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AWO〜ゼロと愉快な5人の仲間たち〜  作者: 深山モグラ
第一章 中央大陸編 第一節 中央王国 第四項 迷宮の街
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レベリング その2

 一体のトライホーンラビットが聖の手によって討伐されている間にも戦況は刻々と変化していた。


「サンドウォール」


 レオと対峙していたトライホーンラビットが地面を蹴り、その推進力を以って跳び出す。しかし、レオとの間に土の壁が反り立って道を塞いだ。

 だが、その土壁は異様に脆かった。確かに現状では私以外のメンバーではやつらとのレベル差は顕著だが、今は白黒によってステータス強化を施している状況であり、土魔術のアーツであろうが威力は十分保証される。

 それなのにこの結果となったのは、それこそロードが原因だろう。


「ハイサンドバインド」


 即座に構築された魔術陣から土で出来た鎖が伸びる。この時にやっと先ほど行ったロードの行動に納得がいった。


 土の鎖はあろうことかヤツに向かって伸びるに従い徐々に太く、そして頑丈になってヤツを拘束してしまった。

 それこそ、ヤツが鎖から抜け出そうと藻掻いても微動だにしない程強固な拘束だ。


 これは推測の域を出ないが同属性の魔術によって次の魔術の強化、ないしは環境を整えたのではないだろうか。そう考えれば最初の土壁が脆かったのも意味が通る。

 ロードの魔力によって生み出された土だからこそ次のアーツであるハイサンドバインドの鎖に融合されてその効果を増幅したのだろう。

 これは基本属性魔術に限った事ではないのかもしれないのでその内、双極属性魔術でも実験をしてみよう。

 強さに貪欲であれとは誰の言葉だったか。それが成功すれば技術面でまた一段と成長できる。


「これで終いだ!! ハイローリングスラッシュ」


 土の壁が生まれた時から様子を窺っていたレオは、目の前で拘束されたトライホーンラビットを見ると同時に大剣にオーラを纏わせて遠心力を利用した一撃を放った。

 青く円の軌跡を描くその一撃は土の鎖を砕き、ヤツの首元に向かって振り下ろされ、そして一撃の下にヤツの身体を両断した。

 それから直ぐにトライホーンラビットは黒の靄と液体を撒き散らしながらダンジョンに溶けるように消えていく。


「聖は周囲の警戒。不知火は一体だけヘイトを取って時間稼ぎ。レオとロードで残りの1体を処理。一刀は次の魔物を持ってきてくれ。これから忙しくなるぞ」


 これで残るトライホーンラビットは2体だけとなった。

 今までの状況から考えて連戦は可能だと判断した私は次々と指示を出して次の準備にかかる。

 戦闘はまだ終わっていないが2体を倒すのに掛かった時間は2分も経っていない。それもまだ白黒が完全でない状態でだ。

 このままいけば一刀の釣りが間に合うか心配になってくる。




 トライホーンラビットのHPバーが砕け散り、最後に残ったのは不知火が相手をしているトライホーンラビットだけとなった。

 この前哨戦のおかげもあって白黒は残り数回で完全に成長しきってしまう。

 何度も実感していることだがオリジナルスキルの効果は凄まじく、今ではロードでさえもまともに攻撃を受けてHPの減りは一桁だ。

 それもそのはずで全パラメータが400ほど上昇している。ここまで来てしまえば怖いものなどないに等しい。敢えて上げるとすればフレンドリーファイアくらいだろう。


「遅えな!!」

「今のステータスを見て釣ってくる量を増やしてるんじゃないか?」


 レオが棒立ちでトライホーンラビットの攻撃を受けている不知火に話し掛ける。

 途中で戦闘処理を行わせないために聖を中間地点役として向かわせたが、それでも一刀が釣りに向かってから5分ほど経過している。

 魔物を大量に釣ってきてくれるのは有難いことなのだが、ここまで遅いと正直言ってMP管理が大変になるので早く戻って来て欲しい。


 中間地点の聖がいるので最大で150メートル先まで移動できるのだが一体どれだけの魔物を引き付けてくるつもりなのだろうか。

 経験則から言えば同時に戦闘できる魔物は200程度だと思うが、もしやそれだけの魔物を集めてきていないよな?

 もしそうなら処理しきれない可能性だって......なさそうだな。

 不知火やレオのオリジナルスキルは明日のために残しておいてもらいたいので使えないが、数が多いだけならロード一人でどうとでもなってしまう。

 だてに全属性の基本属性魔術を習得していないのだ。


「ロード、スイッチと同時に火属性以外で最高火力の魔術を使ってくれ」

「承知しましたぞ。これは腕が鳴りますな。これ程までに強化された吾輩が放つ魔術はそれこそ辺り一帯を灰燼に帰してしまうでしょう」


 先制攻撃をロードに頼んだが人選を間違っただろうか。いや、この場合の適任者はロードしかいないのだから仕方がない。だが、本当にロードの魔術だけで戦闘が終わってしまいそうだ。

 ちなみに火魔術を禁止したのは今の状態でロードが行使する火魔術なら山火事を起こすなど簡単だと思ってのことだ。もし、それで私がダメージを受ければ一瞬で全滅するのは想像に容易いからな。


「もう直ぐ一刀が戻って来るよ。しかも、大量の魔物も一緒にね!」


 それから少しして聖が大声を出しながら戻って来た。

 その顔には少しの怯えが見て取れるが、その一方で今から始まる戦闘が楽しみで仕方ないと表情に出ている。


「ロード」

「分かっておりますぞ。【蒼き海 悠然たる大地 凄烈な旋風 轟く雷鳴 滲み出す虚無 我が纏うは彩色の衣〈クインテットマジック ハイアップ五属〉】」


 ロードの詠唱が終わると同時に展開された魔術陣から五色のオーラがロードに降り掛かり、強力なバフを付与した。

 それは次に行使する属性魔術の威力を上昇させる効果がある。効果に対してMP効率が悪いこの魔術を使うと言うことはそれだけロードも本気と言うことだ。


「おいおい、マジかよ!」


 一刀が戻って来たのだろう。

 地響きが鳴り、最前線にいた不知火が徐々に見え始めた砂塵に及び腰になっている。


 ああ、実に楽しみだ。少しは直接殴り合う場面があるかもしれない。


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