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AWO〜ゼロと愉快な5人の仲間たち〜  作者: 深山モグラ
第一章 中央大陸編 第一節 中央王国 第三項 森林の街
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ウッドアニマル その3

 どうするか。とりあえず今はコイツの感知能力の発動条件を解明した方が良さそうだ。


「分かりきってはいるが、まずは刀による攻撃からっと......まあ、避けられるよな」


 武器による攻撃はダメみたいだ。どうしても攻撃が当たる直前になって逃げられてしまう。次は魔術を試していくか。


「ポイズン......ヒール。おや? これは入るのか」


 ウッドアニマルに向けて行使したポイズンは紫の靄が纏わりつく前に逃げられてしまったがヒールを使ったときは、ヤツの足元に魔術陣が出現したにも関わらず逃げる様子はなくしっかりヒールをもらっていた。

 デバフはダメでバフは大丈夫なのか。他にもバフをかけてみて試してみるか。もしかしたら何か糸口を掴めるかもしれないしな。


「エンチャント・グリーンダウン......エンチャント・レッドアップ」


 やっぱりだ。デバフは避けられたがバフは避けるつもりがないのか全く動いていない。ヤツの感知条件は危険か危険じゃないのかで分けられているのか? いや、それにしても木刀で攻撃した時よりも逃げるタイミングがかなり速い気もするな。

 魔術の方が感知されやすいのかもしれない。他に思いつく理由も見当たらないのでここまで来たら折角だし〈白黒〉を発動させてから攻撃してみるか。超強化したパラメータならヤツの速度にも対応できる可能性があるしな。


「スリープ......レジスト・ファイヤー」


 これもスリープは避けられたがバフの方は避けられなかった。基本的にウッドアニマルにはデバフは効かないと思った方が良さそうだな。

 その後も何回もバフとデバフを交互に発動させることにより十字架を召喚していく。


「これで最後......アブソープ......ハイエンチャント・グリーンアップ」


 諦めきれず何度かデバフをかけたが案の定すべて避けられてしまった。だが、闇魔術の最初に覚えるアーツ ナイトビジョンは避けられなかった。これは単に対象の視野を明るくするだけなのでバフみたいな判定になっていたのだろう。

 他にも同じくバフ判定になるエンチャント・カースも避けなかった。だが、あいつにバフをかけても意味がないので結局はヤツの行動を制限するという戦法は使えない。


「最後はパラメータによるごり押しになるのか。ここまで準備を整えるにも時間がかかるし、他の手段も見つけないとだ」


 しかし、困ったな。流石に〈白黒〉でドーピングした私を危険とみなしたのかウッドアニマルには私から目を離さずじりじりと後退している。


「ここまでやったんだ。逃がしはしない」


 いかん。落ち着け。冷静さを欠くと技の精度が落ちることになる。〈白黒〉による超強化は非常に強力だが、体が軽くなるからか同時に戦意が燃え上がってしまう。

 戦意が高いのはいいことだが高すぎてもいけないので祖父には常に冷静さを保てとよく言われたものだ。


 集中、集中。私が落ち着きを取り戻したからかウッドアニマルの警戒も先ほどよりも薄くなった気がする。さっきまでは私を睨むようにして見ていたのに今ではただ眺めているだけのようだ。


 攻之術理 追斬


 限界まで強化された身体能力により一瞬にしてウッドアニマルに近づき、ヤツが回避行動に移る前に居合からの高速抜刀斬りで最初に斬った軌跡に沿ってもう一度斬りつけることで連続でヤツを切り裂く......かに見えた攻撃も虚しく空を斬る。

 

「なんだよ今の速さ。目で追えなかったぞ。はは、今までは全然本気じゃなかったってことか」


 二回連続で斬りつけると言う技の構造上、初手の一閃は私が使える技の中でもかなり早い部類の攻撃だ。それに〈白黒〉をフルに発動しているのだ。その上昇値だけでもAGIを単純に考えて45レベル分は上がっているのに感覚からしてかすりもしていなかった。

 これはウッドアニマルに攻撃を与えるのは無理なのではないだろうか。これ以上私のパラメータは上げることはできないし、攻撃も避けられてしまう。それにヤツの速さは今の私では感知できない程に速かった。


 ここまでことごとく技を躱されたのは祖父との模擬戦以来だし、自分の腕に呆れてしまう。まあ、祖父の方が圧倒的に強かったのだがな。


「このまま続けてもどうせ当たらないのだろうし戦い方を変えるか。私の攻撃を全て捌くのは祖父だけで十分だ。お前如きに後れをとっていては先には進めんからな」


 双之術理 阿修羅


 これは余り好みではない術理なので普段は使わないが戦い方を変えるならこれが一番最適だ。この術理は私が普段使っている双心流〈柳〉ではなく〈荒〉の技を使う本家の師範代たちが使っている術理だ。

 どこまでも攻撃に特化したこの術理は攻之術理と歩之術理を合わせた術理であり、一撃で敵を仕留めることを重視する型でもある。なので技の精度より威力を重視する節があり、私としては扱いづらい。


 攻歩之術理 縮地羅刹


 ウッドアニマルとの距離を詰める。ここまではいつもと変わらない。だが、次でこの術理の理念が分るだろう。

 上段で構えた銀樹刀をヤツに向け、振り下ろす。ヤツはもちろん避けるだろう。だが、これはただ刀を振り下ろすだけではない。その身に宿る殺気を全て乗せた一撃を敵に叩き込むのだ。

 並大抵の者ならその殺気にやられ硬直する。それが効かぬのは強者か愚者か。どちらにせよこの技はただひたすらに刀を振るう。その身に宿る殺意が枯れるまでな。


「て、思ったんだけどあいつは強者でも愚者でもなく臆病者だったか。殺気が溢れた瞬間消えたぞ。それに〈白黒〉が解除されたから逃げたのか。戦闘終了判定になっているな」


 釈然としない怒りはあるがそれ以上に呆れが勝ってしまい私の中の殺気が薄らいでいく。次の相手を探すか。それにしても今の殺気で近くにいたウッドアニマルは全てどこかに行ってしまったようだ。

 羅刹を使っていては一生狩れなそうだ。今の戦闘で漏れた殺気にも反応するとかどんだけ敏感なんだよ。


 殺気を......そうか! 殺気が鍵か。ヤツの感知能力は殺気に過剰に反応しているんだ。だから、攻撃する瞬間に漏れた殺気を感知して避けることができたのか。

 タネが割れればこっちのものだ。祖父に叩き込まれたおかげで殺気くらい自由に扱えるわ。これで修行の完遂も見えてきたな。


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