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AWO〜ゼロと愉快な5人の仲間たち〜  作者: 深山モグラ
第一章 中央大陸編 第一節 中央王国 第四項 迷宮の街
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パーティ VS フォレストスパイダー その4

 ヘイトが不知火に向いている内にとヤツの傍から脱出した瞬間、魔術による弾幕攻撃が始まった。

 火に水、土や雷と言った属性を弾丸のように放つバレット系のアーツだろうが、正しく弾幕となったそれは大いにヤツの注意を逸らすことに成功したようだ。

 流石に最初に覚えるアーツと言うだけあって、パラメータが上昇している今でもそのダメージ量は雀の涙よりも少ないが、これにより一刀とレオがスキルを発動させるまでの時間稼ぎができている。


 最初に攻撃したのは身軽な一刀だ。

 青の軌跡を描きながら穿たれた短剣はヤツの脚の関節を貫き、その脚を切断することに成功するがそれだけではない。

 一刀が次に放った攻撃でさらにもう一本の脚の関節を切断したのだ。ただ、脚の付け根から切断できたわけではないのでヤツが行動するには問題なさそうだ。

 しかし、ヤツの跗節、言うならば脚の先端を切り落としたことであの鋭利な刃物のような脚が二本使えなくなったのは大きい。

 それにバランスも崩れたので今後の攻略に生きるだろう。


 次に一刀の背後にいたレオがアーツを使った。

 レオのSTRが高いからか、それとも剣術の二次スキルである長剣術Ⅱのアーツが一刀のスキルより強力だったからかは分からないが、濁流のように膨れ上がったオーラを一気に放出するように放った横凪の一撃は左前脚を根本から叩き折った。

 これにはヤツも危機感を感じたようで残った右前脚でレオを突き刺そうと振り下ろす。しかし、それは不知火の盾によって防がれてしまう。


 そうして生まれた一時の硬直を好機と見た聖が神速の一矢を放った。

 隣にいる私では直視できない程に光を散らす雷の矢は、聖のMPの約半分が込められているだけあっていとも簡単にヤツを貫き、その背後にある樹々にも穴を空けながら行方を眩ませた。


「やったかな?」

「それはフラグだぞ。それにHPバーが砕けていないのは見ていれば分かるだろ」

「だよね~。今ので死なないってどういうことさ」

「魔物ですからな。体に穴が空いた程度では死なないのかもしれませんぞ」


 この会話からも分かる通りヤツは死んでいない。

 そればかりか普通に反撃を始めてしまったが、それは不知火が何とか抑えているので大丈夫そうだ。

 それにしても今の攻撃は事前に来ると分からなければ避けるのは難しい一撃だった。

 もしも、今の攻撃でヤツの魔石を狙い撃つことが出来ていれば、今頃は戦闘終了のアナウンスが流れていたことだろう。

 しかし、結果はこの通りヤツは死んでおらず普通に戦闘で来ている。ただ、聖の攻撃も無駄ではなくHPを1割程削っていた。

 MPの消費量に比べたら割に合わないダメージ量だが、使い方によっては必殺の攻撃になることが分かったのは収穫だな。


 そうこうしている内に前線では戦闘が激化しているのでパラメータ上昇系のアーツを更新するために詠唱を始める。

 戦闘開始時に比べて今では全員のパラメータが大幅に上昇し、気兼ねなく詠唱をすることが出来るようになったのでフォレストスパイダーの討伐も時間の問題だろう。


 それから詠唱を2回ほど行った時点で完全にこちらが優勢になった。

 ロードがヤツの意識を引き付けるために行使しているバレット系のアーツによる攻撃も雀の涙程度にはダメージ量が増加しており、さらにそれが弾幕となっていることも合わさって徐々にヤツのHPを削り出している。

 ロードもこの結果を見て調子を良くしたようでバレット系の弾幕の中に時々、剣や槍と言った武器を模る魔術が含まれるようになった。

 こうなればヤツも黙っていられなくなり、ロードを攻撃しようとするがロードの反対側には一刀とレオがいるため、その二人がそれを見過ごすわけもなく攻撃を加えていく。


 ヤツもどうにか逃げようとするが、後退しようとすれば魔術や矢による攻撃が飛んできてそれは防がれ、前進しようとしても不知火が道を塞ぐため動くことが出来ない状況になっている。

