大地の塔 その10
「アブソープを発動してっと。私も前に出るか」
クロウたちが相手しているゴブリン目掛け駆けだしながら闇魔術を発動させる。すると触れた者のMPを奪う闇が身体に纏わりつく。
残念ながら書術の使い過ぎにより私のMPもだいぶ削れてしまっている。オリジナルスキルでMPに制限をかけたことがかなり響いているな。
ゴブリンに近づき首を捉えて地面に叩きつける。そして足で踏みつけその場に縫い付ける。ゴブリンには悪いがアブソープは相手に触れている間しか効果を発揮しないので瞬殺をしてやることはできないのだ。
わずかながらにも徐々にMPが回復しているのを感じながら次の相手を見定める。戦況としてはこちらの方が有利に働いている。残りの相手は前衛のゴブリンナイトたちが5体、後衛のゴブリンウィザードやゴブリンプリーストたちが4体だ。
未だゴブリンプリーストが2体同時に出てきたことはないがゴブリンウィザードが現状3体同時に出現していることを考えればそろそろ2体以上で出現してもおかしくはないだろう。
今はゴブリンプリーストをハイドが空中からの奇襲で抑え、ゴブリンウィザード3体をセイクリッドラビットのハーゼが立体軌道で移動しながら魔導による攻撃を躱して反撃と、確実にヘイトを稼いでいる。
そのおかげもありゴブリンナイトたちは後衛からの支援を受けることができず、2体のウルフの猛攻を防ぐことしかできていない。後衛のヘイトを稼いでもらえるのは助かるな。特にハーゼは3体のゴブリンウィザードを相手取っているのに未だ疲労は見られず逆にゴブリンウィザードのHPを少しずつ減らしている。
さてと、観察はこの辺にして私も戦線復帰と行きますか。アブソープのおかげで書術のアーツを数回使えるくらいには回復している。だが、全快には程遠いのでもう少しMPを回復させてもらうとしよう。
ゴブリンナイトは4体でクロウとアンブの足止めをしているが、あちらもクロウたちが押しており私が出る幕はなさそうだ。しかし、手持無沙汰になるのはごめんなので私も乱入することにする。
クロウたちに意識が向いているゴブリンナイトに気づかれないように近づき背後から銀樹刀による突きを放つ。鎧と言う装甲を纏っているのにも関わらずまるで紙を破るかのように貫通した一撃はゴブリンナイトの命を刈り取りその身を地べたに堕とす。
奇襲は成功。さらに隣にいたゴブリンナイトに対して足払いをかけ転ばせる。すぐにゴブリンナイトは態勢を立て直そうとするが銀樹刀で足を切断。
切断面からは黒い靄が溢れ、黒の液体が滴るがこれで立つことはできなくなったことだろう。残りのゴブリンナイトに目を向ければクロウたちとの2体2の状況になったためセイクリッドウルフ2体の連携に耐えられず押されている。これなら私が手を貸すまでもなくもうすぐあのゴブリンナイトたちも力尽きることだろう。
その間に私はこのゴブリンナイトからMPを吸収させてもらうとしますか。再度アブソープを唱え闇を纏う。MP回復手段としてはこのアブソープは優秀だがレベルも上がった今となっては回復量が少ないと感じてしまう。
MP回復ポーションも予備で持っているのだがあれは使いすぎるとデバフが入ってしまうので多用できないしこのMP問題も解決していきたいところだ。
ゴブリンナイトを踏みつけ動けなくするとともにMPを吸収していく。ちょうどクロウたちがゴブリンナイトを倒すのと同時に私にかかっているアブソープの効果も切れたので踏みつけていたゴブリンナイトにとどめを刺す。
「護、前衛のゴブリンは片付いたぞ」
「そうみたいですね。このまま奥のゴブリンまで倒してしまいましょう」
残りはゴブリンウィザードたち4体なので攻撃は召喚獣に任せて私は後方支援に徹する。クロウたちはゴブリンナイトを倒した瞬間からゴブリンウィザードたちの方に向かって駆けており、すでに戦闘が始まっている。毎度の如く後衛は接近されると応戦がままならないようでゴブリンウィザードたちのHPバーの減りが早い。
「パラライズ......スタン」
メタモルフォーゼで武器を聖書に変換するとともにパラライズとスタンを行使する。空中に出現した魔術陣からは一条の紫電が飛び出しゴブリンウィザードの1体に当たり麻痺により行動不能にする。さらに時間差でもう一つの魔術陣から電撃が飛び出し、ゴブリンウィザードに触れることで放電し気絶状態にする。
するとすかさずクロウたちが状態異常にかかったゴブリンウィザードに飛び掛かかる。残りのゴブリンウィザードたちも反撃を開始しようとするが、今度はハイドが上空から奇襲を仕掛け魔導の発動を阻止する。
その少し後ろではハーゼがゴブリンプリーストを相手しておりそちらも向こうの手出しを許さぬ状況まで追いつめている。
それから数秒してクロウたちの攻撃を無防備に受けるゴブリンウィザードたちのHPが残り3割を切ったとき時間経過によりパラライズの状態異常が切れる。しかし、それを見計らって待機させておいたパラライズをもう一度発動させる。




