パーティ VS リアクティブスネーク その3
詠唱を挟むことでイメージを固めながら連続詠唱により一度に大量のバフを私以外に二重で掛けて支援をする。
その間にもレオたちは動いているがヤツはこれ以上後退することは出来ない。さらに横に逃げようとしてもMPが膨大に込められた聖の矢がそれを阻止しようと道を塞ぐため正面衝突するはめになっている。
ヤツが尻尾を振って鱗を飛ばす。飛ばされた鱗は数十枚あり、レオたち目掛けて雨のように落下するが一刀はアーツを使用しながら避けてレオに降りかかる鱗は不知火が盾で受け止める。
だが、ヤツの攻撃はそれだけで終わることは無く幾度も鱗を飛ばしてくる。
さらに蛇行しながら突撃したり、締め付け攻撃も来る。締め付け攻撃だけはヤバいので何とか避けているがその他の攻撃は殆ど不知火が一手に受けている。
レオと一刀は回避から攻撃に転じているのにも関わらずヘイトが向いていないことを見るとヘイト管理は完璧なようだ。
「それでは行きますぞ」
ロードが詠唱を終えると同時に巨大な魔術陣が幾重にも重なってヤツの真下と周囲を囲むように出現した。その数は12だ。もはや何と言えばいいのかすら思いつかない程の演算能力に脱帽するしかない。
魔術陣は最後にまばゆい光を放つと陣から現象が生まれた。
一つは範囲内をそれぞれの属性に見合った領域に変えるサークルの魔術、もう一つが各属性の竜巻を起こすストームだ。
サークルはヤツの全体が収まるようにボイドサークルを中心に五芒星を描いて展開されてストームは六芒星の各頂点に当たる場所から出現してヤツ目掛けて進行する。
そして、狙っての効果かは分からないが同属性のサークル内に入ったストームはより威力を増して中央に収束しながら最終的に一つの嵐となってリアクティブスネークに襲い掛かりダメージを与えていく。
それと同時にレオと一刀が動き出した。ロードの魔術を喰らい鱗が剥げたところをアーツを使用して攻撃する。
最初に攻撃を仕掛けたのは一刀だ。青のオーラが迸り、巧みな身体捌きを以って襲い掛かる攻撃を避けながら攻撃を与え続ける。
レオは爆風など知らないとばかりに豪快に進み強力な一撃となるMP消費の高いアーツ使いう。
聖もロードと役割を交代して攻撃に専念している。属性解放は使わずに新しく使えるようになった魔力の収束による属性攻撃の強化を施した矢でヤツの目や鎌首と言った頭部を中心に攻撃を繰り出していた。
不知火もロードに向いたヘイトを奪いながら攻撃に専念しており、三人にヘイトが向かないようにアーツを放っている。
私はと言えば適度に不知火にハイヒールを飛ばしながらマナスティールや属性強化のバフを使って味方の援護をしている。それと書術を使って経験値稼ぎも忘れていない。
正直ボス戦では闇魔術のデバフは役に立たないので白黒を常に気にしなくて良いと言うのはMP的に助かっていたりする。書術のメディテイションさえあればMP回復は間に合うからな。
それから程なくしてリアクティブスネークのHPが3割を切った。このまま押し続けられれば勝利は確定だ。そして、その地盤は既に出来上がっている。
ロードは残りMPも少なくなってきたことから攻撃主体を止めてチマチマとヤツに攻撃を仕掛けることで行動制御を行い、不知火も全員のヘイト管理を一手に背負いながら攻撃を捌き続けている。
私もバフによる支援を行い、聖がアーツで鱗を剥ぎ、そこをレオと一刀が攻撃によってダメージを与えている。
ヤツが尻尾を振れば鱗が飛び爆発が起こって砂ぼこりが舞い、その中を進み影から体当たりを繰り出す。それを不知火が防ぐことで僅かに硬直を生み出せば一刀が駆けだし、まだ再生していない鱗の場所を切り裂きながら進む。
ヤツも攻撃を喰らえば流石に反撃か逃げようとするが反撃を選べば不知火に防がれ、逃げようとすれば鎖が飛んできて体を拘束される。しかし、動かなければただの的にしかならないため逃げる方向へと動いた。
だが結局はロードに捕まってしまう。魔術陣から出現した鎖はヤツの胴に絡みつくと逃がさないとばかりに拘束してしまうのだ。
こうなってしまえば拘束が解けるまで動きようがない。そこを狙ったかのように聖が援護を寄こした。
聖の身体に青のオーラが現れて矢を空中に放つとそれは瞬く間に数を増やしてまるで雨のように降り注ぐ。これによりヤツの鱗は衝撃を感知して盛大に爆発を起こし、素肌を露出させる。
それから途中思わぬヤツの反撃に遭って途切れることはあったがこの工程を繰り返すことで遂にはHPバーも残り数ミリと言うところまで来た。
「最後は貰った!!」
そして、その言葉と共にレオの身体が光り出し、下段に構えた大剣を宙返りと同時に振り上げることで胴体を切り裂きながらヤツを攻撃してHPバーを砕いた。
それにより、リアクティブスネークは一瞬だけ悶えるも、その後は何もできずに黒い靄となって弾け飛び私たちの前に戦闘終了のアナウンスが流れた。
「よっしゃ!! 俺がラストアタッカーだぜ!!」
レオが喜びの舞を披露してくれているが興味はないので無視しながらメディテイションを発動させてドロップアイテムを確認する。
結果はお察しの通り、前回と被りでヤツの鱗だった。40階層のフロアボス戦で不知火がスキルの書をドロップさせていたので期待していたのだがそう甘くはないようだ。
「ドロップの方はどうだった?」
「残念ながらハズレだ」
「そうか、残念。僕もだよ」
「吾輩はヤツの牙でしたぞ。多少の価値はありそうですが微妙と言ったとこでしょうかな」
「全員はずれのようだな。まあ、レア枠のアイテムはそう簡単に落ちないってことだ。てなわけで先に進むとしようぜ。時間が押してるんだろ?」
ボスのドロップアイテムがしぶかったからと言ってここで嘆いていても仕方がない。何せ私たちの目的は70階層のフロアボスなのだから。




