大地の塔 その12
「ゼロさん、行きますか?」
「ああ、そうしよう」
私もアイテムの確認を終えたので護と一緒に魔法陣の上に乗る。そして気づけば何度も見た洞窟に跳ばされていた。ちなみにゴブリンジェネラルのドロップはお察しの通りだったよ。
「ここもだいぶ広くなりましたよね」
「そうだな。もはや洞窟か? と聞かれてもすぐに返答できるか怪しいレベルではあるな」
ついに21階層に到達したわけだが1階層目に比べると明らかに通路の幅が大きい。大体4車線分はありそうだ。それに戦闘面で見れば戦いやすくなったが探索はめんどくさくなったのは変わらず、逆に出現するゴブリンが多くなったこともあり、通路が広すぎて戦闘中に他の所のゴブリンとリンクすることが多くなった。
「て、来ましたよ! 転移早々すぐに開戦ですか。流石はダンジョンってやつですね」
護の言う通り通路の向こう側からゴブリンたちがわんさかとやってきている。その中にはまだダンジョンの中では出会っていない新種のゴブリンも混ざっている。だが、問題はなさそうだ。どいつも一度は戦ったことがあるゴブリンなので特徴は理解している。
「護、奥にいるゴブリンウィザードと似た風貌のゴブリンはゴブリンシャーマンだ。ヤツはゴブリンプリーストとは逆にデバフを使用してくるが放置でいいぞ。デバフにかかるようであれば私が対応する。ヤツはデバフ要員で攻撃力は皆無に等しいからな。そしてこの中で一番厄介なのがあの先頭を走るゴブリンだ」
そう言って私は一群の先頭を走るゴブリンを指す。そいつは真っ赤に染まったマントに赤鎧を纏い、炎が渦巻く剣を持った今までのゴブリンの中でも異彩を放つ存在であった。
「ゴブリンシャーマンは良いとしてあいつは何なんですか? もしかしてゴブリンの魔法剣士? いや魔物だから魔導剣士とかですかね?」
「ああ、その通りだ。あいつはゴブリンマギソード。個体によって扱う属性は違うが近、中、遠距離とすべてに対応できる万能型だ。ここで出るってことは上の階層でも確実に出るだろうから気をつけておいた方が良いぞ。あいつらが複数体いると処理に時間がかかるからな」
「情報助かります。それにしてもゴブリンも結構種類いるみたいですね。思っていたよりも多彩じゃないですか」
「その通りだ。中にはゴブリンアルケミーとか言う変わり種もいたからな。やつらの種類は私たちのJOBと同じ位多岐にわたるんじゃないか? まあ、それより今はやつらの相手だ。いつも通り前衛は私に任せろ。残りの後衛はゴブリンシャーマンを除き護に任せる。やり方は何でもいいぞ」
そう言うと護は「了解です」と答え召喚獣を次々と変えていく。魔術陣が出現し消滅し、また構築され消滅しを繰り返し、セイクリッドオウルのハイド、セイクリッドウルフのガルク、セイクリッドラビットのハーゼとレプスの4体を召喚した。
「ぱっと見は後衛が6に前衛が6ですかね。ガルクはゼロさんに付けときますか?」
「いや前衛は全て私に任せてもらって構わない。ゴブリンの上位種と言えど今はダンジョンのおかげでやつらのレベルに制限がかかっているからあの時みたいに苦戦はしないだろう。それに護は明日、用事があるのだろ? 速攻で片づけて21層の中央まで行くぞ」
「了解です。それじゃあ、前衛は任せました。ハーゼとレプスはゴブリンウィザードの錯乱、ハイドはゴブリンプリーストの妨害だ。ガルクは遊撃に回れ。ゴブリンシャーマンは無視で構わないから一度たりとも魔導を使わせないように」
まずはめんどくさいゴブリンマギソードからだ。ヤツも先に殺されたいのか先頭を走っていので望み通り最初に冥府にでも送ってやるとしよう。本当にこの世界に冥府があるかは知らんがな。
攻之術理 虚刀
ゴブリンマギソードたちに向けて走り出し、すれ違いざまに首に対して手刀を放つ。通常なら首にを通る無数の神経を圧迫させることにより相手を気絶させるものなのだがこいつらに神経があるか疑問だ。一応痛みは感じているようだから神経らしきものはあるようだが。
今はそんなことを考えている場合ではなかった。ゴブリンマギソードの剣による攻撃を避けたあとすれ違いざまに放った手刀はさっき確立した魔力で刃を創る方法で手刀の形に添って魔力の刃、魔刃を形成した一撃だ。
ゴブリンマギソードは言うならばゴブリンナイトの上位互換だが、どんなに多く見積もってもゴブリンジェネラルには届かない。
手刀を受けたゴブリンマギソードは頭と胴体が分かれその場に倒れる。ゴブリンジェネラルでも実証済みなのでヤツが死んだかの確認など行わず目の前にいる5体のゴブリンナイトに迫る。
攻之術理 震撃
剣を振りかざされる前に一撃。体内で衝撃の破裂を引き起こす震撃を放ち1体目のゴブリンナイトに殺す。次手に移ろうとしたとき、挟み撃ちするように両サイドから袈裟斬りするゴブリンナイトたちを感知し、一歩下がることで回避する。
回避後すぐに近づき、左のゴブリンナイトを殴り飛ばし、その反動で右のゴブリンナイトに対して回転斬りを行う。もちろん殴った方は震撃を使っているし、蹴った方には足を刀とみなして魔刃を形成した。おかげで片方は首が爆ぜたトマトのようになりもう片方は無惨にも斜めに斬り殺されている。
残りは2体。気配を探れば後数歩で私の間合いに入る。斬るなら今か。腰に差された導魔を手を添え間合いに入った瞬間......一閃。ゴブリンナイトたちが知覚できない速度で振りぬかれたそれは全てに平等に死を運ぶがごとくゴブリンナイト2体に命の終わりを告げるのだった。
「ゼロさん、流石に速すぎですって!! まだ1分も経ってないでしょ。はぁ、よかったら俺の所も手伝ってください」
少し張り切りすぎたようだ。まあ、護も速く上がりたいだろうし速い分には越したことがないだろう。




