パーティ VS アーマーボア その1
〈ボスエリアに侵入しました。戦闘を開始します〉
「ファーストアタックは貰ったぜ!! ハイスラッシュ!!」
「レオ、お前はタゲには気をつけろよ」
「スラッシュ......バックステップ。レオの管理は任せてくれ」
転移が完了し、アナウンスが流れて早々にレオがアーマーボアに向かって走り出し先制攻撃を与える。それを受けて首を振って牙による反撃をしようとしたアーマーボアを不知火がアーツを使いながら間に入ることで防いだ。
今の攻撃で不知火のHPが少し削れてしまったがそこは私がカバーするので問題ないとして、一刀が横からアーマーボアに攻撃すればヤツは前足で攻撃を返すがそれを読んでいた一刀が体術のアーツを使って回避する。そこに聖とロードの攻撃が飛来してアーマーボアのHPを確実に削っている。
ここまでは順調だったが開戦から僅か1分ほど。遂にアーマーボアが不知火を吹き飛ばした。ヤツの巨大な体格を用いた体当たりを受けた不知火は踏み止まることが出来ず、アーマーボアがその場から逃げ出すことを許してしまった。アーマーボアが動くことなくその場で倒せればベストだったがそんなに上手くいくことは無いか。
「ここからは不知火がヤツの攻撃を防いだら全方位から攻撃だ。聖たちはタゲが移らないように気をつけろよ」
「当たり前だよ。あいつの突進を喰らったら一撃で死にそうだしね」
「もし危なくなったらゼロ殿が助けてくれるでしょうしそこまで心配しなくても良いと思いますぞ」
「おい、ロード。私を都合のいい道具のように扱うな。手が滑ってロードだけ救出できないかもしれんぞ?」
またもや私を盾にしようと画策を始めたロードに釘を打ってからアーマーボアの突撃を受けようとしている不知火にリジェネーションを掛ける。今回もレオからヤバくなるまで〈白黒〉を使うなと言われているので手持無沙汰になりながらも不知火たちのサポートに回る予定だ。
速さを求めるなら〈白黒〉を使った方が良いのは百も承知だが、強敵と戦うのに圧倒出来てしまったら面白くないという気持ちも理解できるので神官としての行動以外は出来るだけしないように心掛けている。
「正面から受け止めてやるよ」
不知火が何かアーツを使ったようでアーツ発動に伴うエフェクトが生じる。それから間もなくしてエリアの端から全力疾走を始め運動エネルギーを蓄えたアーマーボアが不知火目掛け衝突した。
不知火が持つ巨大な盾とヤツの牙がぶつかり合い轟音を響かせる。そして、不知火をその轟音と一緒に吹き飛ばしてしまった。流石はフロアボスと言ったところか。今の攻撃で不知火のHPが4割も削れている。私のバフと盾術のアーツによるバフ、さらに元から高いVITをもってしても約半分もHPを削っているのだ。聖たちが受けたら即死だな。
まあ、その時は今まで使えていなかったリザレクトを使うことが出来るが、どうせこのアーツも確率が絡んでくるだろう。無条件で対象を復活させるアーツはどう考えても強すぎる。それにこのアーツを使えばデスペナルティが付かないで復活できるとしたらゾンビ戦法が使えるわけだ。だが、乱数の神に見放された私が使えば結果はお察しだ。
そんなことより、今は不知火のサポートだった。とりあえず、追撃しようとアーマーボアが走り出したので不知火に攻撃が行かないように準備しておいたホーリープリズンを行使する。
不知火を起点に展開されたホーリープリズンは不知火を閉じ込めるかのように光の柱が立ち昇り、そこに加速したアーマーボアが衝突した。私がホーリープリズンを行使していなかったら不知火は死んでいたかもしれない。ヤツがホーリープリズンに衝突してから少し遅れる様にして不知火が光の柱の隙間から逃げ出した。
ホーリープリズンには限界はあるが展開する大きさをある程度決められるのでアーマーボアは通れないが人一人は通れるくらいの間隔ができるように展開した。そのおかげで、アーマーボアの攻撃を防ぎその間に不知火がその場から逃げ出すことが出来たのだ。
まあ、残念なことにいくらカンストしてようと〈白黒〉を使っていない状態で行使したホーリープリズンはアーマーボアの連続攻撃に耐えられず2回目の攻撃と同時に壊れてしまったがな。
「すまん。助かったわ。思ったよりも強いから慣らすまでに後数回ほど必要だな。その間のサポートは」
「分かっている。さっきと同じようにすればいいんだろ?」
ホーリープリズンを破壊したアーマーボアがエリアの端まで走って行くのを横目にハイヒールを不知火に掛けながら言葉を交わす。40階層に跳ぶ前から話し合いで決めていたがどうやら不知火はアーマーボアの攻撃を完全に防ぐことを目標にしている。
正規の攻略法だと盾職がタゲを取っている間にロードのような魔術士が叩くのが一般的なようだがそこは譲れないようだ。レオも自分の攻撃が大してダメージを与えていなかったのを見て不満そうだし、この戦いでは各々が満足する戦いをするまでアーマーボアと戦う事になりそうだ。
そして私はそんな不知火たちが死なないようにHPとMPの管理をし、最終的にはヤツのHP管理もするはめになる。まあ、それはそれで神官としての練習になるので問題はないのだが、長引かないことを祈っておくか。




