パーティ攻略 その13
一刀の攻撃によって止めを刺されたフォレストスパイダーは力なく地面に倒れ込みそのまま黒い靄となって消えていく。
それと同時に戦闘終了のアナウンスが私たちに勝利を告げた。
多少は危ない場面もあったが白黒を使っていたおかげもあって戦闘自体は大して時間は掛かっていない。
それに後半からは圧倒できていたのでこれからもこの戦闘方法は使っていけることが十分に証明された。
続いて戦後処理に移る。
ドロップアイテムを確認するためにインベントリを確認すると案の定一番レア度の低いフォレストスパイダーの粘着糸がドロップしていた。
そっとインベントリを閉じると同時にでレオが騒ぎ始めた。
「おい、見てくれよ!! 身体強化のスキルの書が落ちたんだけど!!」
「マジかよ。それスキルオークションで180万くらいで落札されてたぞ」
「マジで!! しかも、フォレストスパイダーの鋏角もドロップしたぜ!!」
「本当か? 良かったら鋏角を売ってくれないか。10万バースで買い取るぞ」
「売る、売る!! 今日の俺は幸運だな!!」
どうやらダンジョンアイテムを入手したようだ。
それも私がオークションで落とした身体強化のスキルの書と言うではないか。
180万もしたスキルの書を難なく手に入れるとは流石にリアルラックが高いだけはある。さらに聞けば魔石の次にレアな鋏角も手に入れている。
何故こうも私には運が無いのだろうか。これもきっと運営が確率操作しているからに違いない。
「身体強化のスキルってゼロが落札したって言ってたやつでしょ? それを簡単にドロップさせるんだからレオの運は本物だね。ところでフォレストスパイダーのドロップアイテム何だった?」
「粘着糸だったぞ。それとあいつの運は本物だが身体強化は今後必要になるだろうから180万でも悔いはない」
「まあ、それもそうだね。後、ちなみに僕のドロップアイテムは魔石だったよ。それと詳細鑑定のスキルの書もドロップしたんだよね。ゼロは最底辺アイテムなの僕はその上を行くのか~。あ、ごめんね。ゼロの前で話す事じゃなかったよ。あはは、僕もレオたちと盛り上がってこようかな」
聖が煽るかのようにオークションの話を持ち出してきたが、それについては大人な対応で対処できる。
確かに金も掛からずに身体強化を手に入れたレオの事を恨めしいとは思わないでもないが、このスキルは結局レオが使うはずなので、あの時に落札しておかなければ身体強化を手に入れることが出来なかったかもしれない。
そう考えれば怒りなど湧いてくるわけがない......はずだったのだがここにきて聖が最もレア度の高い魔石を手に入れ、さらに詳細鑑定のスキルの書をドロップしたとニマニマしながら伝えて来たではないか。
私のドロップアイテムがハズレだったことを知りながら、見せつけるようにインベントリを開いてだ。
とりあえず私刑は確定だな。
「......デス」
即死の魔術であるデスを行使すると眼前に黒色の魔術陣が構築される。
すると、そこからボロボロのローブを纏った骸骨が現れ、片手に持っていた巨大な鎌を聖の首目掛けて振り下ろした。
「ごめんごめん。そこまで怒らなくてもいいじゃないか。ただの遊び心だよ」
「そうだったのか。だが、お前は運が良いようだから大丈夫だよな? デス」
しかし、骸骨が振り下ろした鎌は聖の首を刎ねる事無く透過してしまった。
これだけレベル差があっても成功しないとは実践では使い物にならないな。ただ、私の怒りは冷めないので後数回は行使してみるとしよう。
残念なことに聖も運が良いので成功する確率は低そうだがな。
「61階層に行くとしよう」
聖殺人未遂事件と言う些細な出来事はあったが、全員の準備も完了したと言うことで遂に61階層へ進出することになった。
そして、ここから今までとは違い魔物も強力になっているはずなので1階層辺りの攻略時間は伸びることになる。ただ、私以外のレベリングを兼ねているためもとより攻略は度外視で挑むつもりだ。
それにどうやら今回のフロアボス戦で種族LV50が目前になった者もいるようだ。
そう言った事情もあり、フォレストスパイダーとの戦いよりも厳しい戦闘になるかもしれないと言うのに誰もがやる気に満ちている。
斯く言う私もMPも全快させ、バフも全て掛け終わっている。
60階層のエリアに設置されていた魔法陣に全員が乗り込むと転移が発動して61階層に跳ばされる。
今までも何回も体感しているのでなんて事は無いが今回は少し違った。
31階層から59階層までフロアボスがいる階層を除けば転移の後に見えてくる光景は林であり、そこから中央に向かうほどに巨大な樹々が乱雑に生えている場所だった。
しかし、61階雄は森林と言うコンセプトは変わらないまでもこれまでとは違い、より深い森となっている。
それこそダンジョンに存在する人口太陽の光が届かない程に暗く、そして不気味な気配を放っていた。
「思っていたのと違いますな」
「俺は暗視のスキルがあるからいいがこれだと戦闘に支障が出るぞ」
一刀たちも転移が完了した瞬間にここの空気が今までと違うことを感じ取り、それぞれの得物に手を掛けている。
私も導魔ではなく師匠から譲り受けた聖書を手にしており、周囲の状況を把握しながら魔術を行使した。すると今まで薄暗かった視界が突如昼のようにクリアになった。
「このまま連戦を始めよう。目安は100体で一区切りだ」
暗視の効果を付与するナイトビジョンを使ってみて分かったのだが、これをレオたちに掛け続けるとMP消費がバカにならない。
なので、周囲一帯を照らすことが出来る光球を作り出すライトを発動させる。
本来なら光によって魔物を呼び寄せる原因になり得るが、今回の場合は逆に魔物に寄って来て欲しいので大丈夫だろう。
「了解だ。それじゃあ、何体か連れてくる......つもりだったが必要なさそうだな。不知火、右側から4体接近中。大きさはホーンラビット程だ」
「はいよ。任せとけ」
早速効果が表れたのか、一刀の忠告通り右側から草木を揺らす音が鳴り、そこから次々と魔物が姿を現した。




