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AWO〜ゼロと愉快な5人の仲間たち〜  作者: 深山モグラ
第一章 中央大陸編 第一節 中央王国 第四項 迷宮の街
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パーティ攻略 その9

〈戦闘が終了しました〉


「今のは何ですかな?」


 ロードの言葉はこの場にいた全員の気持ちを代弁していた。

 可能性があるとすれば弓術のアーツだろう。だが、私が知る限り今のような効果を発揮するアーツは知らない。

 ただ、弓使いの中ではトップクラスにレベルが高い聖のことだ、まだ知られていないアーツを使ったのかもしれない。

 だが、それはないだろう。何故なら、アーツ使用時に発動するオーラのようなものが見えなかったからだ。それすらもアーツやスキルの効果と言われればそれまでだが流石にそれは違ったようだ。


「今のはオリジナルスキルの効果だよ」


 聖の発言に私はパーティ画面を開いた。私と同じ事を思ったのは一刀と不知火も同じだったようだ。だが、その可能性は潰えた。

 まさかと思って聖の種族レベルを見たが50になっていなかったからだ。先ほどの効果を見せられた後にオリジナルスキルと言われたら二つ目のオリジナルスキルを疑うのは当たり前だろう。

 しかし、違うと言うことは聖のアビリティボウのことだろう。そこでふと思った。そんな効果だったか、と。


「オリジナルスキルだと言うのは分かったがお前のやつはそんな効果ではなかったような。前に見た時はただの放電する矢だった気がするが?」


 そうなのだ。一刀が言った通り聖が何時も放っていた雷の矢と言えばアーマーボア戦でも活躍した放電を撒き散らす矢のはずだ。それなのに何故、こうも効果が違うのだろうか。


「そうなんだよね。僕が普段使えるのは属性付与・雷......こんな感じに鏃に雷を付与することで放電する矢を作ることしかできないんだ」


 聖がオリジナルスキルを発動させて目の前で実践してくれる。その矢こそ私たちが普段見ているオリジナルスキルの効果だった。


「だけど......こんな感じに魔力って言うのかな? それをこの属性付与した矢を覆うように展開させると」


 突如、鏃だけが放電していた矢が全体に放電が起こり、さらに放電はまるで見えない力によって抑え込まれているかのように青っぽくも見える黄色の輝きを放つ矢になった。

 それは先ほど放たれた矢、そのままだった。


「ね? こういうこと」

「どういうことだよ。もっと詳しく説明してくれ」

「え、そう言われてもこれが全てだよ」

「そりゃあ、ないだろ。魔力が作用してるってことは分かるが俺にはそれ以上のことが分からねえよ。ロード、お前は何か分かるか?」

「ふむ、吾輩の考えだと魔力とは意外と万能な力だと言うことですかな。吾輩も魔術に少し独自の効果を混ぜているのですよ。例えば魔術陣から岩の柱を生み出すサンドピーラーですが、通常だと魔術陣を地面に設置して上方向に柱を生み出すのがアーツの効果ですな? しかし、MPの消費量が増えることになりますが、魔術陣を空中に出現させて地面に向けて柱を落とすことが出来るようになるのですぞ」

「つまり、なんだ? MPを余分に消費すれば魔術とは自由度が高いと言うことか? ついでにオリジナルスキルでも効果対象になると」


 歩きながらだが議論が始まったようだ。

 情報屋として一刀は今の現象を解明したいのだろう。私も参加したいところだが自分なりに考えてみるか。と言うよりも先ほどの現象には心当たりがある。

 だが、私の場合は属性など欠片も存在しないので私の考えが正しいのかは分からない。しかし、ロードの考えは的を得ていると思う。MPを消費することでアーツではない技と呼べるものを発動できる。さらに言えばMPを消費しなくても私の場合は技と呼べるものが使うことが出来る。


 少し考えるか。このことを秘匿することと全員に共有して原理の解明を進める。果たしてどちらの方が利益があるだろうか。

 まずは情報を秘匿する場合、利に繋がるのはイベントで初見の行動が出来ると言うこと。しかし、この場合は客観的な視点での判断ができない。

 逆に情報の共有をする場合はやはり情報の信用性が高まるだろう。デメリットは一刀たちが私の切り札を知ってしまうことだ。


 聖の技を見て私の技を連想するのは無理があると思うので秘密にする方が賢明か? それに宗教国に着けば師匠から何か教えて貰えるかもしれない事を考慮してもやはり秘匿一択か。

