パーティ攻略 その4
「なるほどね。ただ単にずっと魔物を倒していたわけか。それにしても一日で9レベルも上げるなんて未だに信じられないんだけど」
「そう言われてもこれが事実だから、信じるも何もないんだがな」
「まあ、それも確かに驚くことだがそれよりもレベルキャップが80レベルだったのが予想外だ。てっきり100レベルとかだと思っていたからな」
「吾輩はレベルキャップが80レベルで安心してますぞ。なにせ基本属性魔術を全種習得している身ですので、今の調子で行けばどんどん差が広がるのが目に見えてましたからな」
レベルアップの経緯の説明とついでに今のレベルが最大だと言うことを伝えるとそれぞれ予想通りの反応を返してくれた。ロードはレベルキャップが80で安心しているようだが次のアプデは意外と直ぐなのでそれまでにカンストするプレイヤーは少ないと思うが、それについては気にしていないようだ。
もしかしたらロードも私と同じように廃人プレイでもするのかもしれない。一刀や不知火たちとは違い、ロードならいつでも時間は取れるからな。そんなことをすれば聖も負けじとやり込むのが目に浮かぶがそれはまあ、いいか。
「レベルもすごいがそれより一日で一千万バースを稼いだ方がヤバいだろ。フルパーティならもしかしたらできるかもしれないがソロって言うのがまたなんとも言えんな」
「だな!! 俺も時間が空いたらダンジョンで金稼ぎしたいぜ!!」
「レオには無理だろうな。ゼロも〈白黒〉なしでは今回の金策も成功しなかったわけだし、オリジナルスキルの相性が重要だ。金が欲しいんだったらオリジナルスキルでログボが貰えるようにすればいいんじゃないか? たしか、そんなオリジナルスキルを創ったプレイヤーがいたはずだぞ」
「なにそれ。確かに面白い案だけど効率が悪そうだね」
「そもそも効率なんて求めてねぇだろ。そういうオリジナルスキルを創るのはエンジョイ勢だろうな。元からお前のようなガチ勢と同じ思考回路はしてないぞ」
一刀の言う通り〈白黒〉が無ければこの金策も形になっていなかっただろう。本当にオリジナルスキルは強力だ。あれがあれば戦闘において有利に立てるからな。だが、オリジナルスキルでログインボーナスを貰うと言うのは面白い。制約が重ければその分ログボもレア度が高いアイテムが貰えるのだろうか。
「そろそろ、攻略を始めようよ。ゼロが転移石を買ってくれたけどできるだけ使わないに越したことはないからね」
「転移石を惜しむつもりはないが確かに攻略を始めた方が良いな。50階層台を潜ってきたがあそこから40階層台よりも出現する魔物が多くなるから1階層あたりの攻略にかなり時間を取られることになるぞ」
迷宮の羅針盤をレオに渡しながらそう言えば他のメンバーも攻略の準備を始めた。レオが羅針盤にMPを込めると針が一点を示す。今回はトレインをするつもりはないのでできるだけ魔物に見つからないようにして攻略をするつもりだ。
走って進めば中央までは早いがそれだと魔物も付いてきてしまうので進行速度はゆっくりになってしまう。それでも早歩きくらいの速度は出ているだろうが。
いつも通り全員にAGI上昇のバフを掛けて進んでいるおかげで普通に進むよりは早くなっているが雀の涙よりはましと言ったところだ。今思うと〈白黒〉をフルで発動させた状態で森の中を疾走していたのは恐ろしい光景だな。プレイヤーを巻き込まないように気をつけたつもりだが案外MPKしてそうだ。
「ここら辺は特に問題ないがトレントンなどの植物系の魔物が出現してきたら周囲に気を配っていた方が良いぞ。私と一刀が周囲の状況を把握しているが奇襲される可能性もあるからな」
「了解だ。まあ、俺は最前線だから対処できるが聖とロードは特に注意しとけよ。後衛が狙われるのは常だからな」
「警戒を怠ることはしませんぞ。ただ、ゼロ殿がいるから案外後ろの方が安全な気もしますがな」
「今のレベル差ならここらの魔物が気配を隠していようがスキルで見つけられると思うが油断は禁物だぞ? 危機感知などのスキルは自身に向けられた殺気しか感知しないのだから私以外が標的になっていたら対処できない可能性もある」
軽くロードに警戒してやれば列の一番後ろから私の前に移動してきた。確かに私が最後尾にいれば対処も簡単にできるだろうが現金なやつだ。
「前方からファングウルフとラッシュボアが向かってきているぞ。それぞれ単体だ」
「よっしゃ!! 俺が行くぜ!!」
一刀の忠告通り、前方からファングウルフとラッシュボアが来たが不知火が2体とも抑え、その間にレオと一刀がアーツを連続で叩きこむと直ぐに黒い靄となって消えていった。途中、聖とロードの援護もあったが戦闘時間は一瞬だったのでこの調子なら思っていたよりも速く攻略が完了しそうだ。
「物足りない!!」
「安心しろ。51階層からは5体程の群れで行動するのがデフォになるぞ」
「え、それってかなりハードじゃない?」
「つまり魔術が打ち放題と言うわけですな」
ロードが変なことを口走っているが戦闘時間が長引けば相手の増援もあり得るから、暇はしないはずだ。だが、私としては50階層台ではなく60階層台で一刀たちのレベリングをしたいので体慣らしをした後はできるだけ戦闘をスルーする方針だ。
60階層以降なら一刀たちにとっても格上の相手になるわけだし、効率よくレベルが上がるに違いない。それに70階層のフロアボスと戦うなら最低でも60レベルになっておかなければ勝率が限りなく低いだろう。戦闘中にパーティメンバー全員が死に戻りとか本当に笑えないからな。




