パーティ攻略 その11
52階層に跳んで幾分が経過した。まだ初期区域を抜けていないがもう少しで次の区域に進出できそうな所まで到達できている。
「この階層はこのまま攻略しても問題なさそうだな」
「そうだな。レベル時にはギリギリ勝てるラインだし戦闘重視じゃなければいいだろう」
「そんじゃあここもスルーなのかよ!!」
「そう言うことだね。40階層台は予想以上にスムーズに進んだことだしこのまま転移石を温存でも良さそうだね」
とりあえず腕試しと言うことで51階層を攻略してみたのだが、意外と問題なく進めると言うことで転移石を使わずに攻略をすることになった。
今後の作戦としては55階層辺りまでは隠密を主軸に行動し、60階層までは転移石を使って挑み、60階層のフロアボスについては一刀が事前に調べた情報を元にステータスのごり押しで攻略する。
今日中に60階層に辿り着くことが出来れば明日は60階層台で余裕をもってレベリングをすることが出来るからな。
「早速来たぞ。左からラビットが5体接近中だ」
「俺がヘイトを奪うからレオと一刀が処理をしてくれ。ゼロは何時ものバフを頼んだ」
「了解だ。エクスペンショントリプル......エンチャント・ブラウンアップ」
「吾輩たちは支援に徹しますぞ」
隠密行動を重視するが故にロードの魔術は出来る限り使わないようにしてもらっているが、そうなると貴重なダメージ源が少なくなるので効率が悪くなってしまった。
特にトレントン系の魔物には苦戦させられている。トレントンはVITが高いのでレオたちでは有効打にならないのだ。
まあ、見つからないように進めば問題はないのだが。
ホーンラビットが群れを成して近づいてきて射程内に入った瞬間にその脚力を存分に使った跳躍を見せた。
それにより一瞬にして距離が詰められて不知火に直撃する。不知火も盾を構えて攻撃を防いでいたが衝撃までは防ぐことが出来ずに蹈鞴を踏んだ。
それに盾で防いだと言えど判定としては無効化できていないようでHPが削れてもいる。
「思ったよりもレベル差が顕著に出てるね。ここで少しレベリングしておく?」
「その必要はないだろう。結局私たちの目的は55階まで進むことだからな」
「吾輩が加われれば何とかなるのでしょうがそうすると魔物をおびき寄せるだけでしょうしな」
不知火を回復しながらレオたちにバフを掛けて支援し、支援役に徹しているロードと聖の三人で暇を持て余しながら話し合いをする。
聖はたまに矢で援護をしているがアーツを使わなければ良いダメージが出ないため様子見をしながらの援護だ。
ホーンラビットが5体いるとは言えβテストの時には散々戦った事のある相手であるためこのままいけば問題なく勝利を収めることが出来るだろう。
ホーンラビットは攻撃方法も単調だし、不意を突かれることは無いだろうからな。
不知火が3体のホーンラビットを押さえている間に一刀とレオがそれぞれホーンラビットを相手にしてHPを削っている。
不知火のHPは数に押されて徐々に減少しているがそれもリジェネーションを使えば持ちこたえることは出来る。
50階層台前半のこいつらはレベルも50から55の範囲には収まる事が多いため今の私以外のメンツよりもレベルは高い。
それでも何とかなっているのを見ればやはり60階層台でも通じないことは無いだろう。それに白黒を使えば連戦しても、一人も死ぬことは無く勝利を掴めるに違いない。
「こっちは終わったぞ」
「俺もだ!!」
「それじゃあ、好きなホーンラビットを持っていきな」
同時にホーンラビットを倒したレオと一刀が、不知火が受け持っていたホーンラビットのタゲを取るとそのままアーツを使いながら攻め始めた。
不知火は自身の下に残った最後の1体をシールドバッシュでHPを徐々に削り、聖の援護も受けて守りから攻めに移った。
「大体3分くらいか。少し時間が掛かっているな」
「ですな。敵が単体なら集中砲火でなんともなるのですがな」
「仕方ないからあれ使っちゃう?」
「それが良いな。相手が5体以上ならホーリープリズンで凌ぐか」
〈戦闘が終了しました〉
戦闘も終わり一刀たちが近づいてきたところで今後の方針を決めて攻略を再開した。
一刀たちと比べればこの階層にいるホーンラビットたちの方がレベルは高いが私はカンストしているので比べるまでもない。
「ゼロ、前方にボアとウルフの6体編成だ」
「分かっている。不知火、そのまま直行して接敵したらノックバックを頼む」
トレントンたちとの戦闘を避けながら攻略を進めていたら羅針盤が示す方向に混合編成の魔物たちがやって来た。
ボアは少し不安要素になり得るがバフを2重で掛けているのできっと大丈夫だろう。
「【地に刻まれる刻印 支配者は十の神杖を携える 天より降り注ぐは一条の光ーー】」
アーツの効果をより強力にするためにも詠唱をすることでイメージを固める。
これをするとしないのでは意外と効果が違ったりするのだから、確実性を求めるなら詠唱をしないなど出来るはずがない。
私が詠唱をしている途中で徐々に魔物たちの姿が見え始める。
それから樹々の隙間を縫ってこちらに向かってくる魔物たちを身体に青いオーラを纏わせた不知火が盾で受け止めると、ついで盾にもオーラを纏わせて殴りつけた。
今の盾術Ⅱのアーツであるハイパワースタンによって攻撃を弾かれ、さらにノックバックも加わることによって最前線にいた2体の魔物が後ろに下がる。
「【ーー嘆き、叫び、藻掻き、苦しみ、それでも絶えず生に束縛される 永劫の牢獄よ集いて鉄槌を下せ〈ホーリープリズン〉】」
詠唱が完了したホーリープリズンを発動させると6体の魔物を範囲に含めて十の魔術陣が出現し、空に向かって光の柱が生まれた。
詠唱とバフにより威力が増したホーリープリズンなら十秒程度は耐えてくれることだろう。
「今だ、行くぞ。レオは先導を頼む」
「まかせな!!」
背後に光の柱が殴りつけられる音を残して私たちは52階層の中央目掛けて走り出した。




