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AWO〜ゼロと愉快な5人の仲間たち〜  作者: 深山モグラ
第一章 中央大陸編 第一節 中央王国 第四項 迷宮の街
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レベリング その7

 すれ違いざまに胴体を斬りつけられたラッシュボアの体から血のようなエフェクトが流れ、HPバーが減少した。

 このまま同じことを繰り返していれば安全に討伐することが出来る。だが、雑魚相手の戦闘時間は少なくしたい。なので、レオにバーサークを飛ばしてから適当なパラメータ上昇系のバフを更新する。

 すると、闇属性魔術からの光属性魔術発動で白黒によって白の十字架が一つ出現する。

 MPのこともあるので一回の戦闘で何度もアーツを行使する訳にはいかないが数回程度なら問題なく使用でき、これにより白黒最大時に比べれば非常に僅かだがパラメータが上昇する。


 しかし、これが案外重要でレオの場合は光魔術のエンチャントアップと聖魔術のハイエンチャントアップが掛かっているため、白黒の白十字架が1つ出現するだけでもバフが掛かっているパラメータが18も上昇する。

 これだけ上がれば適正レベルより少し格上の相手だろうと同じ土俵に上がることが出来る。


「見ときな、ゼロ! カウンターからのパワースラッシュ!!」


 私が一人で思考に耽ているとレオに呼ばれ、視線を向けるとバカ丸出しに突撃を続けるラッシュボアがレオの大剣捌きによって弾かれた。さらに次の攻撃を首元に喰らい頭と胴が分かれて死んだ。

 チビチビ攻撃するヒットエンドランはレオの性分に合わなかったのかもしれない。どちらにせよ、想定よりも早くラッシュボアを討伐できたのは良いことだ。


「ナイスだ。出来るならその流れで次も頼む」

「はいよ! だったらもう一段階強化をくれ!!」

「おい、そっちに一体向かわせたぞ」


 私がレオを褒めるとレオも今のアーツの繫ぎは自身でも満足が行くものだったようで自信ありげに返事を返してきた。

 ついでに白黒の強化をもう一段階上げてくれと頼まれたが、ちょうど不知火たちの援護としてデバフとバフを飛ばしたので完了している。


 それから数秒もしないうちに不知火が受け持っていたラッシュボアの一体を一刀が引き連れ、レオとスイッチした。

 相手は残り4体だがレオが次のラッシュボアを倒すころには不知火たちの方も1体は倒しそうなHP残量になっている。なので、この後はクリティカルボアにさえ気を付けていれば順調に事は運ぶだろう。

 それにしても......レオの戦闘を見ていたら私も体を動かしたくなってしまった。

 クソ、発作が。


「不知火。私にも一体だけで良いからボアを寄こしてくれ」

「はあ? 何言ってるんだ。お前がダメージ喰らったらバフの効果が消えるんだぞ」

「大丈夫だ。素手では戦わない」

「いや、意味が分からんから」

「良いんじゃない? 危なそうだったら僕が間に入るよ」

「ったく。これだから戦闘狂は」


 不知火が悪態を付きながらも一体のラッシュボアを盾で私の方に押しのけた。

 当然ラッシュボアは不知火をターゲットに定めており、反撃しようとするがそれでは意味がないので落ちていた手ごろな石を拾いラッシュボアに投擲する。

 投げられた石は目標たがわずラッシュボアにぶつかる。しかし、ヘイトを奪うまでには至らなったようで私には見向きもしてくれない。

 ただ、それは想定内のことなので次の一手としてインベントリから硬魔を取り出し、それを投げ槍のように投げる。

 今度は石よりもダメージが多く、ヤツのヘイトを買う事に成功した。


 アルに導魔を修繕しておいてもらえて良かった。流石に素手だと私は戦闘に参加させてもらえなかったかもしれないからな。

 それと聖にも感謝だ。これでフォレストスパイダーでの件はチャラにしてやろう。


 ターゲットを不知火から私に変更したラッシュボアは闘牛のように前足で地面を擦りながら目線を私に固定した。

 ああ、これだ。この感じが堪らない。

 相手としては不足だが血湧き肉躍るようなこの感覚。本音を言えばクリティカルボアと殺り合いたかったが仕方ない。


「さあ、やろう」


 聖書を手放して空中に放り投げ、腰を屈めて居合の構えを取る。するとメタモルフォーゼの効果により一瞬で聖書と魔書が送還され、導魔と硬魔が腰に差さった状態で出現する。


 ラッシュボアは準備が出来たとばかりに一度鳴くと地面を蹴り飛ばして加速する。後衛として動くため不知火と距離を取っていたのが災いし、動き出したラッシュボアの速度はどんどん勢いを増す。


 ヤツが近づいている間にもどう攻めようかと私は思考を続ける。

 回避からの攻撃はスマートだが一刀の下に叩き斬るのも良い。

 ヤツを潰す手段が何十と思い浮かぶ中、そろそろ思考の限界が来た。探知も、危機感知のスキルもガンガンと警報を鳴らして危険が迫っていることを知らせるのだ。


 心の中でうるさいと吐き捨て、導魔に手を伸ばし、居合の構えを解いて脇構えに変えた。

 例え目を閉じていても音が、振動がヤツの居場所を教える。

 思考の渦からスキルの効果によって強制的に放り出させられたことに私は不快感を覚えた。そして、殺ろうと確かな意志を持ってヤツを見据える。

 型も決まり、終わりも見えた。この一太刀なら苛立った殺気も生かせるだろう。


 攻之術理 羅刹昇龍


 ヤツが私にぶつかるより早く刀を振るう。

 殺気を刀に乗せて相手の硬直を狙う羅刹と下段からの全力切り上げの昇龍が組み合わさった術は、ヤツの脚を竦ませながらものの見事に切り裂いた。

 殺気によって反撃も封じられ、成すすべ無く両断されたラッシュボアの体は赤いエフェクトを大量に散らしながら私の左右にそれぞれ右半身、左半身を慣性に従って走らせる。しかし、それも一瞬の出来事で一拍の後に黒い靄となって空気中に溶けていった。


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