表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
AWO〜ゼロと愉快な5人の仲間たち〜  作者: 深山モグラ
第一章 中央大陸編 第一節 中央王国 第四項 迷宮の街
240/378

レベリング その1

 草むらから姿を現したのは兎の姿をした魔物だった。しかし、始まりの街で出会ったホーンラビットではない。

 確かに見かけはホーンラビットに酷似しているが、その額に生えた角がホーンラビットではないと激しく主張している。


「詳細は確認できないが対象はトライホーンラビットだ。凶暴性が高いみたいだから反撃に気をつけろ」


 敵を視認した一刀が声を上げて情報を共有するが、一刀の持っている詳細鑑定でも詳しい敵の情報は分からないようだ。

 それでも私が鑑定Ⅱを使って調べるよりも閲覧可能な情報が多い。これもトライホーンラビットと言う魔物の存在を冒険者ギルドで調べていたからだろう。


 こちらに向かって突撃してくるトライホーンラビットを前に不知火が動いた。

 全身を隠せるほど大きな盾にオーラを纏わせてから薙ぎ払う攻撃は先頭にいた3体のトライホーンラビットを軽々と吹き飛ばす。

 しかし、攻撃が当たらなかった最後方の1体が不知火の真横を通りすぎ去ろうとする。

 だが、それを不知火が許容するはずもなく今度は全身にオーラを纏った。

 するとどうだろうか。不知火の横を抜けて一番近くにいるレオに向かっていたトライホーンラビットは急に方向転換をして不知火に向かって行ってしまった。


「真正面からでも問題なかったけどな!!」


 背を向けたトライホーンラビットに向かってレオの大剣が振り下ろされる。

 これまたアーツ発動による青の軌跡を描きながら斜めに一回転する攻撃は無防備だったヤツの背中を切り裂いた。

 だが、ここは61階層だ。レベルで負けている相手に対して一撃で仕留めるなどと言う芸当がそう簡単に出来るはずもなく、トライホーンラビットのHPを2割ほど削るだけに止まった。


 攻撃を受けたトライホーンラビットはギロリとその瞳をレオに向ける。

 今の攻撃でレオに対するヘイトが不知火に対するヘイトよりも完全に勝ったのが見て取れた。レオは焦ったように剣を構えるが一刀の忠告通り、手痛い反撃を受けることとなる。


 地面を抉る程の力で跳び出したトライホーンラビットは一直線にレオに向かう。

 その途中で聖による狙撃が行われたがアーツでもないただの攻撃ではヤツを止めることは叶わなかった。

 そして、遂にヤツがレオとぶつかる。どうにか大剣の腹でその攻撃を防ぐことに成功したようだが、弾かれて空中に放り出されたヤツはあろうことか空中を足場にして再度、突撃を行った。

 この攻撃は全くの予想外であり、野生の感とも言えるセンスを以ってどうにか間に片腕を挟むことに成功したレオだったが、ヤツに押されて一歩、二歩と後退した。

 ただ、バフを掛けているので即死はあり得ないと今までの経験から分かっていた私は、ゆっくりと詠唱を進める。


「痛くねえけど痛え!!」


 どんなに設定をリアル志向にしようが現在のデバイスでは従来の痛みを感じることは無い。

 そのため現実ならばヤツの三又の角がレオの腕を貫いていようとも、この世界では大した痛みを感じることは無い。それに穴が空いても可笑しくはないレオの腕は貫かれた部分が、赤いノイズが走ったホログラム状になっているだけだ。

 ちなみにこれは噂なのだが次のアップデートで今よりもリアルを実感できるモードが出るようだ。

 まあ、それが本当かは運営のみが知ること。私個人としては是非とも導入して欲しいものだが果たしてどうなるのか。

 このゲーム専用のデバイスがあれば良かったのだが......運は悪い方だからな。

 そんな事を考えながら何度も続けてきた詠唱は無意識化で口ずさまれており、最後の待機時間が終わると同時に全ての魔術が行使される。


 連続詠唱による光魔術と闇魔術の行使は大いに効果を発揮したと言っても良いだろう。

 バフはいつも通り、シールドやリフレクトなどのアーツを発動させただけだがデバフはどういうことか行使した全てがレジストされる事無く決まった。

 確かにレベル差があるから当然のことだがそれでも4つとも成功するのは珍しい方だ。

 こんな所で何故に運が良くなるのか小一時間ほど議論したいところだが、そんなことはロードたちには関係ない。


 一刀と同様に周囲の索敵を可能とする聖は私のさらに後ろで戦況を見守っていたが、スリーブの効果を受けて睡眠の状態異常に掛かったトライホーンラビットをいつの間に打ち抜いていた。

 オリジナルスキルは発動していないようだがその一矢はトライホーンラビットの腹部を穿ち、勢いを止める事無く背後の樹に貼り付けにする。


 それから間もなくして第二の矢が飛んで来る。

 その時には既に目を覚ましていたトライホーンラビットだったが、縫い付けられた樹から逃げ出そうと藻掻いている間に魔力が籠った矢が飛来してその脳天に突き刺さった。


 その攻撃は脳内に突き刺さっているように見えたがどういうわけかHPバーを砕くには至らなかった。これも単に魔物だからだろう。

 首を落とせば即死するような魔物もいれば体の半分を失っても動いているような魔物がいることを考えれば矢が脳に突き刺さろうが生きていても不思議ではない。

 だからだ。聖はその矢に仕掛けを施していた。

 一見、普通の矢と何ら変わりのないそれは魔力視のスキルを用いて視ればその鏃に魔力が内包されているのが見て取れる。

 それこそ聖の十八番になりつつある属性付与及び属性解放だ。

 これにより内包された無属性の魔力はヤツの脳内で魔力を解放し......汚い花火を咲かした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