ようこそ行列
……ふと気付くと、街中に長い長い行列があった。
何の行列かは分からない。ただ、興味をそそられた私は並んでみることにした。
行列の進みは遅々としているものの、まったく動かないというほどではない。ネットやゲームに音楽、文庫本などでヒマを潰しつつ、だらだらと待った。
しかし待てども待てども、進めども進めども、終わりが見えてこない。
前後の人に聞いてみても、私と同じく何の行列かは知らないという。ただ、こうなっては離れる気にもなれず、ただ待ち続け、進み続けているのだそうだ。
私も同じ気持ちだった――すでに数時間は待っているのだ、今さら引き返す気もない。
そうして遅々として進む行列に混じって、さらに時間が過ぎた。
気付けば一日。そしてまた一日。
ところどころ、ちょうど良い具合に現れるコンビニで食料を調達したり、本屋で本を買ったり、前後に並ぶ人と愚痴を言い合ったり――食料とヒマ潰しを適度に補充しつつ、行列は進み続けた。ふと気付けば、私の後ろにもいつの間にか、先の見えない長蛇の列ができている。
そうして、さらに一週間が過ぎ。
一ヶ月が過ぎ。
一年が過ぎ。
十年が過ぎ。
いつしか、数十年が過ぎていた。
……そろそろ着くみたいですよ、と前の人が教えてくれた。
そうだろうな、と思った。そろそろそんな頃合いだろうと思っていたのだ。
振り返れば、食ってはヒマ潰しをするばかりだったなあ、などと感慨も浮かぶ。
だがまあ、行列に並ぶというのはそういうものだろう。
それぐらいしかやることはないし、それ以外に何をしろというのか?
そう、行列に並ぶとは、そういうことじゃないか。