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さいはて荘  作者: 椿 冬華
さいはて荘・秋
129/185

【なっとう】


 白ごはんのおともといえば何か。


「納豆一択」

「NO! いくらナイスガイでもここは譲れないね! TKGこそが至高!」

「卵かけご飯はもはや一種の料理じゃろうがい。メシのおともとはまた違うわい」


 ワタシと一緒に寝ると駄々をこねまくった巡と一緒にワタシの部屋でぐーすか寝ていたある日。そろそろ六時になろうかという早朝に爺に叩き起こされてラジオ体操をやらされたある朝。

 同じく爺に叩き起こされた元国王と、途中から自主参加してきた元王子も加えて管理人室でともに朝ごはんを食べることになった。


「ふあぁ~あ……ぼくはごはんのおともならサーモンの塩漬けかなぁ。お蝶くんがたまに作るんだけど、おいしいんだよね」

「えぇ? それワタシも食べたいっ」

「ほんとたまにしか作らないんだよねぇ。そのままごはんのおともとして食べてもいいし、茶漬けにしてもおいしいし、なんなら刻んでごはんと一緒に焼けばぱらっとした鮭チャーハンになるし」

「えぇえ? 今度は絶対ワタシ呼んでよ!!」


 おいしいものを独り占めは許さん!


「サーモンの塩漬けのぉ。納豆と混ぜてもよさそうじゃな」

「ああ、それはおいしいだろうねぇ。納豆ならぼくはオクラ納豆が好きかなあ」


 そう言いながら、大家さんが用意したオクラを納豆に入れて混ぜる元国王。確かにオクラ納豆はおいしい。そこに刻みのりやかつおぶしも入れるとさらにおいしい。


「ワシは肉味噌納豆が一番好きじゃの~」


 ひき肉を赤味噌でさらっと炒めたやつを納豆に混ぜながら言うのは、爺。このレシピも王道ながらにうまいやつである。


「肉味噌もオクラも入れちゃえ」


 ワタシは特にこれ! といった好きな納豆レシピはない。どれもおいしいしね。なら混ぜるのみ!


「OH……」


 ひとりTKGを食べている元王子は納豆尽くしなワタシたちに奇怪な視線を向けつつ、いつか納豆のおいしさが理解できればいいんだけれどね、とため息交じりに零した。


「チャレンジしてはいるんだけれどね。どうもこの匂いと食感に慣れないんだ」

「独特だからねぇ。ぼくも最初はダメだったし」


 けれどなんやかんやで、いつの間にか納豆を食べられるようになっていたと元国王は言ってごはんをかき込んだ。

 うむ。ワタシも納豆を食べるようになったのはさいはて荘に来てからだったけれど、最初はいつも食べるコンビニ弁当には存在しない食感にビビったものである。すぐ慣れたし、おいしいから好きになったけどね。

 ちなみに一番好きなごはんのおともは乾いたふりかけ。ホラ、コンビニ弁当とかのふりかけごはんってしっとりしてるじゃん? アレが普通だと思ってたから、炊きたてほかほかごはんにパリッと乾いた真新しいふりかけをかけて、食べた時のあの衝撃よ。あまりのおいしさにはじめてごはんをおかわりしたっけな。


「そういえば、もうすぐだねっ! 〝さいはて荘異世界冒険記〟」


 おお、オクラ肉味噌納豆うまい。肉味噌の辛みをオクラが中和して、ものすごくまろやかな肉味噌になって納豆とよく合う。うん、うまい。ごはんが進む。


「聞き流さないでくれたまえよ、魔法少女ちゃん」

「あ、ごめん。アニメの話かと思った」


 旅行ね旅行。

 そう、もうすぐ旅行だ。さいはて荘のみんなで行く、はじめての旅行。


「旅行といえば〝旅行のしおり〟! 完成したからね、配るよっ」

「なんじゃい、本格的じゃの」


 ちなみにしおりの表紙を描いたのはワタシである。デフォルメ化させたみんなを描いて、ポップな字体で〝かぞくりょこうのしおり ~さいはて荘異世界冒険記①~〟って──ん? おい待て、さいはて荘異世界冒険記①なんて書いた覚えないぞ。勝手に書き加えたな元王子。

 ま、とどのつまり。

 ワタシと元王子、元国王が中心になって行き先ややりたいこと食べたいものをみんなから聞いてまとめて、その上で社長に調整してもらったのだ。そうして社長から返ってきた細やかな旅程をしおりにしたのである。

 旅行についてあれこれ話すのってむちゃくちゃ楽しくて、だからつい第二回と第三回も企画しちゃって社長に怒られたのはいい思い出である。怒りつつ調整すると言うあたり、社長も楽しみにしてるんだろうとは思うけどね。

 そんなわけで第一回さいはて荘家族旅行の行き先は──高知である。


「かなり綿密に旅程が組まれておるのぉ」

「これくらいしないとなっちゃんが同行できないんだって」


 そう。なっちゃん。

 そもそも元軍人が十四人乗りの大型車……ハイエース? を買ったのだってなっちゃんのためだ。社長も資金を出しているらしい。

 新幹線や飛行機だとさすがの社長でも人流をコントロールしきるのに途方もない労力を払うことになるし、レンタカーだと()()()()()()()()()()()()()()()そうだ。

 だからしょーがない。まあそれは大したことない。それより、ようやく実現するのだ。さいはて荘のみんなで旅行! 楽しみじゃないはずがない。


「なっとうおむれつどうぞ~」

「また納豆かい!?」

「そぼろにくのおむれつもつくってるので、そっちをどうぞ。なっとう、きのうやすうりしてたのでつい」


 大家さんが作ってくれた納豆オムレツはその名の通り、ふわふわオムレツに納豆が入っていた。オムレツはちょっと砂糖を入れたのか、甘めだったけれど納豆のねぎ醤油風味といい具合に調和が取れてておいしい。


「もキュ……おいしいけど、納豆こぼさないようにするの難しいね。そういえば、運転はお父さんひとりでするの?」

「いや。元国王と交代でする」

「このために中型免許取ったんだよ~」


 十四人乗りハイエースは普通運転免許証だと運転できないらしくって、大型免許含め元々色んな資格を持っている元軍人しか基本運転しない。でも元国王も何気にこっそり中型免許取ったらしい。

 ワタシも大人になったら運転免許……取るのかなぁ? なんか車を運転するワタシってのが想像できないや。

 ま、それはおいといて。


 第一回さいはて荘家族旅行、楽しみである!



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