第10階層へ
「これで9層目も終わりですね。次はボス戦ですよ、ゼロさん」
「そうだな。だが、敵はゴブリンリーダーだぞ? いくらボス仕様とは言え苦戦するとは思えんな」
「それはそうですよ。ゼロさんのレベルは高すぎるのでカウントしませんがこのパーティーの平均レベルは34ですよ。LV10のゴブリンリーダーなんかには負けたりしませんって」
油断は禁物だがこれほどまでにレベル差が開いているなら、例え〈白黒〉を使わなくても問題にならない程度には戦闘を有利に運べる。
それに前も言ったがゴブリンリーダーの戦闘能力は高くなく、配下のゴブリンを召喚できると言った特性くらいしか持っていな。そして召喚されるゴブリンは他の階層で出現するゴブリンと何ら変わりのない強さしか持っていない。
要はゴブリンを呼べるタフなゴブリンというわけだ。
「いつの間にこんな時間か。この後も攻略を進めるつもりなので、ボス戦に行く前に休憩を挟むか?」
メニュー画面を開くと既に時間が18時を超していることに気が付いた。ダンジョンに入ってもう5時間ほど経過しているのに驚きだ。体感としてはまだ30分が良い所だぞ。
いや、それは盛ったな。だが、せいぜい2.3時間といったところだ。セイクリッドオウルのハイドのおかげで素早く攻略できたのでダンジョン内で護と出会えたのは幸運だったな。
「本当だ。いつの間に......。それならせっかくなので休憩を挟みましょう。7時くらいにここに集合でどうですか?」
19時か。そうすると1時間の休憩か。まあ、妥当なところだと思うので頷いて返答すると護は早速とばかりに結界石を使いログアウトしていく。
このエリアは魔物が出現しにくいので休憩にはもってこいだ。他にもプレイヤーたちがいるが結界石のおかげで私たちにちょっかいを出すことはできない。
さて、私も一度夕飯を食べにログアウトをするか。
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〈ログインしました〉
視界が明るくなり、目覚めるとログアウトした時と同じ体勢で再びダンジョンに戻って来た。周りを見渡しても護はいないのでまだログアウト中のようだ。
護が戻ってくるまで掲示板でも見て待っているとするか。メニュー画面を展開し、掲示板の欄を選択する。どうやら大型アップデートの内容が更新されたようで夏イベント関連の掲示板がお祭り騒ぎになっている。
流し読みをしてみたが今回の夏イベントのメインであるサバイバルゲームの概要がまとめられていたのでこれを見て私も対策を練ることにするか。それにイベントはパーティー単位で行われるようなのでそのパーティーをどうするかも問題だな。
いつもなら私、一刀、聖、不知火、ロード、レオの6人で組めばいいのだが今回のイベントは生産職が鍵なのでミサキさんたちを誘ってみるか。
「お待たせしました。何見てるんですか?」
「これか? これは夏イベの掲示板だな」
「公式から最新情報出てましたもんね。今回のイベントは生産職の配慮ができてるんでありだと思うんですけどどうパーティーを組むかが鍵ですね。いつものパーティーで組んで生産職を仲間に誘い込むか、最初から生産職とパーティーを組むか。まあ、俺は召喚獣がいるのでパーティーを組むことはできないんですけど」
「序盤は連合を作るのも良いかもしれないな。その後のことが不安ではあるが」
まあいい、イベントの話はこの辺にしてダンジョン探索に精を出そうではないか。今日の目標は20階層の制覇だからな。
「次の階層に跳んだらすぐにボス戦になるんでしたっけ?」
「そうだ。いつもの魔法陣を踏めばボスエリアに飛ばされて、すぐに戦闘だな。だが、入った瞬間殺されることはないようなので心配はないだろう」
「そんなことがあれば誰も攻略できてませんしね。それで今回はどんな感じで行きますか?」
結界石を回収して護と一緒に階段を上りながら話し合う。今回の相手はゴブリンリーダーなので初見ではあるがほとんどゴブリンと同じモーションをしてくると予想できる。それに〈白黒〉が切れても負けることはなさそうだ。
なので私も前衛を務めると言うのは可能だ。しかし、さっきみたイベントの内容を考えるなら、パーティーでの動きも練習させておいた方が良い気もする。
「さっきと同じで私も前に出よう。ゴブリンリーダーは私がやるのでウルフたちは遊撃に回ってもらいたい」
「分かりました。後衛職に前衛を任せるのはなんとなく罪悪感がありますがゼロさんだったら全くありませんね」
結局、パーティーでの動きは明日から一刀たちと攻略を開始するのでその時に回すことにした。よく考えれば時間はまだあるしそこまで急ぐ必要もないからな。
「到着ですね。見た目に変化はなさそうですし自分が今何階層にいるのか把握しておかないと間違えてボスエリアに跳ばされる事故とかありそうですね」
「あるだろうな。戦闘中は移転石も帰還石も使えないから戦闘準備ができていない状態で跳んでそのまま死に戻りとかはありそうだ」
そんなことを言いながら魔法陣に乗る。そして私たちは魔法陣から放たれる光の渦に飲み込まれるのであった。




