ターゲット
「…い。…おい!いい加減起きろ!」
肩を強く揺すられて起きる。
「んー!よく寝た!何時?」
「22時だ。もう客来るから新は出て行け。」
「あぁあ。まだそんな時間か。」
スッと立ち上がって、財布と携帯を忘れていないか確認する。
「早く金ずる呼んでこーい。」
「あー、お客に向かってそれはないんじゃなーい?」
「お前がいつも言ってんのマネしただけだ。早く行け。」
「はいはい。」
俺は部屋を出て、階段を降りフロアに向かう。
大音量の音楽がいつものように流れている。
さっきまでまともなの居なかったからな。
不作で帰るか、酒奢ってもらうかだなぁ。
フロアついてバーカウンターに行き、コークハイを頼む。作る数十秒フロアにいる女の子に目を向ける。
んー…あんまりだな。
とりあえずあそこの3人組に声かけるか。
店長「新、おまたせ。今日も宜しくな。」
店長さんが俺に声を掛ける。
新「もっと可愛い子呼んでくれたら、気合い入るんだけどなー…?」
上目遣いで頼んでみる。
店長「それは上のキャッチに言ってくれ。俺は知らん。」
新「けちんぼ。」
俺はコークハイを持って、3人組に向かって歩いた。
すると目のキワに、1人女の子が座ってるのが見えた。
俺はそっちに顔を向ける。
ちょうど柱があって死角になっていたらしい。
暗がりの中でたまに当たるスポットを頼りに彼女の顔を見る。
化粧が薄いのに顔の彫りが深いせいか、暗がりでも可愛い。
やっぱりこっちにしよう。
俺はその子に方向を変えて、話しかける。
新「こんばんわ、1人?」
「…。」
目が合う。
カラコンを入れているのか、綺麗な紫色。
ウェーブがかった黒髪で肩に少しかかるかき分けボブだけど、その目は自然とこの子に釣り合っていた。
新「俺、新って言うんだ。君の名前は?」
「ランです。」
お、話してくれるんだ。
新「女の子1人でここに来たの?」
ラン「まあ、そうですね。」
ちょっとお堅い感じなのか?
でも1人で来るってことはこういう所が好きなのか?
新「CLUBで、音楽が聞くのが好きなの?」
ラン「いろんなこと経験したくて。」
目を伏せ目がちにし、持っていたドリンクを少し飲むラン。
う…、可愛い。
俺といろんなこと経験してくれないかな。
新「そうなんだ。踊ったりはしないの?」
ラン「人を見てるのが好きなんです。」
ほぇー…、やった方がもっと楽しいと思うんだけどな。
でも無理強いして嫌われるのも嫌だな。
新「そうなんだ。俺も人間観察好きだよ。いろんな人がいて面白いよね。」
ラン「そうですね。勉強になります。」
勉強…?ってのが引っかかるけど面白い子だな。
新「もっと勉強したい?」
ラン「…はい。」
新「じゃあいいとこ連れて行ってあげるよ。」
ランの手を取り、テーブルにグラスを置いて、店長に手を振る。
店長は気づき、親指を立ててOKサインを出す。
俺は階段を登り、ランと外に出た。