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さいはて荘  作者: 椿 冬華
さいはて荘・冬
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【くれーぷやさん】


 第十三回女子力向上委員会! メニューは、手作りクレープ!!

 ホットプレートを前に、女子五人組集結である。今日は元国王たちも追い出……男子会に行ってもらっているから、久々の真・女子会だ。

 無事大学合格をもぎ取って一週間。さいはて荘のみんなでお祝いはしたけれど、それとは別にご褒美のスイーツパーティーである。


「ひさびさにちゃんとした女子会だぁ~! 元巫女ちゃんの独身卒業記念パーティーでもあるねぇ!」

「そーいや神前式だろ? 指輪交換あるのか?」

「はい。近年では神前式でも指輪交換がめじゃーになっておられるようで……〝指輪交換(ゆびわとりかわし)の儀〟が組み込まれております」

「ほぉ~ん、まあ九尾火神社でやるもんな。堅苦しくはならねェか」

「あたし、着物着るの初めてだから楽しみっ!」

「こんかいはさいはてそうのみんな、きものをれんたるしてるからみんなでしゃしんとろうね」

「着付けはどうするの?」

「アタシがやるぜ」

「意外すぎた」

「失礼な、これでも元夜の蝶だぞ。そーゆースキルはお手の物だっつの」


 あぁ、ピアノも弾けるんだったお蝶。意外性の塊だ。お裁縫の腕は壊滅的なのに。


「よし、ホットプレートあったまったな。生地焼くか」

「ちっちゃい円を何枚か作ってねぇ、ちっちゃいクレープで色んな味を楽しんで──」

「えい」


 ドバァ! と元巫女が生地をホットプレートいっぱいに流し込んだ。なっちゃんが固まる。


「でっかいくれーぷ、食べとうございます」

「…………」

「まあこうなると思ってた。ドンマイなっちゃん」

「うん。女子会(笑)だもんね。ドンマイなっちゃん」

「あ、あはは……ほらなっちゃん、どんなくれーぷがたべたい? ふるーつもおかしもいっぱいよういしてるよ!」


 大家さんがフォローするけれどなっちゃんはホットプレートいっぱいに広がった生地を見下ろしてふるふる戦慄(わなな)いている。


「……ここには!! 圧倒的に!! 女子がいない!!」


 そして、吠えた。

 うん。


「知ってる」「知ってた」「わくわく」「みんな……」


 ぶーぶー文句を垂れるなっちゃんをいなしつつ、焼き上がった生地に元巫女が好み好みの具材を詰め込んで、お蝶がくるくると器用に巻いていく。そうして出来上がったクレープは──腕の肘から下部分くらいにはでっかかった。

 ほくほく幸せそうにでっかいクレープを抱えている元巫女をよそに、お蝶が二枚目の生地を流し込んでいく。ご機嫌を取るために今度はなっちゃんの分。


「ご覧くださいなっちゃんさま! ちょこばななくれーぷ、いちごあいすとっぴんぐです!」

「もぉ! そんな元巫女ちゃんもギャップ萌えでかわいいけどぉ! もぉ! んもぉお!」

「まーまーなっちゃん。どんな具材にするの?」

「アイスが溶けて下に溜まらないよぉにコーンフレークを敷いてぇ! チョコチップホイップクリームといちごでチョコアイス取り囲んでぇ! 巻いて! 巻いて! 巻い──でかすぎぃ! さらにいちごとクリーム追加ぁ!」


 半ばヤケクソ気味にどでかクレープを仕上げたなっちゃんはぷりぷり怒りつつもペーパーでくるんで両手に持つ。


「じゃ、ワタシはくりとモンブランといちご」

「わたしはばななともんぶらんにしようかなぁ。でもぜんぶたべきるの、むずかしそう」

「その時には僭越ながらわたくしめが」

「もう半分食べてるぅ!?」


 ……元巫女、すっかり大食いキャラだよね。

 おっぱいか? あのおっぱいが全ての栄養吸収しとるんか? お?


「魔女ちゃん、あたしたちが摂った栄養は脂肪になるんだよぉ」

「現実言わないで」

「胸のデカさは大概、幼少時から思春期までの栄養状態と思春期の健康状態で決まるからなァ。遺伝は三割程度らしいぜ」


 お蝶の言葉にワタシは唸る。健康な生活を送り始めたのが十歳を過ぎてからだったから、その分遅れを取ってしまったか。くぅ。

 元巫女は両親から(ないがし)ろにこそされていても、殴られたり蹴られたり飯抜きにされたりといったことはなかったみたい。だからかな。


「いや、胸のデカさで遺伝が影響するのは三割、っつうのはD以上になれるかどうかってトコな。Cまでなら正常に女性ホルモンが分泌されている女であれば誰もがなれるが、それ以上は遺伝次第っつーハナシだ」


 ……なるほど。

 ……実の母は確か、普通だったはず。……いや、隔世遺伝で祖母あたりが爆乳だったらあるいは……。いや、そもそも貧弱な成長期を過ごしてしまったワタシには無理か……。


「ホレ、できたぜおっぱいクレープ」

「何してんのよ」


 口を広く作ったクレープにモンブランの山が二つ盛られてて、それぞれの頂点にいちごが載っている。ふざけんな。


「食べ辛い!! うまい!!」


 両手で持たないとすぐ崩れてしまう。けれど焼きたてほかほかのクレープ生地に包まれたモンブランは最高にうまい。でも食べ辛い!


「魔女さま、わたくしはいつでもうえるかむでございます」

「まだひと口よ!?」


 既に食べ終えている元巫女がワタシのを狙っている。こんなキャラだったけ!?


「女子力って何だったっけねぇ」

「でもみんなぱわふるだから、あるいみじょしりょくまんさい!」

「そうじゃなぁい、そうじゃなぁあい……楽しいけどぉ」


 ぶーぶー言いつつも、なっちゃんも楽しげに笑いながらワタシたちの会話に突っ込みを入れる。

 うん、女子力向上委員会ってのはこういうのでいいと思う。みんなでわいわい楽しく馬鹿らしく談笑して時間を潰してゆくだけ──それで、いいんだ。それが──いいんだ。


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