レベリング その4
はてさて、レベリングを始めてからどれ程経っただろうか。
感覚的には1、2時間程度だが実際のところは4時間。そして、時刻も24時を少し過ぎた頃合いだ。
この四時間の成果は相当だと言っていい。ただ、私の成果は殆ど無しだ。だが、私以外の面子のレベルは十分に上昇した。
それでもまだレベリングは続ける予定だ。それとレベリングと同時に攻略も行っていたおかげもあり、先ほど62階層の休憩エリアに辿り着いた。
「これで明日もレベリングしたとして目標の70超えは意外と簡単に達成できそうだね」
「今日で60半ばまでは上がったから、明日は70後半もあり得るぞ」
「やばくね!! 二日で30レベも上がんのかよ!!」
「これもオリジナルスキル様々だな。ところでお前たちは、二つ目のオリジナルスキルは何を作ったんだ?」
「流石に言わねぇよ。せめて夏イベが終わるまでは秘蔵だな」
レベルアップで浮かれている間に不知火たちがどんなオリジナルスキルを創ったのか尋ねてみたがガードが堅い。
レオだったら教えてくれただろうが話し掛ける相手を間違えたか。まあ、良い。いずれ分かるのだ。それに相手の手の内を全て知っていても面白くはないからな。
「今日は早めに解散するか」
「そうだな。明日は7時に集合で良いだろ」
「では、吾輩は落ちますな」
「俺も上がるぜ!! おつ!!」
明日が本番と言っても過言ではないため、今日はこれ以上攻略を進めることはしないで解散することにした。
明日の予定としては63階層を攻略した後に転移石で69階層まで跳び、そこで時間ギリギリまでレベリングをし、70階層のフロアボスに挑戦と言う流れだ。
63階層を転移石で跳ばすことも考えたが、保険として転移石を1つだけ残しておきたかったので、まだ攻略が簡単な最初の63階層は自力で攻略する案を採用した。
「二人がいない状態で言うのも何だが70階層の攻略が終わった後は全員で王都まで行くとしよう」
「それが良い。ついでにクランの設立も終わらせたいところだ」
「アプデが終われば全員がバラバラに行動するから丁度良いかもな」
「りょーかい。それじゃあ、僕はこの後用事があるから先に上がるよ。お疲れ」
ダンジョン攻略後の話も決まったので私もログアウトするとしよう。
それにしても聖はこの後も用事があるのか。明日、遅刻しなければ良いのだが大丈夫だろうか?
〈ログインしました〉
時刻は6時50分。何故だか今日は4時に起きてしまったのでゆっくりと朝を過ごした。
子供ではないので今日が楽しみで早く起きてしまったと言う訳ではないと思いたいが......もしや老化現象ではないだろうな。と、そんな冗談はさておき、私よりも早く一刀、レオ、不知火がログインしていた。
もう一度言っておこうか。レオ、が先にログインしていた。あのレオがだ。驚き過ぎて二度見してしまった。
それは一刀たちも同じだったようで、どう言うことか最初にログインしたのがレオだったようだ。
話を聞いてみたところオリジナルスキルの使い勝手を確かめるために一人でダンジョンに潜っていたらしい。
レオなら無茶をしない限り、休憩エリアから少し離れる程度ならソロでも大丈夫だと思うが、意外とレオのヤツもオリジナルスキルを秘蔵したかったのかもしれない。
「おや? 聖殿が最後とは珍しいですな」
それから数分してロードがログインしたが聖がまだログインしていない事を不思議に思ったようだ。
聖は待ち合わせには早く来るタイプなので首を傾けるのも頷ける。
それでもあいつの性格上、遅刻する事は無いと思うので時間まで一刀たちと雑談して待機する。すると、7時ちょうどになって聖がログインして来たのだが、何やらテンションが高い。
「ごめん、ごめん。ギリギリ間に合ったかな?」
「ああ、時間は大丈夫だが何かあったのか?」
「知りたい? 知りたいよね?」
「あ、ああ」
「それじゃあ、教えてあげよう。実はCWASが新しく販売するデバイスの購入権を手に入れたんだよ」
「それって完全リンクのやつか?」
「そう! タイプ12―LM」
「マジか。良く当たったな」
聖のテンションが高いのも納得だ。
CWASが新デバイス“タイプ12―LM”を発売するのは知っていた。加えて言えば私も抽選に応募していた程だ。
しかし、結果は落選。現実でも運が悪いのはどうしようもない。
それはそうとタイプ12―LMとはAWOを作成したゲーム会社“CWAS”がAWOのリリースと同時に発表したAWO専用のデバイスだ。
従来のVRヘッドギアでも十分にAWOを楽しむことが出来るが、タイプ12―LMを使えば五感の完全再現が可能になる。
「それだけじゃないんだよね。実は2台分当選しちゃった」
「......マジかよ」
「それは......レオ殿と同じレベルで豪運ですな」
流石に2台当選は驚きだ。
実はこのタイプ12―LMは数量限定でその数なんと20台。聖はその内の2台を手に入れたと言うことになるわけだ。リアルラックが高いにも限度があるだろ。
「それでなんだけど。誰か買わない?」
「買わせてもらおう」
聖の発言に被せるように手を挙げる。
「了解。じゃあ、定価で良いから」
「良いのか?」
「良いよ。昔馴染み料金ってやつさ」
意図せずタイプ12―LMを手に入れてしまった。
お値段は通常のヘッドギアと比べても桁が3つほど違うがそれでも買うだけの価値がある。
五感の完全再現とはそれだけ重要なことだ。
聖には何かお礼を渡さないとだな。おっと、現実の話はこの辺にして攻略を進めよう。
今日がダンジョン攻略最終日になる。
それに今日で攻略できなければ明日の冒険者ギルドで行われる昇格試験に間に合わない。




