ドンピシャ
俺は尿意を感じて目が覚める。
すると握っていたランの手は離れ、消えていた。
「帰ったのか…?」
俺はとりあえずトイレに行き、用を足し携帯で時間を確認する。
8時か…。まあ電車はあるし、なんかしら用事があって帰ったんだろうな。
「あぁ!!?」
連絡先の交換していない失態に俺は気づく。
「はぁ…。また会えるか…?」
あんなにドンピシャな女いねぇーよ。
俺は1人反省会してると、ソファの近くに正方形のポストイットを見つける。
拾い上げると少し汚い字で、
『ありがとうございました。』
と書いてあった。
こんな置き手紙置くぐらいなら電話番号書いてくれればいいのに、と内心思ったが俺はその置き手紙をポケットに入れ自分の家に帰った。
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あれから2週間経つが、ランは一向に現れなかった。
俺も馬鹿な男じゃないから、出会ったある程度の女とも遊ぶが心のどこかでまだランのことを思い出してしまっていた。
いつもはスッと忘れられるのに、珍しく自分のどタイプが現れたからこそふと思い出してしまう。
「今日はあの子来るかねー。」
なおきがニヤニヤと俺に話しかけてくる。
「来てほしい。真面目に。」
「そんなにいい女なら、男がいてもおかしくないだろ?」
「でも夜の繁華街に女1人で来るか?」
「んー…、1日のちょっとした思い出作りとか?」
確かに勉強がなんだか言ってたな。
「あぁー!会いたい会いたい会いたいけど会えなーい!」
俺はカウンターに突っ伏す。
「…おーい、失恋ソング歌ってる場合じゃねぇーぞ。」
「…なんで?まだ開店じゃないでしょ?」
「モニター見てみな。」
普段営業中にはついていない外の監視カメラの映像が、リアルタイムで流れている。
客の流れ、不審人物がいないかどうか色々あるらしいが役に立っている感じはしない。
「え…?」
俺の目にはあのどタイプの体のラインに、黒髪ボブの女の子の後ろ姿が見えた。
「少し前からあそこにいるんだ。暇らしい。」
「早く教えてよ!」
「俺は会ったこと無いから、新の言葉の情報しか無いからな。」
「あー…そっか。ありがと!」
俺は自分の荷物をまとめて、なおきにバイバイする。
俺は階段を駆け上がり、外に出る。
するとランがちょうどいい腰掛けに座って本を読んでいた。
「ラン。」
俺は横から声をかける。
「…あ、この間はありがとうございます。」
相変わらずの敬語。
「今日も俺と一緒にどこか行こっか。」
「いいんですか?」
「うん、ランのこと待ってた。」
「じゃあ…よろしくお願いします。」
と言ってペコっと一礼をするラン。
俺はランの手を引き、新しいランを知れる所に向かった。