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AWO〜ゼロと愉快な5人の仲間たち〜  作者: 深山モグラ
第一章 中央大陸編 第一節 中央王国 第三項 森林の街
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憧れと本気

前半は前回の続きです

 僕がメイドのシェーラに連れていかれたのはお風呂だった。そこで服を脱がされて魔の森で付いた汚れを落とした。シェーラたちには怒られるって思ったけど優しく髪を撫でるだけで何も言われなかった。


 汚れを落とした後は自室に戻って布団に潜る。また心が挫けそうだ。僕一人の力ではお母さんを助けることが出来なかった。ううん、ただみんなを心配させただけで僕は......。


「ん? なんの音だろう」


 開け放れていた窓から何かがぶつかり合う音が聞こえてくる。気になった僕は窓から外に身を乗り出し外の様子を見ると、そこには神官様とアレックスが戦っている光景が広がっていた。

 僕はいてもたってもいられなくなり自室を飛び出し、すぐに庭に出る。


 外に出た僕の目に映りこんできたのは僕たちの家に仕えている騎士の中でも上位の実力を持つアレックスが手も足も出ないまま神官様にいなされている姿だった。

 アレックスが上段からの攻撃で神官様を斬ろうとしても神官様が持つ剣に触れた瞬間、まっすぐ振り落としたはずの剣が軌道を変えて神官様に当たることはなく地面に突き刺さっていた。


 そこからアレックスはすぐに剣を下から上に斜めに向けて斬り上げるが神官様は半身をズラすことで難なくかわし横一閃に反撃を返す。それに気づいたアレックスもすぐに剣を前に持ってきてガードをするが金属と木がぶつかったとは思えない音を響かせる。

 僅かに拮抗していた力の競い合いは神官様がさらに踏み込むことでアレックスを吹き飛ばして終わる。吹き飛ばされたアレックスはなんとか体勢を持ち直すがわずか数分の戦闘のせいで疲れ果てていて膝をつきながら荒い呼吸で息をしていた。


「すごい! これが戦い」


 膝をついているアレックスを見て神官様が魔術を使った。魔術陣から出た暗い光は神官様を、明るい光がアレックス包む。あれはエンチャント系の魔術だ!

 でも、暗い色の魔術は弱体化だったはず。それを自分にかけるってことはまだまだ神官様は本気じゃないってことなのかな?


 やっぱ、神官様は魔術が無くてもすっごく強いんだ。


 それからアレックスと神官様の模擬戦は5分以上続いた。アレックスがどんな攻撃をしても神官様の剣術の前ではすべてが赤子のようにはじき返されてしまい、神官様が一つの動作をするたびに魔術が行使されてアレックスの動きが良くなる。

 それに今まで見たことがないくらいにアレックスの攻撃は洗練されている。それでも神官様には手も足も出ていない。神官様は自分に弱体化の魔術を使っているのにだ。


 神官様とアレックスを見れば剣を振るう速度もアレックスの方が早いのに気がついたらアレックスの攻撃は神官様に防がれていて、神官様の攻撃は僕の目でも追うことができるのに防いだ途端にアレックスが砂煙を巻き上げながら後退させられている。

  

 この光景を見た時、僕の憧れの人は神官様に変わっていた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「アレックスさん、これくらいでいいでしょう」


「は、はい。お手合わせあ、ありがとうございました」


 そう言うとアレックスさんは地面に大の字に倒れ込んだ。全身甲冑で5分程休みなし全力で動き続けたのでそれはもう死ぬほど疲れただろう。だが、今のはオリジナルスキルが発動するかを調べるためだったので本番じゃないのを忘れないで欲しい。

 そう、次が本番だ。今の攻防はゲームのシステム的には戦闘中と判断されるらしく、〈白黒〉がしっかりと発動した。これでパラメータの超強化をすればアリアさんにかかっている呪いにもレジストされずに解呪できるだろう。


「ジェスタさん、アリアさんを呼んで来ていただけますか?」


「それではオリジナルスキルの方は?」


「問題なく発動できます」


 その朗報を聞きジェスタさんが今度こそ笑顔で皺の増えた顔をさらにしわくちゃにし、早歩きで屋敷に戻っていく。


「アリアさんが来たらもう一度やりますがいけますか、アレックスさん?」


「すみません。次も同じ動きができる自信がないのであそこに立っている門番のジョゼフと二人で挑んでもいいでしょうか?」


「もちろんですよ。二人の連携を期待してますからね」


 アレックスさんは苦笑で返すが、後ろで今の戦いを観戦していたジョゼフさんはまさか自分が指名されるとは思っていなかったようで焦った素振りを始めた。

 そこまで気合を入れる必要はないのだが、まあいい。相手が強くなる分には問題ないからな。残念ながら〈白黒〉では自分にかけたデバフの効果を高めることができないので質でダメなら数を増やすしか戦闘を楽しむ術がないのだ。

 

「ゼロ様、奥様を連れてまいりました」


 嬉しいのは分かるがアリアさんに無理をさせてるんじゃないか? 思ったより戻ってくるのが早いぞ。

 ジェスタさんとカタリーナさんが椅子に座ったアリアさんの横に付き、アリアさんの膝の上には少年が座っていた。少年の目がなんかキラキラしてるんですけど。もしかして私に惚れたのか。モテるってのつらいぜ。冗談だが。

 

「アリアさん、今度こそ解呪してみます。後、ジェスタさんには言いましたが返礼など不要です。それじゃあ、アレックスさんとジョゼフさん、準備はいいですか? 最近は魔物を相手することが多くて久しぶりの対人戦なので少し本気でやらせてもらいます」


 さっきの戦いも良かったが今度は相手が二人だ。私が八相の構えをとると二人も剣を正眼に構える。目的は解呪だがこの戦闘ぐらい楽しんでも罰は当たらないよな。


「【聖光が我らを照らし冥府が仇を呼びつける 極楽浄土 魑魅魍魎 天門に上りて獄門を睥睨す〈連続詠唱 六種白黒〉】」


 さあ、始めようか。


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― 新着の感想 ―
[良い点] ワイ、NPCは道具というか装置的は存在ではなく、ゲームの世界で生きてる人認識派、とても楽しめてます。 ただ、毎回NPC視点挟むとテンポ悪くなっちゃうのが難しいところ。
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