パーティ攻略 その7
「4体接敵中。対象はファングウルフ2体とラッシュボア、シルクスパイダーだ」
「了解。俺たちで対処に当たる......ハイヘイトアップ」
聖のオリジナルスキルと一刀の連撃により無事、魔物を倒すことが出来たが続いて新しい魔物が出現したので不知火たちに伝えれば、そいつらを討伐するため不知火がハイヘイトアップを使用した。それを受けて一刀に向かっていた魔物は強制的に進行方向を変えられて不知火に向かって行く。
「エクスペンショントリプル......エクセスヒール。ロード、そろそろ止めを入れていいぞ」
「では派手に雷属性で行きましょう。このままではレオ殿に当たってしまいますが幸いゼロ殿がいるおかげでフレンドリーファイアを気にしなくても良いですしな」
ロードにレオが相手しているトラップスパイダーの処理を頼みながら書術の新アーツであるエクスペンショントリプルを使って次に行使する魔術を3回発動するようにした後にエクセスヒールを使用する。やはりと言うべきかこのアーツはバフに分類されるようでファングウルフたちは避ける気配も見せず、回復の恩恵を受けようとエクセスヒールをその身に受けた。
だが、このアーツは恐ろしいことに過剰回復分はダメージに変換されるため、まだダメージを受けていなかった魔物たちは一斉にHPを減らした。個体によりHPの減りはまちまちだが感覚としてはヒールの半分程度の回復量だろうか。全体から見れば僅か数パーセントだがダメージを与えている。
流石にヒールを超える回復量は出せなかったものの使い方によっては化けるアーツだ。特にエフェクトがヒールと同じというのが良い。PVPでも混戦状態になれば相手は自軍の援護だと思いエクセスヒールを喰らうだろうからな。
回復量についてもアクセサリーで回復量上昇を付与すれば問題ないだろう。ただ、先制攻撃にしか使えないという条件はあるが元々神官が前線で戦うことはないので序盤に使う分には役に立つだろう。
「【雷鳴よ鎧となりて我が手に集え 雷紋を刻みて放電し神速の連撃を撒き散らせ〈クインティプルマジック・オブ・サンダー〉】」
ロードの詠唱と共に黄色の魔術陣が五つ出現する。そのうち二つはロードに恩恵を与え、残りの三つがトラップスパイダーとレオに猛威を振るった。詠唱が終わると共に行使されたアーツは最初に地面を常時放電する場所に変えて継続ダメージを与え、次に横凪の電撃が放たれ、最後に雷嵐が何十もの雷を落としながらトラップスパイダーを飲み込んでいった。
「広範囲魔術を使うなら先に教えろよ! 分かっていたら先にあいつらに止めを刺していたのに!!」
「それじゃあ、吾輩が魔術を行使する意味がないではないですか。それより一刀殿たちの助太刀に行ってください。今ならラストアタックを決めれるかもしれませんぞ?」
どうやらレオはサンダートラップが発動した時点でその場から逃げたようだがトラップスパイダーたちは魔術を受けて全滅したみたいだ。サンダーストームが通過した場所には何も残っていなかった。もともとレオがやつらのHPを削っていたが4体同時に処理できるのは効率が良いな。
やつらを倒したロードと言えばレオを一刀たちが相手している魔物に誘導しながらも魔術を使い援護をしている。個人的にはレオの興味を戦闘中の魔物に持って行ったことに拍手を送りたい。最悪の場合、レオが新しい魔物を連れてきかねないからな。まあ、今はラストアタックを取ることに夢中になっているようだが。
ラストアタックを取ったからと言って特に有利になるようなことはないが、確かに魔物を倒した感が強いので良いストレス解消になるだろう。社畜は辛いな。南無。
〈戦闘が終了しました〉
あの後は魔物の追加はなく、そのまま戦闘が終わった。レオはラストアタックを決めれてご満悦のようだ。特に気にしていないようだがレオが最後に倒したシルクスパイダーは大剣で止めを刺されたため完璧に両断されていた。それもすぐに靄となって消えていったが見る人が見れば発狂ものだな。ゲームの仕様上、中身は見えていなかったが。
「急いで中央まで進むぞ。戦闘音で魔物が近づいているかもしれんからな」
「こっちだ!! 先に行ってるぜ!!」
一刀の忠告通りこの場に留まればまた魔物がやってくるだろう。それに時間的にもモブとの戦闘は避けたいところだ。この後はアーマーボアとの戦闘もあるので早く移動するに越したことはない。
羅針盤を使って正確なルートを確立させたレオは我先にと進んで行き、それに続くように不知火たちが並び最後尾に私とロードが付く。それから進むこと数分で休憩エリアに到着した。エリア内の各地に結界石が設置されており、殆どのプレイヤーはログアウトしている。パーティと会話しているプレイヤーは数えるほどしかいない。
「それじゃあ、ボス戦行こうぜ!!」
「ちょっと待ちなよ。少しは作戦を考えておこう」
「レベル的には上回っているが動き方を決めておいた方が良いな。それにアーマーボアとはゼロが一度戦っているから話を聞こう」
一刀が私に目を向けたので頷き、アーマーボアとの戦闘について話しを始めた。




