パーティ VS フォレストスパイダー その1
魔法陣が設置されている階段の下に集まった私たちは60階層のフロアボスであるフォレストスパイダー攻略について作戦会議を始めた。
司会進行は情報屋として情報を入手してきた一刀だ。ここからは私も未知の相手となるので無理せずに行動していかないといけない。
「フロアボス戦だが俺が調べた情報によれば僕としてフォレストスモールスパイダーが出現するようだ。ちなみにこの情報は住民から集めた情報だから俺たちの場合はどうなるのかは分からない。ただ、大きく変わることは無いだろう」
そう言って一刀が説明を始めた。
内容としてはこうだ。フォレストスパイダーの脚と鋏角は硬く鋭いため鉄すらも容易く切り裂くことが出来る。さらには蜘蛛系の弱点ともいえる腹の部分は高い硬度を誇る糸によって守られている。
そして、フォレストスパイダーが吐き出す糸には粘着性の糸と先ほど言った硬質な糸の二種類あり、硬質な糸は火に対して高い耐性を持っている。
他にもフォレストスモールスパイダーについても話していたが、これに関しては既に50階層台で戦闘経験済みなので適当に流した、が要するにフォレストスパイダーの下位互換だ。
「エリアについてはどうなの?」
「すまないがそこに関しては分からん。だが、フォレストと言うくらいだからリアクティブスネークがいたエリアのように森だろうな。だから、蜘蛛の巣には注意した方が良いだろう」
「蜘蛛の巣ならば吾輩が処理しますぞ。ただ、全部が粘着性の糸で出来ているとは限らないので最低限の注意は払って欲しいものですがな。特にレオ殿」
「俺か!? まあ、任せな!! それより切りよくLV50になってから挑まねえのか?」
「2つ目のオリジナルスキルを創ったとしても直ぐに使いこなせるとは限らないから今のままでいいんじゃね?」
レオが言ったように私以外のレベルは平均48なのでもう少しでオリジナルスキルを創ることが出来る。だが、オリジナルスキルを創ったところで使いこなせなければ宝の持ち腐れとなってしまう。
そのためフォレストスパイダー戦を目前に控えた今でも50レベルまで上げることはしなかった。もしも道中でレベルが上がれば、それはそれで儲かりもの程度の心持だったわけだ。
「そう言うことなら仕方ねえな!! よし、行こうぜ!!」
「ちょっと待て、レオ。他に聞いておきたいことがあるやつはいるか? ......特になさそうだな。まあ、今回の戦闘はゼロがいるから問題はないだろう。ただ、ゼロがやられたら俺たちもお終いだがな」
「そこは気にするな。もしもの時は聖とロードを盾にする」
「何それ!? 僕は嫌だよ」
「吾輩も御免こうむりたいものですな」
「安心しろ。実戦で役に立つか分からないがリザレクトがあるぞ」
「安心できないんだけど!?」
冗談はさておき、私が本当に死んだら壊滅は免れないだろう。
何せ相手は最低でも10レベル分は格上だからだ。そして、そのためにも全方位に対して警戒を怠らないことが重要だ。まあ、油断するつもりはないが。
こうして聖とのおふざけの間にも不知火たちは準備を行っており、そのまま全員の準備が完了したため階段を上って魔法陣に乗ると私たちは56階層に跳ばされた。
「さっきの作戦通り動くが相手の行動に合わせて臨機応変に対応してくれ。それじゃあ、詠唱に入るがその間の護衛を頼む。バフを掛け終わったら転移石を使って60階層まで跳ぶぞ」
全員の返答を聞きながら詠唱を開始する。
バフを掛けるだけなら詠唱などいらないが、白黒を最大限活用するには出来るだけ早くバフを掛けてしまいたいので詠唱は必須だ。もちろんただの詠唱ではなく連続詠唱だ。
私が全員にバフを掛けている間にもホーンラビットに見つかり戦闘になったが、これに関しては不知火とレオが仕留めたようだ。
それからも連続詠唱を行うこと12回。やっとのことで全てのバフを掛け終わることが出来た。
12回と言葉にすれば少なく聞こえるが実際のところは1回の詠唱で6種のバフを掛けているため全て合わせると行使したアーツの回数は70を超える。
それにこれだけのバフを掛ければ消費MPもバカにならず、500以上あるMPは半分ほどまで減少している。
それを高品質のMP回復ポーションを服用することで全快にした私はちょうど戦闘が終了するタイミングを見計らってインベントリから取り出した転移石を使用した。
「これって本当に57階層かな?」
「さあな。そのうち分かるだろ」
きっと、多分だが転移石の効果は発揮したのだろう。
ぱっと見ではさっきまでいた56階層と見た目は変わらないので本当に上層に行けたか分からないが、流石にそんなバグみたいなことは起こらないだろうと信じて再び転移石を使用する。
一瞬だけ視界が真っ暗になり、さっきも見た光景が目に映る。これで58階層だ。
本当に転移で来たか不安になるがバフの残り時間は刻々と減少しているのでまたもや転移石を使用する。
「これで59階層だな」
「やる気はマックスだぜ!!」
「それじゃあ行くか」
そして、4個目となる転移石を使用した直後、私たちの視界にはさっきまでのエリアとは違う深い森が映り込み、それと同時に戦闘開始のアナウンスが流れるのだった。




