パーティ攻略 その8
そろそろ、あいつらも集まって来る頃だろう。昨日はログアウトした後は直ぐに寝てしまったのでいつも通りの時間に起きることが出来た。なので、少し体を動かしてから朝食を食べてAWOにログインしたのだ。
いつもは朝食を食べていない事を考えれば呆れるほど健康的な朝を過ごしたわけだが、これも私がいる場所がボスエリアだと言うのが関係している。と言うのも残念ながらこのエリアでは魔物がポップしないのだ。
逆にポップされても困るのだが、そのおかげで早くログインしても暇を弄ぶだけになるのでゆっくりと朝を過ごした。だが、後10分もしないで8時になる。
「おはよ~」
噂をすればなんとやらだ。聖がログインしてきた。
「あれ、まだゼロしか来てないのか。一刀は先に来てると思ったんだけどね」
「もうじき来ると思うけどな」
「だね。僕は昨日のアイテムを確認してるよ。何かあったら呼んで」
戦利品の確認か。流石に不知火みたいにスキルの書がドロップしてるとは思えないが魔縮片がドロップしていたら売ってもらえないだろうか。後で聖に聞いてみるとしよう。
「そんじゃあ、集まったし進もうぜ!!」
レオの声がボス部屋に響き渡たる。朝から元気なやつだ。
あれから10分。全員が時間通りに集合したのでダンジョン攻略を再開することになった。いつもの魔法陣の上に乗ると一瞬で視界が切り替わって森の中に跳ばされる。
41階層は変わらず森の中だ。多分この景色は当分変わらないだろうな、と思いながら不知火が先頭になって森の中を進む。
ちなみに、魔縮片は誰もドロップしていなかった。あれも大分レア度の高いアイテムなので案外私も運がいいのかもしれない。ただ、微妙な運の強さというのがいただけないな。
「リアクティブスネーク戦まで出来るだけ戦闘を挟まない方が良いんだよな」
「そうだ。ここでレベリングするには効率が悪いから60階層以降でやりたいな。一刀たちのレベル的にもここだと手ごたえがないだろ?」
「確かにつまんねぇよな!! そうだ!! 転移石で50階まで跳ぼうぜ!!」
「流石にそれはもったいないよ。せめて50階層から使った方が良くない?」
聖の言う通りだ。ここで転移石を使えば簡単に50階層まで行くことが出来るが40階層台で使うのは気が引ける。
なにせここいらの魔物は何度も言っている通り簡単に倒せてしまうのだ。楽に魔物を倒せるうちは転移石を使って先に進むよりも最終的に時間的効率が上がるだろう。よって転移石を使うタイミングは50階層台になる。
「マジかよ。良い案だと思ったんだがな!!」
「お前ら置いてくぞ」
不知火を追いかけてレオが先頭に走って行った。私も臨戦態勢だけは整えておくか。それと感知系のスキルも全開で発動させておかなければ。
一刀の方がスキル量では上だがスキルレベルだったら私の方が上なので効果範囲は広い方が良いだろうしな。
「ところでロード。2つ目のオリジナルスキルはどんなスキルにするんだ?」
「突然どうされたのですかな? もしかして魔の森の事を根に持っているのですかな?」
「チッ。ガードは硬いようだな」
「いや、流石に今のは引っかからないでしょ。それより僕にバフを掛けてくれないかな。少し試したいことがあるからさ」
「ん? いいがどのバフだ?」
「STRとINTかな。必要だったらまた言うよ。それとできれば白黒は発動しないで貰えると助かるかも」
聖が何かやるようだ。言われた通りのバフを掛けると聖は矢を番えてまま歩き出した。魔物が出てくるのを待っているのだろう。今回も私はやることが無いと思われるので聖の行動でも観察しておくか。
お、ちょうど魔物の気配がしたな。本当だったら迂回しながら進むのだがそれだと聖が可哀そうなので少しくらいは魔物と戦闘を挟むか。
「一刀、左手30に敵発見」
「了解だ。......敵はボアだな。不知火、右にずれて行進だ」
「いや、接敵しよう」
「いいのか?」
「聖が何かしようとしているからな。それに羅針盤は左側を示しているだろ? 初期区域だったらごり押した方が速い」
私がそういえば了解とばかりに一刀たちがラッシュボアに近づく形で進みだす。聖は助かるよと私に言うと弦を最大眼で張って狙いを定めている。私の行動は間違ってはいなかったようだ。これで全く見当違いの事をしていたら笑い物だな。
「来たぞ。ヘイトは貰っておいた方が良いか?」
「問題ないよ。そのまま進んで」
不知火の目にもラッシュボアが接近しているのが見えたようでヘイト買いを申し込んできたが聖が断るとそのまま進み始めた。
ラッシュボアも私たちを見つけたようで地面を抉る様に踏みしめると突進を始めた。不知火は一応盾を構えて防御の姿勢を取っているが万が一はないだろう。もちろん、この階層にいるラッシュボアは40レベル帯なので構えもせずに喰らえばそれなりにHPは削れるだろうが。
ラッシュボアとの距離が加速的に縮まり、衝突まで残り5メートルを切る。不知火が衝撃に備えるように盾で体を隠すように構えた。
それからほんの僅かな時間が経過して雷が走った。
落雷の様な雷鳴は聞こえなかったが稲妻がラッシュボア目掛けて放たれ、その脳天を貫き、それでも稲妻の勢いは衰えることなくラッシュボアの後ろにあった樹を数本ほど貫通させてその姿をくらませた。




