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異世界放浪者の神話決戦記  作者: 灰ライト
学院編
2/77

戦闘と街に到着

 迅はその後、街に向かうべく能力を使って人の気配を頼りに歩いていた。


「さて、情報の確認でもしておくかな」


 迅が今向かっている国は【セントレア王国】。

長い戦乱の時代を()て統一された巨大国家である。

終戦してからそれなりに年月が過ぎているものの、未だに国の上層部では熾烈(しれつ)な権力闘争が行われており、密かに亡国の復活を企む者も少なくない。しかしそれは上級貴族だけであり、戦争に駆り出される事がなくなった国民は平穏に暮らしていた。


 現在の国は【東セントレア】【西セントレア】【南セントレア】【北セントレア】、そして中央の【セントレア王都】に区分けされており、それぞれに領主、騎士団や冒険者ギルド、商業ギルド等が揃っている。

騎士団は主に領主や国民を守る警察組織だが、冒険者ギルドは東西南北それぞれにある脅威に対して対抗する為に存在していた。

東にダンジョン、西に草原や森の魔物、南に海の怪物、北にいくつもの山からの大型の魔物といった具合に存在しているので、これらの討伐、自衛、発掘の為にそれぞれの組織が行動している。

それに強力な魔物が(まれ)に出てくることで損害も激しいため、新しい有能な人材確保や武力向上の為に国を挙げての武闘大会を開催するなどして戦力増強を成していた。

ちなみに北の山を越えた先には魔族領があったりするが、山を挟んでいるので交流どころか争いすら皆無な状態であった。


 この国での通貨は王宮が描かれた、銅貨・銀貨・金貨・白金貨に分かれていて、それぞれの硬貨が100枚で1つ上の硬貨と同じ価値になっている。

それぞれの硬貨の資源はダンジョンから取って来れるうえに製法も国が完全に管理をしており、さらにその硬貨には偽造犯罪防止のために秘匿(ひとく)された魔法を刻印することで安定した経済を実現していた。


「今いるのが森だから、近いのは西か……とりあえずはここを抜けるついでに資金集めでもするかな」


 迅は大まかな情報整理を済ませつつ【西セントレア】を目指して歩いていった。




 迅がしばらく森を進んで陽が差してきた頃、人とは違う気配がこっちに向かって来ていた。


「さて、この世界で初の戦闘だが……?見つかるのが速いな、一体どんな奴なんだか」


  少しその場で待つと、象のような大きさのイノシシが見えてきた。

かなりデカい牙に頭にはツノまで生えている、何よりもイノシシの体全体が赤く、湯気も出ていた。


「この世界の魔物はかなり進化してるなぁ。割と離れてたのに見つかったのも納得だ」


 普通なら10人がかりで相手にしなければならない魔物なのだが、迅にとってはじゃれてくる子供程度にしか感じられなかった。

それでも他の世界での魔物達に比べると、遠目に見えるイノシシは色々と能力がありそうなのでつい感心していた。


  明らかに熱を持っているであろうイノシシは、そのまま迅に向かって突進をしかけていった。

迅はひとまず相手の耐久力を測る為に、かなり抑えて攻撃する事にした。


「《()()》」


「プギャーーーッ‼︎」


「よっと!」


 突進してくるイノシシが当たる直前に真上に飛び上がり、ツノがあるのもお構いなしに、鉄並みに硬くさせた拳を頭に殴りつけた。


 バッゴーーンッ‼︎


 殴られたイノシシは断末魔を上げる余裕もなく、ツノは砕け散り、そのまま頭に拳がメリこみ地面に叩きつけられた。

地面に軽くクレーターが出来たが、中途半端な加減のせいで突進の勢いが止まりきらず、地面を跳ねて正面の木にぶつかっていった。


「硬さは大したことないし、ただ能力が多いだけか? 何にせよこれで資金集めは大丈夫だな」


 スタッと着地した迅は魔物が意外に弱かった事に疑問を浮かべたが、とくに気にしないことにした。


 この世界の魔物には魔石が体内に埋まっており、小さい物でも銅貨数枚分にはなる。

更には魔物自体の毛皮や肉等もいくらかの金になるため、この大きさならそれなりの金額になるだろう。


「倒したはいいがデカいんだよなぁ。仕方ない、街も近いし引きずっていくか」


 迅はため息をつきつつ、イノシシの脚を掴みその場を後にした。




 それから少し歩くと、森を抜けて街の門が見えてきた。

しっかりと頑丈に作り込まれた門が近づいてくると、その前に構えてた衛兵がこちらに気付いたようで少しざわついていた。


(嫌だなぁ……面倒くさい事にならなければいいが……)


 少し憂鬱(ゆううつ)になりながら門の手前まで来ると、衛兵が迅の後ろを気にしつつ話しかけてきた。


「止まってくれ。その獲物はお前が倒したのか?」


「あぁそうだが、これを換金する為に街に入りたいんだがいいか? あと遠くから来てこの街の中が分からないから、ついでに場所も教えて欲しいんだが」


 この程度でも騒ぎが起こるのは元いた世界の娯楽のテンプレなので、警戒しつつ穏便に対応してみた。


「そうか、悪いな。ヒートビッグボア自体がそんなに多くないのに加えて、単独で狩ってこれるのはあまり多くないからついな。本当は身分証も提示して欲しいんだが、他所(よそ)から来たんじゃ仕方ないな。説明がてら一緒について行くから少し待っててくれ」


「なるほど、分かった」


 衛兵は一言断りをいれると、詰め所であろう建物に入っていった。

ちなみに言語に関しては、テオトルに入れてもらった記憶と一緒に習得済みである。


 迅がその場で少し待ってると、荷車と一緒におそらく交代要員であろう別の衛兵を連れてきた。


「さて、準備が出来たからついてきてくれ。ここまで大きいものだと、冒険者ギルドでないと買い取れないだろうからそこに行こうか。それとボアはこの荷車に積んでくれ」


 簡単に事が運びそうでほっとしながら、言われた通りに衛兵が持ってきたリヤカーみたいな荷車にボアを乗せる。

衛兵は重さで荷車が壊れないかの確認をすると、出発する為に荷車の取っ手を握った。


「とりあえず、この門から真っ直ぐに進むと噴水広場があって、そこの一角に冒険者ギルドがあるから」


 街並みを眺めながら少し歩くと、噴水がある広い場所に出てきた。

噴水を中心に十字に道が続いていて、獣人も含めた様々な人種が歩いていた。

ここまで見た限りの街並みは木やレンガでの(つく)りが主だが、どこか中世ヨーロッパ風に感じる。

魔道具等も発展しているようで、簡易時計の様な物もしっかりあった。


「ここが噴水広場で、右奥のひと際大きい建物が冒険者ギルドだ。左奥は商業ギルドで色々な物を取り扱っている。そのまま奥に進むと個人で経営している店がいくつもやっているから、普段の生活に必要な物が安く手に入るぞ」


 いくつかの説明を聞きつつ、迅は冒険者ギルドへと入っていった。

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