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盆の中からアレやコレ(短編集)

ようこそ行列

作者: 八刀皿 日音


 ……ふと気付くと、街中に長い長い行列があった。

 何の行列かは分からない。ただ、興味をそそられた私は並んでみることにした。

 行列の進みは遅々としているものの、まったく動かないというほどではない。ネットやゲームに音楽、文庫本などでヒマを潰しつつ、だらだらと待った。

 しかし待てども待てども、進めども進めども、終わりが見えてこない。

 前後の人に聞いてみても、私と同じく何の行列かは知らないという。ただ、こうなっては離れる気にもなれず、ただ待ち続け、進み続けているのだそうだ。

 私も同じ気持ちだった――すでに数時間は待っているのだ、今さら引き返す気もない。

 そうして遅々として進む行列に混じって、さらに時間が過ぎた。

 気付けば一日。そしてまた一日。

 ところどころ、ちょうど良い具合に現れるコンビニで食料を調達したり、本屋で本を買ったり、前後に並ぶ人と愚痴を言い合ったり――食料とヒマ潰しを適度に補充しつつ、行列は進み続けた。ふと気付けば、私の後ろにもいつの間にか、先の見えない長蛇の列ができている。

 そうして、さらに一週間が過ぎ。

 一ヶ月が過ぎ。

 一年が過ぎ。

 十年が過ぎ。

 いつしか、数十年が過ぎていた。

 ……そろそろ着くみたいですよ、と前の人が教えてくれた。

 そうだろうな、と思った。そろそろそんな頃合いだろうと思っていたのだ。

 振り返れば、食ってはヒマ潰しをするばかりだったなあ、などと感慨も浮かぶ。

 だがまあ、行列に並ぶというのはそういうものだろう。

 それぐらいしかやることはないし、それ以外に何をしろというのか?

 そう、行列に並ぶとは、そういうことじゃないか。





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― 新着の感想 ―
[良い点] これはきっついですね! でも重荷を背負って山に登るより行列に並んだ方が楽に生きれそうですね! 面白かったです!
[一言] 行列嫌いな私なもので、目的のわからない長すぎる行列にはまず並ばないですねー。 ご飯食べるのに並ばないといけないところすら避けるほどの人なので。 話題のナニカとかいらないの! どうせ数年もす…
[良い点] 面白こわかったです (∩´∀`)∩~♪ [一言] (;'∀') ラーメン屋さんとかよく並んでますよね?
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