 さらに言えばレオやロードがいる方向に逃げようとしても絶妙なタイミングで不知火がヘイトを稼ぐアーツを使うためもはや八方塞がりと言った状態だ。

 ちなみに私は不知火の後方に立ってひたすらに光属性魔術と闇属性魔術を行使している。


「そろそろ何か来るかもしれないよ」


 私の代わりに戦況を見極める役目を受け持った聖がヤツを見てそう言った。

 どうやら後少しでヤツのHPが1割を切るようだ。

 大体のボスは残りHPが少なくなると特殊な攻撃を行って来るので聖の忠告はもっともだろう。今までそれらしい攻撃を見せてこなかったヤツならその可能性はさらに高まると言うものだ。


 聖が忠告してから少ししてレオの攻撃により、遂にヤツのHPが1割を切ることになった。

 するとどうだろうか、ヤツは全ての脚を使って後退したではないか。

 それもただ単に後退するのではなく大きく跳ぶように後退することでロードたちの不意を突き、撃墜される事無く退避して見せた。

 さらに、空中に跳んでいる間に尻をこちらに向けて一刀たち三人を容易に覆い尽くす程の巨大な蜘蛛の巣を射出した。


「吾輩の想定通りですな......ハイサンドウォール」


 しかし、その蜘蛛の巣が一刀たちを拘束する前に巨大な土の壁がそり立った。

 今の一瞬でアーツを行使できたのは本当にこの攻撃を予想していたからだろう。だが、ここでヤツは予想を超えてきた。

 なんとヤツが放った蜘蛛の巣は硬度が高い糸だったのだ。

 いや、そこまではロードも予想出来ていた。その証拠に火魔術系統のアーツを使わなかったのだから。

 しかし、この状態でヤツが硬糸を使ったとことをもう少し考慮しなければいけなかった。

 そう、ヤツが放った硬糸の蜘蛛の巣はロードが構築した土の壁を綺麗に切り裂いて一刀たちに襲い掛かった。


「こうなるよね。まあ、僕は分かってたけど」


 構えを解いた聖がぽつりと呟いてから僅か数瞬後のこと、近くで爆発が起こったかのような爆音が鳴り響いた。

 その発生場所は言わずもがなだが、襲い掛かる蜘蛛の巣の標的となった一刀たちは衝撃による地響きを受けて体勢を崩した。

 レオは何が起こったか分からないと顔に疑問符を浮かべていたが、簡単に言えばロードが生み出した土壁をヤツの蜘蛛の巣が切り裂きながら進んでいる途中で聖が属性付与と属性解放を施した矢で打ち抜いただけだ。


 ただ、打ち抜くと言っても必然の二つ名を持つ聖でもあの細い糸に矢を当てるなどと言う芸当は出来ない。

 なので、ロードが作り出した壁の破片にぶつけることで鏃の内部に包容された無属性の属性魔力を解放してその衝撃で蜘蛛の巣を吹き飛ばした。

 そして、聖が込めたのは無属性の魔力であり、解放と同時に爆風を生み出す風属性でない事を瞬時に理解した一刀が走り出した。

 その身体にはオーラが立ち昇っており、アーツが行使されようとしているのが見て取れる。さらにはレオも一刀が走り出したのと同時に動き出し、手に持つ大剣に青いオーラを纏わせ始めた。


 私も最後の仕上げとばかりにここで最大火力を出せるレオに対してバーサークを行使する。

 すると展開された魔術陣から飛び出た虫のような漆黒が、レオの中に侵入して防御力を減少させる代わりに攻撃力を上昇させた。

 この瞬間で出来るのはこれだけだと自分の仕事に満足するも、一応の保険として回復系の魔術を待機させて一刀たちを見る。


 スライディングをしながらヤツの真下に潜り込んで攻撃を決める一刀を圧し潰そうとフォレストスパイダーが動いた。

 しかし、寸前のところでレオが使う下段から最上段目掛けて剣を振るう剣術のアーツ、ムーンスラッシュを受けて防がれ、さらにそこで生じた隙を逃すまいと振るった一刀の攻撃が決め手となって最終的にヤツのHPバーが砕け散った。


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