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AWO〜ゼロと愉快な5人の仲間たち〜  作者: 深山モグラ
第一章 中央大陸編 第一節 中央王国 第四項 迷宮の街
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VS ゴブリンキング その3

 剣が振り下ろされた。それも私の身長程ある剣が。風を切り、空気をも斬り裂く音が鳴り、あと数瞬もすれば私が真っ二つにされるだろう一撃。


 歩之術理 死点取


 だが私がそれにあたることはなかった。刀が振り下ろされるより早く重心を右に急激に傾けることにより一瞬にしてゴブリンジェネラルの横を抜ける。後ろの気配を探ればゴブリンジェネラルが大剣でダンジョンの地面を少し削った状態のまま硬直し困惑した感情を抱いている様子が感じ取れた。

 このまま後ろへ振り向き攻撃をすればゴブリンジェネラルに致命傷を負わせることができるかもしれない。しかし、それでは意味がないだろうと思い直し、地面を強く蹴る。


 やつらも私が最初に戦わざるを得ないのはゴブリンジェネラルだと思っていたところだろう。2体のゴブリンジェネラルは未だ唖然と前を向いたまま、ゴブリンキングは驚きに身を固めている。

 やるなら今しかない。これを逃せば警戒され奇襲を仕掛けるチャンスなどなくなってしまうかもしれないから。


 ゴブリンジェネラルとの距離が離れた頃になってやっとあの2体は私が後ろにいることに気が付いたようだがもう遅い。慌ててこちらに向かおうとしているが私はすでにゴブリンキングたちの目前まで迫っていた。

 目の前にいるのはゴブリンキング、ゴブリンクイーン、ゴブリンパラディンの3体。私の一番近くにいるのがゴブリンパラディンでその左斜め後ろにゴブリンクイーン、その向かって右横にゴブリンキングがいる。


 導魔の剣先を後ろに向けながら遠心力が最大になるように構え、視線だけはゴブリンキングから一時も離さずに向ける。その視線を感じ取りゴブリンパラディンの重心がゴブリンキングの方へ向いた、その瞬間、3体とも私の間合いの中に入った。


 後ろに向いていた剣先を天井に向け最上段の構えを取る、右足を前に出し踏み込み、今までの速度を逃すことなく導魔に乗せる。

 ゴブリンジェネラルの一撃にも劣らぬ、否、それを明らかに超える一振りは袈裟斬りでゴブリンクイーン(・・・・・・・・)に向かって放たれた。


 ゴブリンジェネラルを無視し、その後ろを狙った奇襲からの目線も殺気も重心さえもゴブリンキングに向けていた中で標的をゴブリンクイーンに変える二度目の奇襲。

 ゴブリンパラディンにゴブリンキングを攻撃すると意識付けてからの標的変えには流石に対応できないだろう。それに魔刃を纏っている導魔の今の本当の刀身は目視で判別できる長さではないのだ。防ぐことはできないだろうな。


 そう思い重力に引かれるままにゴブリンクイーンに向かって斬りつけた。


 しかし、ガギィン!! と硬質な音がこの階層に木霊(こだま)する。

 見なくても分かる。手に返ってくる感覚がこれは魔物を切った時の感触ではないと告げる。これは金属か何かにぶつかった感触だと。まさか、ゴブリンパラディンが反応してくるとは思わなかった。


 その時、近くから足音と殺気が漏れているのを感じ取り、地面を蹴って左横に大きく回避する。すると、さっきまで私がいた場所にゴブリンジェネラルの剣が振り下ろされていた。

 奇襲は失敗かと思い舌打ちしたくなる気持ちを押さえて導魔を構えなおせば、向こうも私の出方を窺うように剣を構えた。


 互いの殺気で牽制しあいながら今の攻防を思い返す。奇襲は成功していたはずだ。ゴブリンパラディンの意識は完全にゴブリンキングに向かっていたし、私がゴブリンクイーンに視線を向けることすらしていなかったのだから。

 だが、あいつは私の攻撃を防いでいた。それも導魔本来の刀身ではなく虚刀によって追加されていた魔刃をだ。あれだけ的確に私の攻撃を防いだのだからさっきの反応はまぐれではなく確実に私の剣筋が見えていた(・・・・・)と言うことだろう。


 まさかこれほど早く魔刃を看破されるとは思ってもいなかった。これでは虚刀を使った攻撃はゴブリンパラディンには効かないだろうな。それに残念な知らせもある。困ったことに私の一撃を防いだゴブリンパラディンのHPが4割しか削れていなかった。

 それも今、ゴブリンクイーンに手によって回復され全快まで戻っているし、自分の腕が悲しくなる。盾の上からの攻撃だったがもっとHPを削れていると思ったのだが少し自信を無くしそうだ。


 中段に構えていた導魔をゆっくりと下ろし、腰に差す。その様子をゴブリンジェネラルたちは怪訝そうに眺めていたがお構いなしに左手を前に出し何かを握る動作をする。するとタイムラグなしに腰に差していた導魔と硬魔が送還され左手に聖書、その後ろを漂うように魔書が召喚される。


「こうなったら正攻法で攻めるしかないか......エンチャント・グリーンダウン......エンチャント・レッドアップ」


 ゴブリンパラディンが魔力視と同じことができるならさっきと同じ奇襲はもうできないだろうとみて今度は確実に倒すために準備を整える。バフをかけることで継続時間を更新していき、デバフで相手を弱体化させていく。


 私の行動方針が変わったことを瞬時に理解したゴブリンジェネラルたちは武器を持っていない今のうちに私を倒そうと駆けだす。だが片方のゴブリンジェネラルはエンチャント・グリーンダウンによってAGIを下げられているため後れを取っている。

 それを見かねてゴブリンクイーンがバフで相殺しようと魔導を行使しているが一向に元の速さまでも戻ることはなかった。


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