 しかしだ、よくよく考えればレベルがカンストした私が成長するのは技術面しか残っていないではないか。レベル上限が解放するであろうアップデートまでは約1週間ほどだがその間成長が見込めないと言うのは致命的ではないか。


「どうした、ゼロ?」


 一言も喋らなかった私を不審に思ったのだろう。不知火が問いかけてくる。

 これ以上沈黙を通すのは良くないな。それに私の答えは決まった。


「少し考え事をな。それより、少し見て欲しいものがある」


 腰に差していた導魔を抜き取り中段で構える。それから導魔を覆うように魔力を伸ばす。

 聖が矢にやっていたように導魔に対して魔力を展開して覆うのだ。すると、魔力による刃、魔刃が出来上がる。


 攻之術理 虚刀


 双心流の技の一つと言えば世界中の剣術家が挙って一目見たいと言うだろう。ただ、これは私がこの世界で編み出した技なので歴史も重みも存在しない。

 しかし、この世界特有の魔力を使用しているのだから新しい体系として取り入れるのはやぶさかではないだろう。兄ならば使える物はなんでも使えと言うだろうしな。


「それは木刀か?」

「ああ、アルに作ってもらった武器だ。そしてこの武器の効果はMPを消費することで刀身に魔力を込めることが出来るというものだ。一刀、魔力視を持っているだろ? それでこの木刀を見てみろ」

「確かに、魔力がその剣を覆っているな。それにしても綺麗な刀身だ。まるで刀みたいだ」

「そうだろ? ちなみにこれはMPを消費していない。つまり魔力を動かすことでMP消費した時と同じ効果を生み出すことが出来る。さらにはーーー」


 中段から上段へ。そして、導魔を振り下ろす。

 それは空を切った。本来の刀身がある箇所だけを見るのならば。


 振り下ろした導魔に紙を切るような感覚が伝わり、それより2メートル先にあった樹が斜めに切り裂かれる。


「......どういうことだ?」

「おい、今のは何だ? 何があったんだ? 一刀、何を見た?」

「すげぇな!! ゼロ、俺にも教えてくれよ!!」

「僕がやったことが霞んで見えるよ。今のは何さ」

「これはこれは。また恐ろしい技ですな。見えない斬撃と言ったところでしょうか。範囲は3メートルほどだとしても使いようによっては初見殺し、いや、魔力視が無ければ対策すら取ることもできずに死ぬでしょうな」


 導魔を振り下ろした体勢から元に戻り、切り倒された樹を見る。

 幅50センチ以上、高さは10メートルを超えるであろう樹も容易く切り落とした。自分の事を褒めるのも何か変だがこれだけの事をやってのけるのには剣術の腕がそれなりに必要になる。

 しかし、それを加味しても木刀で樹を切り裂くことが出来たのは魔刃のおかげだろう。


「いや、なるほど。魔力で作った刃を伸ばしたと。それで樹を切り倒したのか? この際ゼロの腕前は考慮しないとしても十分に脅威となり得る、か」

「それに魔力の強度、と言っていいのか分かりませんがそれも考慮しなければなりませんな。使い方によっては魔力障壁のような物も使えるようになるかもしれませんぞ」

「それはどうだろう。今のは魔力媒体としてあの木刀を使っているみたいだから何らかの媒体が無いと魔力障壁なるものは出来ないと思うよ。もしそれが出来るとしたら不知火が手に入れた魔鎧みたいなスキルが必要じゃないかな?」

「で、俺でも使えるのか!!」

「レオ、今のあいつらに何を言っても無駄だろ。街に戻ったらとりあえず魔力視のスキルの書を購入するか。あれを使われたら対処できないかもしれないしな。イベント前に知れてよかったぜ」

「すまないがこれも見てくれるか?」


 キャンプファイヤーに油を注いだかのように議論が白熱し始めたがあと一つだけ見せたいものがある。それを見てから議論をしてほしい所だ。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 聖のオリジナルスキルについて話し合っている場面でのロードの発言の中に「例えば魔術陣から岩の柱を生み出すサンドピーラーですが」とありますが、柱(pillar)の英語発音としては「ピラァ」…
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