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AWO〜ゼロと愉快な5人の仲間たち〜  作者: 深山モグラ
第一章 中央大陸編 第一節 中央王国 第三項 森林の街
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装備の依頼

「ゼロが私に依頼なんて珍しいね。それで、杖でも作ればいいのかな?」


「私が依頼したいのは杖ではなく木刀だ。どうだ作れそうか?」


 部屋に入って早々にアルが尋ねてきたので適当な場所に座り返答する。私が魔術を使うから杖だと勘違いしたのだろう。杖を使うのは魔術士なので私たち神官は基本的に使うことはない。


「え? なんで木刀なの。ゼロは神官でしょ?」


 やめてくれ。その純粋な眼差しは私に効く。良いじゃないか神官が木刀を使ったって。後衛職だって前に出て戦いたいときくらいあるに決まっている。


「神官と言っても私は前に出て戦うからな。前までは素手で戦っていたがそろそろ自前の武器が欲しくなったんでアルに依頼をしに来た」


「あ、そうだった。ゼロってばベータの時も普通に戦っていたもんね」


「まあ、そういうことだ。で、作れるか?」


「オッケー。もちろんその依頼、受けさせてもらうよ」

 

 机に座っていたアルがぴょんと飛び降り、ニッコリ笑う。なかなかあざといことをしてくれるじゃないか。私でなければ勘違いしてしまうぞ。


「それじゃあ、素材は持ち込みにする? それとも今ある素材で作る?」


「今は手持ちがないからお前が持っているアイテムで作ってくれ」


 トレントンを倒すために武器を揃えに来たのにトレントンの素材を私が持っているわけがないからな。この街にいる魔物はトレントン系とカラープラントと言う魔物だけなので木刀を作るにはトレントンのドロップアイテムがちょうどいいってわけだ。


「分かったよ。でも今は在庫にトレントンの枝しかないや。もう一段上のエルダートレントンの枝は今ないけどそれでも大丈夫?」


「いや良くないな。エルダートレントンの方がいい武器ができるんだろ。だったらエルダートレントンの枝を取ってくるからそれで作ってくれ」


 まさかのトレントンを倒すための武器を作るためにトレントンを倒しに行くという矛盾が発生した。だが、せっかく作ってもらう装備に妥協などはしたくないのでこれは仕方がないことだ。時間は有限なのでさっそくエルダートレントンを狩りに行くか。


「ちょっと待って。行動に移すのが早すぎだよ。そんなに焦んなくても魔物は逃げないからさ、少し私のお願いを聞いてくれないかな?」


「魔物は逃げなくても誰かに狩られてはしまうのだから早く行きたいのだが......はあ、そんな顔で私を見るな。それでなんのお願いだ?」


 部屋を出ようとしたらアルに呼び止められ、さらに上目遣いで私を見てきた。流石の私でも何の話も聞かずに立ち去ることはしないのでそのお願いとやらを聞くことにした。

 アルのことだから無茶なお願いはしてこないだろうしな。


「実は私、あと少しでレベルが30になって二次職に転職できるの。だから経験値稼ぎを手伝って欲しいなって。ダメかな?」


「なんだそんなことか。それならそうと早く言えばよかっただろ。一人で行くのも二人で行くのも大して変わらん。それに二次職の方がいいものを作れるのだろ?」


「もちろん! すぐに支度するから下で待ってて」


 慌ただしいやつだ。アルの支度が終わるまではロビーで待つことにする。それにしてもいいタイミングだった。アルが二次職になってくれれば今よりもいい武器が作れるだろうし、二次職ならミスリルを扱えるとゴルジアナさんが言っていたので木刀には鉄心ならぬミスリル芯を入れてもらおう。

 ミスリルは魔力をよく通すので魔術を使わなくても〈精密魔力操作〉のレベルを上げられるしな。それに魔力がこもっていれば物理攻撃を無効にする霊体の魔物にもダメージを与えられるので一石二鳥だ。


「お待たせ~。待った?」


 アルに、今来たばかりなので問題ないとつげ一緒にギルドを出る。

 思ったより早く支度を整えてきたようだ。少し汗をかいているので走ってきたのか。私は歩いてきたのでちょうど同じタイミングにロビーについたみたいだな。

 アルの装備は急所を守るように着込んだレーザーアーマーに短弓を背負っている。生産職にしてはずいぶんといい装備をしているが、たまに素材集めで外に出るからだろう。


「その弓は自作か?」


「もちろんだよ。自分が使う武器にはこだわりがあるからね」


 それは私も同じだ。武器とは自分の命を預けるものだからな。特に刀などは手入れをしてやらないと直ぐになまくらになってしまう。

 武器とはそれほどまでに大事なものなので自作した武器を使うのは好感を持てる。それにアルが作る物はさすが上位生産職というべきか現状作れる最高品質であった。


「アルはエルダートレントンを倒したことがあるのか?」


「それがまだ倒したことないんだよね。デッドトレントンとプルルトレントンはミサキさんとリアちゃんの3人で倒したことがあるけどエルダートレントンは私たちのレベル的に少し厳しいかもってやめておいたの」


 生産職が3人で魔物を倒すのも結構すごいことだと思うがエルダートレントンに挑まなかったのは賢明な判断だろう。たしかあいつの推奨レベルはアイアンゴーレムと同じLV32だったはずだしな。

 アルの言葉を聞きどうせだったらミサキさんたちも誘おうかと思ったが二人ともログインしていなかったのでその足を冒険者ギルドに向ける。もちろんエルダートレントンの討伐依頼を受けるためだ。金になるなら受けない手段はないからな。


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