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AWO〜ゼロと愉快な5人の仲間たち〜  作者: 深山モグラ
第一章 中央大陸編 第一節 中央王国 第三項 森林の街
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詠唱による解呪

「ジョゼフさん、守りが遅いですよ」


 ハッとしてジョゼフさんが剣を構えることで木刀による袈裟斬りを防ごうとするが守りの体勢に入る前に剣と刀が衝突し、力で押し切れなかったジョゼフさんが後ろに飛んでいく。


「そうはさせない!」


 さらに追撃をしようとしたところにアレックスさんが割って入り私に剣を振るうが、私もすぐに刀を振り上げることで対処する。しかし、私の魔術によって強化された力を乗せやすい上段からの一撃とデバフをかけた私の下段からの攻撃では圧倒的にアレックスさんの方が有利であり徐々に押し込まれていく。

 そこで、私はあえて押し返す力を弱め、刀を斜めにすることで刀身に沿ってアレックスさんの剣戟を滑らし均衡状態から脱する。


「まだまだです!」


 私が剣を滑らしたことで彼の剣の位置が胴辺りまで下がるが、そこからアレックスさんが剣を直角に曲げ横一文字に追撃を仕掛ける。

 しかし、私の刀はアレックスさんの攻撃を受け流したおかげで頭部より上にあり、そこからの対応は難しいと思い、持っていた刀を反転させ最速で地面に刺すことで攻撃を防ぐ。

 本来の木刀なら金属でできた剣による攻撃を防いだ時点で真っ二つに切断されるが私が使っている木刀はエルダートレントンからできたもので表面に傷をつけることなく防ぎきる。


「手が止まってますよ」


 地面に刺した銀樹刀はそのままにアレックスさんに対し蹴りを入れればすぐに、剣を胸の位置まで戻し剣の腹で蹴りを防ぐ。


 攻之術理 震撃


 しかし、防いだと思ったであろう攻撃に遅れてさらに衝撃が襲い、想定外の衝撃に耐えられずアレックスさんが剣を落とす。そこに完全に殺されていなかった蹴りによる勢いを利用し回し蹴りでアレックスさんを吹き飛ばす。


「悪くはないのですが連携が上手くとれていませんね......エリアヒール」

 

 これで召喚した白の十字架は16個目だ。残り四つで上昇値が最大になるのでこの時間も終わりが近づいていると言うことになる。

 楽しい時間は終わるのが本当に早くて困るよ。ラストスパートは本気も本気でやらせてもらうか。


「残りもわずかなので手加減なしで行きますよ。手を止めたら死ぬと思って全力で来てください......アブソープ」


 地面に刺さっていた木刀を引き抜き刀身についていた土を血振りの要領でふるい落す。


 腰を落とし、攻之術理の精度を高めるために精神統一を行う。守之術理より攻之術理に最適化されていくのをこの身に感じながら目を閉じる。

 解呪のためINTとMNDはバフを使って上昇させているがその他のパラメータはこの戦いを楽しむためにもデバフをかけて私自身を弱体化させている。そのおかげでパラメータではこちらが完全に負けているが技の精度なら負ける気はしない。


 導魔を片手にその場で相手からの攻撃を待つ。二人もアレックスさんを前にしてそれぞれが武器を構える。


「ジョゼフ、行けるか?」


「もちろんですよ、先輩!」


 二人が声を掛け合うと同時に走り出す。向こうは攻めの姿勢だろうが私もこの刀を振るいたい気分なんだ。すまないが無理やりにでも守りに移ってもらうぞ。


 腰をかがめ、居合の構えをとる。鞘がないので居合術とは言えないがこの構えは必殺の型。集中して二人が私の領域に入るのを待つ。二人が私に近づくごとに魔術を行使し、十字架の数を増やしていく。そして残り5メートルほどになった時には〈白黒〉は最大まで発動していた。

 深く集中するほどに時間の流れがゆっくりになり、二人の息遣いや鎧の擦れる音が良く聞こえる。そして私の感知領域に足を踏み入れた時、抜かれた導魔は一の太刀でアレックスさんの胴体を斬り、返す二の太刀でジョゼフさんを吹き飛ばす。


「「 グハッ!! 」」


 今のは本気の一撃であったが木刀なので流石に死にはしていない。しかし、殺す気でやったのでダメージはしっかり入っているみたいだな。


「ハイエリアヒール。お二人ともありがとうございます。ああ、でも闘志は切らさないでくださいよ。アリアさんの解呪に成功するまでは私を殺すつもりでいてください」


 ここで二人の戦意がなくなってしまえば戦闘終了になってしまうのでまだ戦意は切らさないでもらいたい。体を二人からアリアさんたちの方に向ければ彼女たちの驚愕した顔が窺える。まさか、神官がこんなに戦えるとは思っていなかったのだろう。

 もちろん神官としても働けるので私はかなりハイブリッドだな。それはさておき、バフが切れる前にアリアさんの解呪を済ませてしまおうか。


「【その身に宿る呪いよ 刮目せよーー】」

 

 詠唱を始め一歩ずつアリアさんに近づく。私が歩くごとに練り上げた魔力が絡み合い可視化できるほどに魔力が迸る。


「【ーー不浄を消し去る聖光をーー】」


 一節毎に魔力を込め、一切の呪いを解く魔術を心に描く。想像するは全てを浄化し、祝福する光。


「【ーー穢れを祓う聖言をーー】」

 

 次第にアリアさんを中心に魔術陣が展開される。意思の力により補正された魔術陣から漏れ出す魔力は光となり周囲を照らす。


「【ーーかの者を救済する我の手をーー】」


 ついに魔術陣からは淡く輝く泡沫が舞い上がり、陽光に照らされ乱反射する。


「【ーー時は満ちた 今此処に汝の終焉を告げる〈ハイディスペル〉】!!」


 そして、詠唱が完了しアーツ名を唱えた時、魔術陣は目視するのが難しいほどに光り出し魔術陣から出現した泡沫が弾ける。

 弾けた泡沫が光となりそれがアリアさんの身体に触れる。その瞬間アリアさんの身体から真っ黒い煙があふれ出す。しかし、その黒い煙も魔術陣が放つ光に照らされ、まるでそこには何もなかったかのように消えていくのであった。


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