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AWO〜ゼロと愉快な5人の仲間たち〜  作者: 深山モグラ
第一章 中央大陸編 第一節 中央王国 第三項 森林の街
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これは家ですか? いいえ、屋敷です

「少年の家まで案内してもらえるか?」


 魔の森の麓から歩くこと数十分。少年がいたため進行速度は遅くなってしまったがやっと街の中に戻ってくることができた。

 先ほどまでは少年が私の背中を追いかけていたが今度は逆に私が少年の後ろをついていく。ここに来るまでに涙はすべて出し尽く今の少年はしっかりと前を向いている。


 少年についていき居住区があるエリアへ向かう。他の街でもそうだったが未だ高層ビルなどの建築物は見たことがない。ここにある建築物もほとんどが一軒家でたまにアパートみたいな建物があるだけだ。

 私はこういった木造建築が結構好きなのだ。まあ、木造建築と言うよりかは武家屋敷が好きなのだが。実家が武家屋敷だったこともあるがゆったりしながら庭を眺めるのが昔は好きだった。


 少年についていき、さらに住宅街の奥に進んで行く。奥に進むにつれて家の敷地が広くなり建物も豪華になってくる。

 もしかしてこの少年の家族はかなり金持ちなのか? 領主の館からは離れているのでその関係者ではないと思うがこの地域に家を建てれるなら役職もそれなりだと思う。


「少年は貴族か何かか?」


 気になったので聞いてしまった。貴族だったからと言って態度を改めるなどしないが変な面倒ごとに巻き込まれたりしないよな。家まで送り届けたら『誘拐犯だ』とか言われて捕まるのはごめんだぞ。

 今でも予定が押しているいるのにここでさらに時間を浪費されたらたまったもんじゃない。イベクエかもしれないと思っていたが今は師匠からの修行でお腹がいっぱいだ。まあ、少年を助けたことには微塵の後悔もないが。


「貴族さまじゃありません」


「貴族ではないのか。それだったら両親は職人とかか?」


 どうやら貴族でなかった模様。しかし、貴族でないのにここに住んでいるならこの街の職人の可能性も出てきたな。職人だったら少年には悪いが伝手を確保しておきたい。


「それも違います。お父さんは王国魔術師です」


 王国魔術師だったか。それなら高給取りにも納得できる。王国魔術師と言えば王国騎士団と肩を並べる王国の主戦力だし生半可な実力では入団もできない場所だ。

 私が魔術士だったら何か聞けたが神官のなので聞きたいことはない。それに今は仕事に行っていると言っていたので会えないだろう。


・・・


・・



 その後も少年と会話をしながら道を進み少年との心の距離が縮まった頃に少年の家に着いた。少年の家はかなり広い庭に所々樹が植えられており敷地の中央には大きな家が佇んでいた。あれは家と言うよりは屋敷と言った方が適切な気もするが木材の他にも石材などが使われており日本屋敷よりも洋館に近い。

 少年の家に近づきながらも薄々思っていたのだが本当にこの屋敷が少年の家なのか。そこらの貴族と同じレベルの豪華さじゃないか。少年の父親は王国魔術師でもかなり高い地位にいるのは間違いなさそうだ。


「おい、ジョゼフ! メイド長を呼んでこい!!」


「了解しました、先輩!!」


 門番のお仕事お疲れ様です。少年よ、君は私が思ってた以上に重要人物だったようだな。メイド長ってなにかな? おじさんびっくりだよ。はぁ、現実逃避はやめだ。


「貴様! 何者だ。今すぐレイ様から離れろ!!」


「待って、アレックス。この人は僕を」


「さあ、レイ様、早くこちらへ」


 この門番は私が嫌いなタイプだ。少し対応が悪くはないだろうか? 門番なので主人の子供を守るのが務めなのは分かるが、最初から犯罪者扱いは気に食わない。だからと言って私もここでムキになってしまえば本末転倒なのでコイツに普通の対応とやらを見せてやろうじゃないか。


「門番殿、私は教会の神官でしてね。そちらの少年が迷子になっていたのでここまで案内しただけですよ」


「それを私が信用しろと? 教会の者だという証拠はあるのか!!」


 なかなかに怪しまれてしまっている。少年はどうすればいいのか分からずあたふたしているじゃないか。それにしても教会の人間だと証明できるものか。

 なにかあったかな? 称号には〈リーンの弟子〉があるが住民には私たちのステータスウィンドウは見えないので証明できないし、他に証明できるものと言えば......あ、あれが使えるか。


「これなら私が教会の者だと分かってもらえますかね?」


「ん? これは......し、失礼しました!!」


 どうやらこれで私が教会の者だと信じて貰えたようだ。私が門番に渡したのは魔の森に入るための通行許可書だ。あれには私が師匠の弟子であることが書かれているので効果はバツグンだろう。


「誤解が解けて良かったです。それにしても、仕事だと分かっていますがあそこまで疑われると余り気分いいものではありませんね」


「まさか、かの聖魔典神官のお弟子様とは知らず不快な思いをさせてしまい誠に申し訳ありませんでした。しかし、近頃は急にやってきた人々がここら周辺を歩き周っておりまして、今はまだ事件などは起きていませんがもしご子息様の身に何かあってはならないと気を張り詰めていたもので」


 あ、それは......その、すみません。それは絶対に私たち訪問者のことだよな。知らない人間がウロウロしてたらそれは警戒もするわな。門番の行動は正しいよ。

 何かあってからでは遅いので一応掲示板にでも注意喚起しておくか。


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