VS ゴブリンキング その2
1体、また1体と死んでいくゴブリンを見ながら次の行動について考える。こいつらゴブリンマギソードやゴブリンナイトたちに関しては問題ない。
ゴブリンキングの強化とゴブリンクイーンによるバフのおかげでいつもより動きが速いがそれでも私の相手ではないからだ。
しかし、こいつらの相手をしているときに放たれる援護射撃はうまいこと狙って放たれているのでよく私の邪魔をしてくれる。やはり、指揮格がいると言うのは面倒なものだ。
数えた限りゴブリンアーチャーとゴブリンウィザードは合計で5体しかいない。そのおかげで強化されていても捌くのに問題はないと言うのが朗報だな。
だが、こいつら以外のゴブリンたちが問題だ。あと数体で配下であるゴブリンナイトたちが全滅すると言うのに動く気配も見せないゴブリンジェネラルが2体とこいつらに時間を割かれている間にせっせと味方にバフをかけていくゴブリンクイーン。
早くゴブリンクイーンを倒してしまいたいがそれを遮るように突っ込んでくるゴブリンマギソードを切り飛ばし、対応を考える。
私としては速いとこゴブリンキングとゴブリンクイーンを倒してしまいたいのだが、今の状況を見る限り難しそうだ。
だとすると、最善手は......ゴブリンウィザードたちを倒すことだな。ゴブリンたちは指揮を執る者がいると連携が上手くなる。特にそれが前衛ではなく後衛のゴブリンたちに顕著に表れる。
このことを考慮すればゴブリンジェネラルと戦っている間にちゃちゃを入れられ、攻撃の手が弱まったところにゴブリンクイーンの魔導によって回復されるところまで見える。
全てを一撃で倒せるなら作戦なんていらないが強化済みのゴブリンジェネラルを一撃で倒せるかは微妙なラインだ。
それにゴブリンジェネラルが2体いるってのもめんどくさい。1体ならごり押しでケリをつけれそうだが2体になると連携してくることが想定される。まあ、連携をしてこないならしてこないで戦闘が楽になるからいいのだが。
だから、こいつらを倒したら次に倒すのはゴブリンアーチャーたちだなと考えながら導魔を振るっていく。
そして最初は8体いたゴブリンナイトたちは今では残り2体までその数を減らし、その2体もたった今、私の攻撃によって力尽きた。
結局ゴブリンジェネラルは動いてこなかった。もしかしたらバカなのかもしれない。ゴブリンナイトたちと一緒に攻撃を仕掛けてきた方が絶対に向こうが有利なはずだが......。
まあいい。動かないなら気にする必要はないってことだ。ゴブリンキングの命令と同時に放たれる攻撃を躱しながら次はゴブリンアーチャーたちに狙いを定め走り出す。
順調に〈白黒〉の効果が発動しているおかげでバフの効果が上昇しており、私とゴブリンアーチャーとの距離をわずか数秒で詰める。
攻之術理 虚刀
そのことに驚いたゴブリンアーチャーたちが急いで攻撃に移ろうとするが導魔を横凪に一閃。見えない刀身が伸びた攻撃は意図もたやすく3体のゴブリンを縮めて両断していく。
さらに踏み込んでもう一閃。さらに後ろにいたゴブリンを切り飛ばす。これでゴブリンアーチャーとゴブリンウィザードは全滅。
後衛職は本当に近づかれると弱い。これは魔物も人も変わらないなと思い、さらに一部例外は除くかと師匠のことを思い出した。
ゴブリンナイトやゴブリンウィザードたち言うならば兵士階級のゴブリンは今ので全て倒したがゴブリンウィザードたちを攻撃しているときでさえゴブリンジェネラルたちは動こうとしなかった。
例えゴブリンウィザードたちが2太刀の下で沈んだにせよ一歩も動こうとしなかったのを鑑みるに今まではただの様子見だったのだろうか。あれらは単に捨て駒でこれからが本番だと言うのだろうか?
それを肯定するかのように最奥でゴブリンキングが私を指さし笑い、その横でゴブリンクイーンが下の者たちに強化の光を振りまいていく。
その王と妃を守るようにしてゴブリンパラディンが大盾を構えて守りの姿勢に入れば2体のゴブリンジェネラルがそれぞれ巨大な大剣を肩に担いで私に獰猛な笑みを向ける。
どうやらやつらは本当にただの捨て駒、もしくは様子見だったようだ。これからが本当のゴブリンキング戦。
しかし、私相手にたかが5体で勝てると思っているのだろうか。これがもっと上の階層ならば苦戦を、いや楽しい戦闘になったのだろうが30階層では期待するだけ無駄か。
それでも私はやつらと戦うために導魔を構え、隙を伺う。
何十秒立っただろうか。もしかしたら数秒しかたっていないかもしれない。静寂と緊張のみが支配するこの空間で1体のゴブリンジェネラルがこの場の空気に耐えられず少し、たった半歩だけ後ずさる。
しかし、これが戦闘開始の合図になる。ゴブリンジェネラルが動いた瞬間を見計らって構えの状態から一気に駆けだす。慌ててゴブリンジェネラルたちも剣を構え、一瞬にして距離を縮めてくる私を叩き潰そうとその身長程ある大剣を振り下ろす。
空気を切り裂く音が頭上から聞こえる中、私はゴブリンジェネラルを......そのさらに奥を見据えていた。




