺も随分と盾の扱いが上手くなった気がするわ。逆に対人スキルを磨かないとアンバランスになりそうだ」
最初は腰が引けていた不知火だが今では立派な狂戦士だ。
今ではロードが魔術をぶっ放して敵の数を減らす前に自ら突撃してヘイトを買いにいく程だ。
当人は敵の数が少ないと物足りないからと言っていたが、魔術を準備しているロードはフレンドリーファイアを懸念して戸惑っていた。
魔物に突撃したのがレオだったらロードも気にせず魔術を撃ち込んだのだろうが不知火だからな。思いも寄らず戦いが人を変える事が本当だと実証されてしまった。
「次のやつらを釣ってくる」
「次からはもう少し数を増やしても良さそうだがどうする?」
「いいな!! もっと数を増やそうぜ!!」
「そうするとお前らにも動いてもらわないと難しいぞ。周辺の魔物を限界まで引き付けて来ても今より少し多くなる程度だからな」
「では、吾輩たちはどのように動けば良いですかな?」
「あれだろ。一刀と一緒に走れば良いんだろ」
いつもは乗り気でない不知火も魔物の数を増やすことはやぶさかでは無いようだ。
ならばこの機を逃がすなど以ての外ない。一刀にアイコンタクトで問題無いと合図してAGI上昇のバフを直ぐさま更新する。
ロードなどはAGIにSPを殆ど振っていないので全員が走り出したら置いて行かれるのが目に見えているからだ。
これで少しでも底上げしてやれば一人取り残されて魔物に囲まれる可能性は下がる。
「いいか、俺が魔物を引きつけながら走ってトレインを作る。その間にお前たちは俺より、森の中央寄りを俺と合わせるように走れ。それと聖より外側には出るなよ。下手をすればトレインに呑まれるぞ」
「そうだね。それに隠密系のスキルが無いとトレインが分裂する可能性もあるから出来るだけ離れて付いてきてね。レオたちの先導はゼロに任せるよ」
聖の言葉に無言で頷き、書術のセット枠に保険としてホーリープリズンなどの防御系のアーツをセットしておく。
これはトレイン序盤で巻き込まれた時の対策だ。後半になれば白黒で全パラメータが上昇し、まき込まれても挽回できるので特に最初を、気を配れば良いだろう。
「それじゃあ、行くぞ」
「任せな!!」
〈〈とあるプレイヤーが七大罪の称号を獲得しました〉〉
「ワールドアナウンスだ。少し待て」
「美徳に続き今度は大罪か。ワールドアナウンスで流れると言う事は何かーー」
〈〈特定の条件が達成されました。只今より世界の進行が始まります〉〉
〈〈世界の進行【悪意の胎動】が始動しました。只今より100時間経過後までスタンピードが発生します。プレイヤーはこれを防ぎ中央王国を守護してください〉〉
全員が行動しようとした直後、ワールドアナウンスにより称号獲得の一報が届いた。
それが前回の七美徳に対応する形が多い七大罪の称号だったことで一刀が考えを口に出すが、それに被せるかのように再度、ワールドアナウンスが流れた。
「ワールドクエストだと?」
「一度セーフティーエリアに戻って確認するとしよう。場合によっては予定を早める必要がある」
美徳と大罪の称号がトリガーだったのだろう。
この2つが揃ったことでワールドクエストが始まってしまった。それと同時にお知らせ欄にワールドクエストの概要が追加された。
概要を見るためと言うのもあるが、アナウンスにあったスタンピードの発生が気がかりなため中央に戻る。
トレインを始める前にワールドアナウンスが流れたのは状況的に助かった。これが戦闘中だったらワールドクエストと言うイベントに気を持って行かれていたかもしれない。
それでミスを起こしたら今までの攻略が水の泡になってしまうからな。
「教授たちにはメッセージを送った」
「僕もアルポールにメッセージを送ってみた。生産職なら街にいると思うから何か情報を持っているかも」
「俺もフレンドに情報提供を頼んだ。後で情報の共有だな」
一刀たちはフレンドに連絡を取ったようだ。
私もアーサーに連絡をしてみたがあいつらもダンジョンにいるはずなので有益な情報は期待できそうにない。ただ、アーサーはクランを持っているのでクランメンバーからの情報が来ている可能性がある。
ワールドクエストなどβテストの時には無かったので非常に楽しみだ。




