表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
さいはて荘  作者: 椿 冬華
さいはて荘・夏
87/185

【■■商社の■■いろ■■■■】




【■■商社の■■いろ■■■■】




 ()()()()()

 ()()()()()

 ()()()()()

 ()()()()()

 ()()()()()

 ()()()()()

 ()()()()()

 ()()()()()

 ()()()()()

 ()()()()()

 さいはて荘のエントランスに飾られている巨大なキャンパスの下に陳列されている、十体のぬいぐるみ。


 それに視線を向けることなく通り過ぎて、さいはて荘の前庭に出る。


「あれ? なっちゃん」


 仕事に出ているはずのなっちゃんがベンチに座っていて、ワタシは首を傾げる。休みなのだろうか。


「あ、魔女ちゃんおはよぉ~!」

「おはようなっちゃん。今日は休み?」

「ううん。仕事やめちゃったのぉ~」

「え、そうなんだ」


 思わずぱちくりと目を見開くワタシになっちゃんはいつもの、ふわふわとしていて可愛らしい笑顔を浮かべる。


「そうなんだぁ。困っちゃったよぉもぉ~あのねぇ魔女ちゃん、聞いてよぉ! 昨日ねぇ、同僚の男の人に呼び出されたんだぁ」


 ──そしたらねぇ、告白されちゃったんだぁ。


 その、言葉に。

 その、()()()()()()()()()()に。


「──それ、は」


 ワタシは、顔を強張らせる。

 けれどなっちゃんは変わらず笑顔で、変わらず普通に可愛い。


「困るよねぇ」

「そう、だね──」


 なっちゃんの同僚が、なっちゃんに告白した。

 其れ即ち。


 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「それ、で……だいじょうぶ、だったの?」

「全然大丈夫じゃないよぉ! 今ねぇ、社長さんが頑張って()()してくれてるんだぁ」


 とんてんかん、とハンマーで打ち付けるようなジェスチャーをとりながら茶化すようになっちゃんは言ったけれど、おそらく洒落では済まない。

 おそらく──今頃社長は必死に、なっちゃんの痕跡を消している。

 必死に。

 死に物狂いで。

 当然だ。そうしなければならないだろう。なっちゃんについて何も知らないワタシでさえ、()()()と直感で分かるのだ。


「本当に困っちゃうよねぇ~」


 なっちゃんは笑う。普通に笑う。

 それにワタシもどんまいと返して笑う。普通に笑う。()()に。


「転職先もまた社長さんにお願いしないとだぁ~」

「頑張れ~」


「うん! 今度は──もっと〝()()()〟にならないとねぇ!」


 混信(ノイズ)

 ざり、ざりざり、ざりとなっちゃんの顔が歪む。なっちゃんの存在がひずむ。なっちゃんの軸がぶれる。

 なっちゃんそのものが、()()る。


「ファイト~じゃ、ワタシは学校に行ってくるね~」


 でも、触れない。

 触れてはならない。


「いってらっしゃ~い!!」


 ──この世には、決して関わってはいけない領域というのが存在するのだから。




 UNKNOWN(知ってはならない)




 【没個性】



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