森林の街
「お待たせいしました。ゼロ様、今回はどのようなご用件で教会にいらしたのでしょうか?」
少しの時間が経ってからトリガさんが来たので修行が終わったことを報告しインベントリからそれぞれの魔石を10個ずつ出す。
「まさかもう終わったのですか! それは流石に想定外でございます。流石はリーン様が見込んだお弟子様でありますな」
トリガさんが魔石を一つ一つ鑑定し間違いがないことを確認してから修行終了の札を貰った。見た目はただの木札だが〈魔力視〉で見るとわずかに魔力を放っていた。
「その札はゼロ様が修行をこなした後に渡すようにとリーン様から言われたものでございます。その木札を3つ集めてから宗教国に来るようにとのお達しです」
「ん? 3枚ですか。4枚ではなく」
鉱山、森林、迷宮、王都の4か所ではないと言うことか。まあ、面倒な修行が少なくなる分には問題ない。というかむしろありがたい。
「ええ、ここ鉱山の街、森林の街、迷宮の街の3枚です。それと王都では旅の疲れを癒すと良い、との伝言を預かっています」
王都では修行がないのか。それならその言葉に甘えさせてもらおう。王都ではやりたいことが山積みなので修行の予定がなくなってよかった。まず王都についたら昇格試験を受けてそのあとにクランの創設をしてしまいたい。
そのためにも次の修行をこなさないとなのでさっそく移動するか。定期馬車で行くなら4時間はかかる道のりだがラピに乗っていけば2時間くらいで着くだろう。人馬一体となり風になりたいものだ。
トリガさんに別れの挨拶をし街を出る。陽が真上まで昇っているので今は昼時か。見通しもいいし全力でラピを走らせてやるとしよう。
「この街を出るのも感慨深いな。特にゴーレムたちと別れられると思うと嬉しくて涙がでる。さてっと、ラピ! このまま次の街まで突っ走るぞ!!」
ラピにまたがって前進させる。そこから徐々にスピードを上げていきわずか数秒で最高速度で走り出す。風切り音が耳に残るがこれもまた心地がいい。できることならこのまま、この国を旅してみたいものだ。
ゴーレムがいる荒れ地を通りすぎ荒れ果てていた大地が緑を取り戻していく。遠くに見えているのが魔の森なのだろう。遙か遠方からでも森を認識できるので、間近で見ればもはや山と変わらぬ大きさなのだろう。
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ラピを走らせること2時間。ついに街らしき外壁が見えてきた。まだ距離があると言うのに街の後ろにそびえる森は恐ろしく大きい。これで麓と言うのだから森の深部はどれ程なのだろうか。しかし、これ程に巨大な森なので麓とは言え魔物の被害は大丈夫なのだろうか。
始まりの街と鉱山の街でも近くに魔の森があったがあれはまだ林と言われて納得できる規模だったがここは規模が違う。なんだか嫌な予感がしてきた。
「ここからは歩いていくぞ」
街の門が見えてきたのでラピから降り、歩いて門に向かう。先ほどから街道に出たようで道もしっかりと整備されていた。まだ新しい車輪の跡があったのでここを馬車が通ったのだろう。
ラピに乗りながら移動するのもいいが馬車で移動するのもロマンがあっていいな。安かったら馬車も買っておこう。インベントリは馬車などの荷物でも収納できるので邪魔にならないし。
「身分証の提示をお願いします」
街に入る前に門番に身分証を求められたので冒険者カードを差し出す。この流れは鉱山の街で体験済みなので手間取ることなく終わらせる。
門をくぐりついに街に中に入る。門を出れば陽光が私を直撃し少しの間視界を塞がれたが、それが収まったのちに目に飛び込んできたのは木造建築の数々。鉱山の街ではほとんどが石材で作られた建築物だったので木造というものは心なしか気持ちを落ち着かせてくれる。
ラピを休ませる必要があるのでまずは宿を取ろう。その後に教会で修行内容の確認だ。この街の大体の地理は事前に把握しているので迷わず足を進める。
宿につき、ラピを預けてから再び道を進み教会を目指す。やはりこの街にいるのは魔術士や射手が多い。戦士は鉱山の街で装備を整えているからな。それとこの街の周辺にはトレントンという魔物がおり、そいつらは根っこなどで攻撃をしたりと前衛職には厄介な攻撃をしてくるようだ。
なので、今鉱山の街にいる戦士職のプレイヤーなどはここはただの通過点に過ぎないだろう。ここで仲間と合流し本命の迷宮の街、その中心にそびえる巨塔、世界に七つしか存在しない未だかつて制覇されたことがないダンジョンに挑戦する。それがプレイヤーの今の目標と言っても過言ではない。
かくいう私もそのダンジョンとやらが楽しみで仕方がない。魔術に並ぶロマンの一つといって可笑しくはないからな。
そういえばアーサーたちはすでに迷宮の街に着いているのだろうか? 昨日はアナウンスがなかったし土曜の私がログアウトしているときにフィールドボスを倒したのかもしれない。
まだ五つある大陸のさらに無数にある国のそれまた複数ある街にしか到達してないというのにやりたいことで溢れているとは贅沢な悩みをしているものだ。
いつの間にか教会にたどり着いていたようで両開きの扉に手をかけ開きながらそう思う。
さて、この街ではどんなことが待ち受けているのだろうか。
これにて第二項 鉱山の街は終わりです。次節は掲示板と登場人物紹介を挟んでから第三節 森林の街に移ろうと思います。
これは本編に関係ない話なのですがポンな事件をやらかしたので嘲笑ってください。
先週ラーメン屋に行ったんですよ。
そこは食券を買ってから注文するタイプの店だったので券を買おうとしてお金を入れたんですけど反応ないなって思ったら間違えて返却口からお札入れてました。
近くに他のお客さんもいてバッチリ見られてたのでメチャクチャ恥ずかしかったです。
ちなみにお金は店員さんが救出してくれました。
以上です。




