召喚獣 その1
護とパーティを組んだ私たちはすぐに階段を上り魔法陣の傍までたどり着いた。護の準備も万全のようなので早速魔法陣に乗る。パーティ全員が魔法陣に乗ると魔法陣が輝きだし、転移が起こる。そして、いつもと同じように洞窟の通路まで跳ばされる。
今の階層は6階層だが階層が上がるごとに通路の幅が広くなっており、第1階層は人一人が余裕をもって進める程度の道幅だったのがここは5人くらいが並んで歩いてもまだ余裕がある。そのおかげで刀を振り回しやすくはなったがその分階層自体も広くなっているので探索がめんどくさくなっている。
「あの魔法陣に乗ったらモンスターハウスに跳ばされるとかってないんですかね?」
「流石にないだろ。あるとすればダンジョンの罠とかだと思うが今のところ罠の類は見つかっていないと聞いているからな。それを期待するんだったら100階層以上になるんじゃないか?」
「100階層ですか。それは、また先の話ですね。そもそもモンスターハウスになんか入りたくないですけど。俺なんかが入ったら死に戻りは確定ですし」
それはどうだろうか。案外、護なら出現する魔物を全部倒してしまいそうな気もするがな。こいつもβテストの時には随分暴れていたし不可能と言うわけではないだろう。
「ゼロさん、召喚獣を召喚するので一応周囲の警戒をお願いできますか?」
「了解だ」
集中することで気配察知などのスキルの強度を上げる。何気に製品版が始まってから召喚士のプレイヤーは見たことがなかったので護がどんな召喚獣を召喚するのか楽しみだ。軽くだが掲示板を巡回しているときに情報として召喚獣について調べてみたが実際にこの目で見るのでは全く違うからな。
「サモン! セイクリッドオウル」
護が地面に手をかざすと1m程の魔術陣が現れて魔力が集まり渦を巻く。そして、魔力の渦が収まる頃には手乗りサイズの梟が魔術陣の上に座っていた。
「まだまだ行きますよ。サモン! セイクリッドウルフ」
そして護がもう一度手をかざすと同じ魔術陣が3つ展開されてさらに魔力が集まってくる。そして、魔力が収まった後に3体の狼が鎮座していた。大きさは始まりの街で見かけたファングウルフと同じくらいで中型犬程のサイズだ。見た目はファングウルフと遜色がないと言うより全く同じだ。まあ、ファングウルフも見た目は普通の狼と変わらないのでただの狼と言われても信じてしまいそうだが。ただ、特徴を上げるなら魔力視を通して召喚獣を見ると、全ての召喚獣が体の表面に魔力を纏っていると言うとことくらいか。
「これが護の召喚獣か?」
「そうです。こいつらが俺の召喚獣であり仲間でもあります。正確に言えばまだ召喚獣はいますがパーティ制限があるので今出せるのはこいつらで限界なんですけどね」
それはそうだろ。これだけだったらパーティに偏りが生じてしまうからな。召喚士はソロ要素が多いから戦闘においては召喚獣が命と言っても差し支えない。いかにも攻撃が得意ですよとでも言いたげな3体のウルフを見ていると守りの方に不安も覚えるしな。
「護はさっきこいつらのことをセイクリッドウルフと呼んでいたがファングウルフではないのか? 見た目は変わらんから違いが良く分からないのだが? それとその梟についても教えてもらいたい。私もそれなりに魔物とは戦ってきたが梟の魔物は初めて見るからな」
「そうなりますよね。召喚士はβテストの時と仕様がまるっきり変わっていて正直俺も困惑しましたから。パーティ欄を見てもらえれば分かると思いますが今の俺の職業って中位召喚士じゃないですか。実はーーー」
そこから護には色々召喚士について教えてもらった。まず、初期職業として選択できる召喚士は二次職になると中位召喚士と魔獣召喚士に分岐するようだ。そして、護が就いた中位召喚士が召喚できるのが霊獣であり、魔獣召喚士が召喚できるのがその名の通り魔獣らしい。そして、霊獣はステータスが低い代わりに賢さが高く、逆に魔獣はステータスが高い代わりに賢さが低い特徴がある。賢さは指示の理解度に関係しているようで賢さが低いと大雑把な命令でしか召喚獣を動かせなくなるとのこと。
もちろん護の戦術はこまめに指示を出して戦局を動かすというものなので魔獣召喚士だとβテストの時のプレイスタイルができなくなるからと霊獣を召喚できる中位召喚士にしたとのこと。ちなみにさっき召喚していた梟は召喚士を選択した時に最初の召喚で呼び出すことができた最古参の召喚獣のようだ。
他にも新しい召喚獣を召喚するには魔石が必要で、今までは魔石集めに精を出していたようだ。それでも魔石1つで確実に召喚が成功するわけではなく何回か挑戦しないといけないため仲間集めは時間の経過が激しいと言っていた。魔石を集めるだけだったら値段は張るが市場で売られている魔石を買った方が良いのではと聞いてみたが自分で集めた魔石で召喚した方が愛着も湧くし、何より魔物の研究にもなると熱弁されてしまった。




