大地の塔 その11
飛来する紫電を避けることができなかったゴブリンウィザードはまた麻痺の状態異常に陥り行動を停止する。そしてこのアーツを最後にクロウの爪による攻撃で尽き果てる。そしてスタンにより気絶の状態異常になっていたゴブリンウィザードもアンブの攻撃により沈んでいく。
今の感じからしてゴブリンウィザードはバフなしの状態でクロウたちが単体で10秒以内に倒せるHPであるようだ。そうなれば効果時間が5秒ほどのパラライズよりもそれよりも長く気絶状態を維持できるスタンの方が有効ということか。
護に目配せをしハイドをゴブリンプリーストに向けるように伝える。それと同時にエクスペンションダブルを発動しスタンを行使する。すると魔術陣から飛び出した電撃は途中で二つに分裂しそれぞれゴブリンウィザードに当たり、もちろんゴブリンウィザードはレジストすることができていないので気絶の状態異常が付与されていく。
このアーツならパラライズよりも効果時間が長いので気絶状態が解除される頃にはやつらのHPも削り切れていることだろう。
そうなれば残りはゴブリンプリーストだけになるのだがどうやらハイドが加わったことで戦線は一気にハイド側に傾き私が出る幕もなくゴブリンプリーストは力尽きていた。
〈戦闘が終了しました〉
〈書術ⅡのLVが上昇しました〉
〈書術Ⅱの新しいアーツを習得しました〉
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〈書術Ⅱ〉
LV5・・メディテイション上昇
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メディテイション上昇・・メディテイションの効果上昇
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〈書術Ⅱ〉になってから初めての新アーツ習得かと思いきやまさかの〈書術〉で最初に習得したメディテイションの効果を上昇させるだけか。確かに戦闘中には使わないが戦闘後にはMP回復のため頻繁に使っているのでありがたいにはありがたいのだがなんかこう、思っていたのと違うと言うか。
とにかく新アーツを期待していただけに今回のレベルアップ内容は心から喜べるものではない。それにここの運営のことだ、どうせ次のレベルアップでも元のアーツを強化させるだけだろう。
これで次からは書術の新しいアーツに期待することはなくなったな。ま、文句を言っても仕方がないから気楽に書術のレベルを上げながらダンジョン探索の続きをするか。
「順調ですね。でもこの先も連戦は避けれそうにありませんよ。ダンジョンだからなのか俺には分かりませんがゴブリンがこれだけいると休憩の暇もないじゃないですか」
「そうか？ 私は一度魔の森でゴブリンの集団と戦闘しているが本当のゴブリンの群れはこんなものじゃないぞ。あれは本当にひどかった。特に後半戦などはゴブリンの上位種だろう魔物が山のように流れ出てくるは、近接戦では敵わないと分かれば飛び道具で弾幕を仕掛けてくるわで本当にしんどかったな」
「ゼロさんがそこまで言うなんて相当ですよね。そんなに数が多かったんですか？」
「ああ、そうだな。魔の森には12時間以上籠っていたがそのうち4時間はぶっ通しでゴブリンと戦っていたと思うぞ。私としてはウッドアニマルと言う魔物を狙って狩っていたつもりなのだがたまに出てくるゴブリンが鬱陶しくて手を出したらそこからはどんどんリンクするわで戦闘をやめられなくなってしまったんだ」
今思い出すだけでもゾッとするな。私も最初は所詮ゴブリンだからいくらかかってこようと問題ないと思っていたのだがそんなものは戦闘から1時間過ぎた時点で傲慢だと気づかされた。やつらの脅威は数ではなかったんだよ。
これは私の思い込みだがゴブリンなどはいかにも低能そうな見た目をしているし規律などなしに攻撃してくると思っていたのだ。だが、そんなのは所詮住民でも勝てるただのゴブリンだけにしか当てはまらない。
奴らは上位種になればなるほど狡猾に行動するし何より連携を意識してくるのだ。それに単体としての強さも上がってくるのだから手に負えない。ダンジョンは階層により出現する魔物のレベルが決まっているようだが外の世界ではそんな法則が当てはまるわけでもないし、魔の森と言う周囲に比べて格段に魔素濃度が濃いとこで生活してきたゴブリンは上位種になればLV40以上は当たり前であった。
それに最後に戦った集落のボスらしきゴブリンとその取り巻きのゴブリンのレベルなどは特にヤバかったな。
何とかゴブリンたちを全滅させるという形で勝利を掴むことができたが正直言って〈白黒〉が無ければヤバかった。いや、〈万象夢幻〉が無ければ確実に負けていたと言っても過言ではない。あんな連中は一人で戦うようなものではない。
私とてゴーレムたちで百人組み手などと言って一対多での戦闘を行ってきたが個々で動くゴーレムたちに比べれば上位者による命令によって動くゴブリンの群れとの戦闘は激戦を極めた。
そのおかげでここまでレベルが上がったし、特に強力なゴブリンも知ることができたのだから悪いことばかりではなかったがな。精々あそこで身に着けた知識をこのダンジョンでも発揮させてもらうとするか。
