パーティ攻略 その10
全員の視線が私に向いたのを確認してから導魔に魔力を流す。今度はMPを消費してとにかく大量にだ。導魔を覆う魔力は熱気の様に立ち昇ろうとするがそれを無理やり押し込んで刀身に沿うように展開する。
それから一振り。今度は技も欠片もなく、ただ単に導魔を振り下ろす。
攻之術理 三日月
魔力を纏った導魔は途中で魔力の一部を切り離し、残りが魔刃となって飛ばされる。これも魔力視のスキルが無ければ認識することは出来ない魔力の塊。
それはロードが使う無属性の斬撃を飛ばすボイドカッターの様に10メートルほど先にある樹にぶつかる。しかし、先ほどは容易く樹を切り裂いた魔刃の攻撃は樹に5センチ程の傷を付けて消失した。
「今度は遠距離攻撃のようだな。だが、威力自体は弱いのか」
「速度は申し分ないね。ただ、魔力自体に属性が無いから威力が弱いんじゃないかな?」
「なるほど。魔力に属性を乗せるか。だが、私には聖のオリジナルスキルのような属性付与が出来るスキルは無いぞ」
「ゼロ殿も属性付与が出来るアーツがありますぞ。例えば、アブソープなんかは闇属性の付与アーツとも言えますしな」
確かにあれは付与と言えば付与だが何かが違う気がする。あれ自体はただ相手のMPを奪うだけだから闇属性とは言い切れないのではないだろうか。
「俺とレオを置き去りにするなと言いたいところだが付与効果だったらエンチャント・カースなんかはどうだ? あれなら闇属性ぽいだろ?」
「確かにそうだね。一番闇ぽいよ。試してみたら?」
聖の提案に頷くようにしてアーツ欄からエンチャント・カースを選択する。それを導魔に纏わせるように意識すると黒色の魔術陣が現れてそこから闇が導魔を覆うように纏わりつく。
確かにこれは闇属性だな。ただ、ここからが問題だ。果たしてこの属性を魔刃に付与できるのだろうか。
導魔にも魔力が行き渡る様に魔力を伸ばして覆う。そして、聖がやってのけたように魔力でエンチャント・カースによって出現した闇を導魔の内側に押さえ込むようにする。
この時、より押さえつける力を強くするためにMPを消費する。属性を押さえ込んでいるからか、それとも他の要因があるのかは分からないがいつもよりMP消費が激しい。
それをMP消費無視で無理やり押さえ込むようにすると遂に完成した。
これを完成と言っていいのか不明だがエンチャント・カースを導魔に閉じ込めることには成功したようだ。普段なら魔刃を形成した後にエンチャント・カースなどを行使するため今回はその逆の手順で行ったことになるが手順が変われば結果が変わると分かったのは大きい進歩だな。
「一応、押さえ込みには成功したようだ」
「俺でもこれは見えるぜ!! すっげぇ黒いけどなんかダサくね!?」
「ダサいかはともかく、闇が凝縮されたように見えるのは確かだな。ただ、これだと俺とレオが見える時点でさっきの有用性は消えたんじゃないか?」
「そうとも言い切れないよ。僕たちは飛ぶ斬撃を見たから結果が分かるのであってこれが飛んで来るとは思わないでしょ?」
「そうですぞ。こういった小技も相手の思考を鈍らせる大切なファクター。できれば自由にその闇の揺らめきを変えることが出来ればより応用範囲が広がりますな」
参考になる意見が多く出ているがそれに聞き耳を立てるのは少し難しい。なにせ、気を抜いたら直ぐに魔力が霧散しそうになるからだ。ただ、折角ここまで進んだので最後の確認はしておこう。ま、結果は見えているがな。
攻之術理 三日月
導魔を一閃。纏わり付いている闇を一緒に巻き込むように意識して振るった魔刃は私の望み通り、エンチャント・カースの効力を巻き込んで真っ黒な魔刃となって飛んでいった。
だが、それは儚くも2メートルも進むことすらできずに消失してしまった。いや、消失というよりかは魔力の供給が無くなったため内側のエンチャント・カースに力負けした結果、魔刃が破壊されてエンチャント・カースだけになってしまったと言った方が良さそうだ。
そして、宿り木を失ったエンチャント・カースは自然消滅した。
「......ダメそうだな。純粋な属性でなければいけないなどの制約があるのかもしれんな」
「僕の場合も単純な属性だからそれが影響している可能性は高そうだね。ゼロの場合は追加効果がある闇属性ってところかな」
「かもしれないないな。魔力自体が付与された魔術を拒絶している感触だったから魔力の属性を工夫する方が良いかもしれないぞ」
「そう言うことでしたら吾輩も挑戦してみるとしましょう。それが正解ならば本来の魔力の色が変わるかもしれませんぞ。それに、色のついた魔力は同色の魔術の効力を高めるなどの効果が期待できるかもしれませんな」
色と言えばこの世界の神話でも出ていた気がするな。あれは確か、教会で聞いた話だったか。これは少し調べてみるのが良いかもしれない。
今回は大きく発展したとは言えないが私一人で取り組むよりは進んだだろう。話して正解だったかもしれない。今もダンジョンの攻略をしながら各々魔力について考えているようだし、今後はより専門的な議論ができるようになりそうだ。




