VS ゴブリンリーダー
〈ボスエリアに侵入しました。戦闘を開始します〉
光が収まった後に転移特有の浮遊感がなくなり、戦闘開始のアナウンスが鳴り響く。すぐに戦闘態勢を取り、周囲を見渡すと前方に周りに10体のゴブリンを引き連れた少し背丈の高いゴブリンがいた。
そして背丈の高いゴブリン、いや、ゴブリンリーダーが右手を私たちに向け、くぐもった声で何かを叫ぶ。すると前にいたゴブリンが3体、こん棒や剣を振り回しながら駆け寄ってくる。
「ゼロさん、ゴブリンは任せてください! クロウ、ガルク、アンブはゴブリンの処理をしろ。ハイドは俺とだ。〈コネクティングセンス〉発動」
護の号令によりウルフたちが向かってくるゴブリンに駆け出し互いに攻防を始める。それをしり目に私もウルフたちにバフをかけてからゴブリンリーダーに向かい走り出す。
走り出してすぐにゴブリンリーダーの後ろに控えていたゴブリンアーチャーとゴブリンウィザードの攻撃が飛んでくるが危なげなく躱してさらに接近する。
近づきながらもバフとデバフを発動させ〈白黒〉の効果を高めていく。それのおかげもありウルフたちのパラメータも上昇していきゴブリンに与えるダメージが増えているが未だに倒せていない。
それもそのはずゴブリンアーチャーのさらに奥で一人こそこそとヒールを唱えているゴブリンがいるからだ。そして、そいつを鑑定で覗けばゴブリンプリーストと表示された。
今までの戦闘では一度も出てきていない新種だ。このままではウルフたちがゴブリンを倒すのが遅くなると思い、標的をゴブリンリーダーからゴブリンプリーストに変えようかと思った瞬間、私の後方からハイドが飛んできてゴブリンプリーストに攻撃を加える。
魔導の行使を妨害され発動しようとしていたヒールが最初からになる。
ゴブリンリーダーはハイドのことが厄介だと思ったらしく私に攻撃を仕掛けてきていたゴブリンアーチャーとゴブリンウィザードにハイドを倒すように指示を出す。
しかし、ハイドは器用に飛んでくる矢や水の玉を避け、的確に再度、詠唱を開始していたゴブリンプリーストを攻撃し、詠唱キャンセルを起こす。
「これなら私はこのままゴブリンリーダーを相手にしても問題なさそうだな」
後方の遠距離隊はハイドにより妨害され、前方からは私が迫っており、焦りだしたゴブリンリーダーは近くにいたゴブリンナイト2体に何か指示を出す。
指示を受けたゴブリンナイトは剣を片手に私を迎え撃つように構える。考えるまでもなく指示の内容は私の妨害か始末だろう。だが、ゴブリンナイトに止められるほど私は弱くないのだ。
さらに加速し、左手のゴブリンナイトに近づき上段からの袈裟斬りをする。運よく片手剣を構えていたこともあり刀と剣がぶつかり鬩ぎ合うが抵抗もわずか数瞬。私の力に押され壁まで浮き飛ばされる。
その後の結果も見ずに導魔を逆手に持ち、脇の間を通すように後ろに刺す。すると肉を抉る感覚と共に地面に落ちた剣が音を鳴らす。
突き刺した刀を抜き、後ろを一瞥すれば綺麗に喉に穴が開いて息絶えたゴブリンナイトがいた。左のゴブリンナイトを処理した時に右にいたゴブリンナイトが動き出そうとしていたのを感知したので先手を打たせてもらったが一寸の狂いもなく突きが成功している。
今の技の精度を自画自賛したいところだが形容しがたい声を上げ始めたゴブリンリーダーに目を向ける。
これでこいつを守る配下はいなくなったのでさっさとケリをつけよう。その場を蹴り、一瞬でゴブリンリーダーに近づく。ヤツは目を見開いて硬直し、私を止めることができずーーー
攻之術理 昇龍
全身の力を込めた下段からの切り上げをもろに受け宙に浮く。
攻之術理 降龍
そして昇る龍あれば降る龍ありとでも言おうか。上段より高く振り上げられた導魔をゴブリンリーダーに向け、踏み込みと同時に全力で振り下ろす。
宙に身を投げだされ、避ける手段も守る手段も持たぬ哀れなゴブリンリーダーは鋼鉄すらも斬り裂く一撃に為すすべもなく、脳天からその身に受け、大量の黒い液体をまき散らしながら見事に両断される。
導魔を振るい、刀身についた液体を振り落とす。ゴブリンリーダーに追加のゴブリンを召喚されていないので結果としては悪くないだろう。残るはハイドが相手をしているゴブリンアーチャーたち3体とフルフたちのゴブリンだけだ。
そう思い、ウルフたちの方を見れば向こうもちょうど終わったようでハイドに加勢するためにこちらに向かってきていた。
これは戦闘終了のアナウンスが流れるのも時間の問題なのでメタモルフォーゼで銀樹刀を送還し聖書を召喚する。
ハイドがゴブリンアーチャーが放つ矢を鬱陶しそうにしていたのでパラライズを行使する。いつものように黒の魔術陣が現れ紫電が打ち出される。当たり前のように紫電を食らったゴブリンアーチャーは痙攣してその場に佇むことしかできなくなる。
そこにクロウたちが到着し、噛みつかれ、斬り裂かれとそれはもう手も足も出さないまま攻撃を受け始め、すぐに息絶える。そこからはもうただのリンチでしかなかった。
私がデバフで行動制限をすればウルフが襲い掛かり、何とか助けようとゴブリンプリーストが魔導を行使しようとしてもハイドに邪魔をされてとワンサイドゲームであったと言っておこう。




