ウッドアニマル その1
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昼食を挟んだことで幾分か闘志は収まっているがまた、この世界に降り立ったことで再燃してしまった。なのですぐにでも魔の森に戻ってウッドアニマル狩りだ。
その前にアリアさんから貰った小包を開封してしまおうか。インベントリから小包を選択して私の目の前に召喚する。大きさはそこまで大きいわけではなく何かの箱を包んでいつようだ。そして箱の中にはなんと金色に輝く硬貨が100枚入っていた。
つまり金だ。さらにこの硬貨をインベントリに収納すると一枚につき所持金が10万バース増えたのだ。それが100枚あるので合計一千万バースも謝礼としてもらってしまったわけだ。
これから闇医者ならぬ闇神官として活動しようかな。呪いを解くだけでこんなに金がもらえるものなのか? 少年にオリジナルスキルがあることを教えたからその謝礼が含まれているのかもしれないが一千万は大金だ。
これだけあれば金集めなどせずにスキルの書や武器を好きなだけ買えそうだ。だが、小包と一緒にアリアさんのご両親が経営している商会への招待状をもらったし、この金はオークションで使えと言うことなのか!
オークションには参加したかったが元手が足りなそうだから見るだけにしようと思っていた。しかし、これだけの金があれば参加するくらいならできそうだな。だが、オークションに勝つにはもっと金が必要になる。どっかにカジノねぇのか? 軍資金はあるんだ、私にスロットを回させろ。
まさかの謝礼の金額に驚きはしたが貰ったものは返す気がないぞ。やっぱり、イベクエ最高!! 最初に悲鳴を聞いて助けに向かったときなんで少女じゃなくて少年なんだとか思ってすまなかったな。
テンプレ通りに進めば少女だと思ったんだよ。最初に悲鳴も声が高かったしさ。まあ、終わったことなのでどうでもいいがな。少年を助けたおかげで金も貰えたし何より久々の対人戦を楽しむことができたので私には得しかなかった。
おっと、そろそろ移動するか。ここにいても何も始まらないからな。戦いの続きは魔の森でだ。
街の外に出て自身にバフをかけたら砦を目指して走り出す。今回もラピは連れて行かないので少し時間はかかるが魔の森でラピが死ぬよりは断然ましだ。ラピがどれくらい強いかは実戦をさせていないので分からないがそこらの原種よりは確実に強いだろうな。だが、魔物と殺りあって勝てるかと聞かれれば怪しいところだ。
いらなくなった魔石を食わせてはいるが魔石を食うことでどれ程強くなってるか分からない。それに強さを調べるために魔物と戦わせてラピが死んでしまえば生き返らせることはできないので戦闘には参加させたくないのだ。
召喚士のように死んでも時間経過で復活するならいいのだがその仕様になると召喚士の存在意義を無くしてしまうので仕方がないか。なのでこうした危険区域に挑むときには身一つで挑むようにしている。
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「あれがウッドアニマル、か」
街を出てからはトレントンを無視して全力疾走したおかげもあり想定より早く砦を超えることができた。しかし、よく見てもこれが魔物だとは思えないな。
そう、少し離れた所に今、ウッドアニマルらしきものがいるのだ。これって本当に魔物か? まるで本物の動物のように風が吹くたびに毛先の一本一本が揺れているぞ。それに模っているのは狐のようだがフォルムも完璧だし、これってただの狐じゃないのか? 私の看破にわずかな反応もないし全く分からない。
いや、砦の責任者であるノヴァさんが言っていたのだし間違いはないだろ。ここは一回狩ってみれば分かるし、ヤツに気づかれていないうちに不意打ちで仕留めてしまおうか。
念のためスキルショップで〈隠密〉のスキルを習得したがまだレベルが低いので役に立たないだろう。だが、ないよりはましだろうと言うことで隠密を発動させる。
正直全く気配が薄くなったなどの実感はない。これだったら自前の方が使えそうだな。
ウッドアニマルの背後に音を立てずに回り込みそこから徐々に詰めれる距離まで近づき、縮地を使ってウッドアニマルに急接近して銀樹刀で脳天を貫く。が、しかし確実に仕留めたと思った一撃は空を斬る。
「あいつ速すぎだろ」
先ほどまでウッドアニマルがいた場所にはすでにヤツはおらず数メートル離れた場所で首を傾げ私のことを見つめていた。
これでこいつがただの狐ではなく魔物だって判明した。普通の動物が今の攻撃を躱すことなどできるはずがないからな。
だが、今の攻撃を避けられるのは想定外だ。並みの魔物では避けれない速さで突きをお見舞いしたのだがこいつは素早さが尋常じゃない。今までで一番めんどくさいタイプかもしれないな。
私としてはカウンターで敵を仕留めたいが相手もそれ狙いだと硬直する。それにさっきの攻撃を軽々と避けたので速さでも追いつけないだろうし攻撃を当てるのは至難の業だな。
〈白黒〉を使った力技でも効率が悪いし、他の方法を考えるか。トレントンみたいに動かないでくれれば楽でいいのだがな。




