タイムロス
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昨日は張り切りすぎたかな。久しぶりに聖との行動だったので朝日が昇るまでマザープラントを周回してしまったよ。たまに私たち以外にもマザープラントを狩るためにやってくるプレイヤーがいたがボスエリアはインスタンスエリアなのでボスの取り合いは起こらなかった。
今日は昨日できなかったウッドアニマルの討伐だ。修行の達成に必要なアイテムは魔石よりもドロップ率が高いはずだが実際の所は分からない。
冒険者ギルドで魔物の情報を教えてもらおうとしたんだが魔の森の魔物の情報はAランク以上の冒険者じゃないと教えることはできないと言われた。たとえこれは師匠から貰った通行許可書を見せても同じで例外はないとのことだ。
討伐するんだから情報を教えて欲しいのだが「規則ですので」の一点張りだ。私はプレイヤーなので死に戻りができるがこれが住民だったら死ぬんじゃないのか?
普通の冒険者だったら今のランクでは魔の森にいけないので必要がないってことかね。とりあえず、魔の森は麓からさらに先にあるのでラピは宿においておくことにした。
街を出てからはAGI上昇のバフをかけてひたすらに魔の森に向かって走る。ラピに乗って進むのに比べれば遅いが歩くよりは早い。
それにしてもウッドアニマルとはどんな魔物なのだろうか。名前からして樹でできた動物だとは思うんだがトレントンみたく巨大とかそんな感じの特性があるのかもしれない。
魔の森の麓に着きそこからエルダーが生息するエリアまで進む。習得した〈看破〉もレベルが上がっておりエルダーが樹に擬態していてもその樹が不自然に見える。スキルの効果って恐ろしいな。
まあ、それがゲームの醍醐味なんだけどな。例えゲーム内でできたとしてもリアルではできるわけではないし気にするだけ無駄だが。
森の中をさらに進んで行くと石でできた壁のようなものが見えてきた。あれが本当の魔の森に入るための門なのか。
あそこから先は許可がないと入ることができないエリア。つまり今は私くらいしか入ることができないんじゃないかな。そう考えるとウッドアニマルのドロップアイテムもここでしか入手できない可能性がある。これは乱獲決定だな。イベントクエスト最高!!
「止まれ!! ここから先に何の用だ」
ですよね。まあ、テンプレだしこうなるのは分かっていた。
「私は教会の者だ。この先にいるウッドアニマルを討伐するためにここに来た」
そう言って私はインベントリから教会でもらい受けた魔の森の通行許可証を取り出し、砦を警備していたものに渡す。
「おい、お前。これを上官まで渡してこい」
「承知しました!」
ほう、規律乱れぬ敬礼。まさに軍の者だな。彼らが中央王国の主戦力、王国騎士団か。
「上官が来るまで少々の間お待ちください」
兵士の言葉通り待つこと数分。鎧が擦れる音が聞こえてきて砦の門が開門される。
「お待たせしました。私は王国騎士団第一師団第六分隊二番隊隊長 ノヴァ=ルーメルと申します。あなたがゼロ殿で間違いありませんか?」
開け放れた門から出てきたのは鋼の鎧を纏った180cm程の男であった。顔には傷があり歴戦の戦士と言った風貌か。腰には長剣を差し、背中にはラウンドシールドを背負っている。
「これはどうも。私がゼロで合っています。それで魔の森に行っても大丈夫ですか?」
「ええ、もちろんです。しかし、魔の森の魔物は厄介なヤツが多いので気をつけてください。特にここら周辺は高ランクの魔物が徘徊しているので細心の注意をお忘れないように」
ノヴァさんの忠告に頷き魔の森へと足を進める。と言っても魔の森に行くには砦の中を通った方が早いのでノヴァさんに案内してもらい反対側の門から出る。
門の外に広がっている景色はさっきまで見ていた景色と......同じだ。砦をくぐっただけで景色が変わったら仰天ものだからな。
「さて、ウッドアニマルはどこにいるのやら」
ぱっと見は森の中に動くものの気配は見受けられないので意識を集中して〈危機感知Ⅱ〉〈気配察知Ⅱ〉〈魔力視〉〈看破〉のスキルの強度を上げる。補助スキルはパッシブスキルなので本来常時発動しているが集中してスキルを使うことで効果が上昇する。なので戦闘中でない限りこの方法で敵を索敵するのが手っ取り早い。
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「いないんだが! ウッドアニマルがいないんだけど!!」
なんでだ。あれから1時間は森の中を彷徨っているのに魔物の姿を一体も見ていないんですけど。もしかしたら樹に擬態しているかもしれないと思い、そこらへんに生えている樹を銀樹刀で叩きつけてみたが変化は起きなかった。
感知系のスキルを4つも発動させてるにも関わらず発見できないってことはもしかして本当にここには何もいないのか?
これ以上探しても時間の無駄なので一度街に戻ってログアウトし、昼飯を食ってくるとするか。ついでに砦でウッドアニマルがどこら辺にいるかも教えてもらわないとだ。こんなに見つからないのだったら最初からノヴァさんに聞いておくべきだったな。
あ~あ、今回の成果ゼロか。ゼロだけにな......誰もツッコまないと悲しくなるで。




